長野大会

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セッション招待講演の紹介

  世話人や専門部会から提案され,行事委員会が承認した招待講演者(予定)の概要を紹介します.学術的にも社会的にも注目されている研究者やテーマが目白押しです.会員の皆様,この機会をお見逃しなく! なお,講演時間は変更になる場合があります.

(行事委員会)

 

T1.グリーンタフ・ルネサンス T2.文化地質学 T3.水蒸気噴火と火山体構造
T4.三次元地質モデル研究 T5.泥火山 T6.日本の地球史
R4.変成岩とテクトニクス R6.ジオパーク R7.海洋地質
R8.堆積物の起源・組織・組成 R10.堆積過程・堆積環境・堆積地質 R11.石油・石炭地質学
R12.岩石・鉱物の変形と反応 R13.沈み込み帯 R14.テクトニクス
R16.ジュラ系+ R18.環境地質 R19.応用地質・ノンテク
R22.地球史 R23.原子力と地質学 R24.鉱物資源と地球物質循環

 


T1.グリーンタフ・ルネサンス               
■ 星 博幸(愛知教育大学)会員,30分
星氏は,古地磁気研究に基づいた新生代日本列島テクトニクス研究を中心的に展開してきた研究者である.特に,日本海拡大に伴う島弧の回転運動について新たな観点から検討を続けている.日本海の拡大はグリーンタフ形成と密接に関連しているので,本セッションでの招待講演者として適任である.講演は,日本海の拡大と島弧テクトニクスについてレビューをお願いする予定である.

■ 中嶋 健(産業技術総合研究所)会員,30分
中嶋氏は,層序学,堆積学をベースに研究を展開し,島弧中軸地域の奥羽脊梁山脈において,シン〜ポストグリーンタフ時代の地史,テクトニクスを詳細に解明した.グリーンタフ形成の時代から現在の島弧への発達史は,グリーンタフのテクトニクスを解明する上で重要であり,本セッションでの招待講演者として適任である.東北日本弧中軸地域におけるシン〜ポストグリーンタフ変動を中心に講演頂く予定である.


T2.文化地質学
■ 尾池和夫(京都造形芸術大学)非会員,30分 
尾池和夫先生は,2008年まで京都大学の総長を務められた地震学者である.その後は,国際高等研究所所長を経て,現在は京都造形芸術大学の学長である.先生は地震学者でありながら,国際高等研究所でジオ多様性のプロジェクトを立ち上げ,地質と文化の関連を発信してきた.また現在は芸術大学長として,地球科学と芸術の関連も述べている.幅広い視野をもつ先生の講演が,地質学と文化の関わりについて,私たちに新たな視点をもたらせてくれることは間違いない.


T3.水蒸気噴火と火山体構造
■大場 司(秋田大学)会員,30分
大場氏は,主に物質科学的な観点から水蒸気噴火およびその発生源となる浅所火山体構造の解明に関する研究を継続的に行っており,国内においてこの分野リードする研究者である.これらの研究成果は,国際誌等にも精力的に公表されており,本セッションの招待講演者として適切であると考える.

■寺田暁彦(東工大火山流体研究センター)会員,30分
寺田氏は,主に地球物理学的観測から復元される熱水卓越型火山の浅所火山体構造の解明に関する研究を継続的に行っており,国内においてこの分野をリードする研究者である.これらの研究成果は,国際誌等にも精力的に公表されており,本セッションの招待講演者として適切であると考える.


T4三次元地質モデル研究の新展開 
■関口春子(京都大学防災研究所)非会員,30分
日本の平野域については,すべての都市圏で地震動評価用の深部地下構造モデルが作成されているがその多くは,地層境界面は従属的で,主要には微動アレイ探査などの物理探査による速度構造とその境界面で近似されている.日本では,唯一,関口氏ほかによる大阪堆積盆モデルが,詳しい地下構造探査による地層境界の同定とそれらのポイントデータに基づいて,正確な地層境界面モデルを作成し,その上で,各層内部の物性を地質年代と深度変換式をあてることで,任意の空間の物性(S波速度,密度)を与えるモデルを構築している.三次元地質モデルの構築手法の内容の点で有意義で,物理探査,地震波観測データによるチューニングを経て,高い精度の速度構造モデルにしあげている事例として特筆できる.

■秋山泰久(国際航業(株))非会員,30分
ICTの発達に伴い,国土交通省は土木分野での3次元モデルの作成・活用の取り組みとしてCIM(Construction Information Modeling)を進めつつある.CIMの中での地質・地盤の3次元モデルのあり方は,今後の3次元地質モデルの構築環境を大きく変える可能性がある.これまで全国地質調査業協会連合会の情報化委員として,このことに取り組んでこられた秋山氏を招待講演として選定した.


T5「泥火山」の新しい研究展開に向けて
■田中和広(山口大学)会員,30分
地学雑誌に泥火山研究の特集号が組まれた際の編集者であり,2007年地球惑星科学連合大会において特別セッションを開催するなど,日本の泥火山研究を牽引してきたまさに第一人者である.泥火山について既に理解されている事柄や課題をセッション冒頭でご紹介いただき,聴衆に共通の基礎知識を与えていただく.

■稲垣史生(海洋研究開発機構)非会員,30分
泥火山を海底炭素循環の出口と位置づけ,近年精力的に泥火山研究を進め取りまとめてきたグループのリーダーである.地球化学の理解を軸にした生物学や地質学等幅広い分野を網羅する理解を基にした,これからの泥火山研究に期待される役割と未解決事項を解説いただく.


T6.地球史から宇宙史へ:日本の地球史研究25年
■ B. F. ウインドレー(英・レスター大学) 非会員,15分
1970年代に出版された初版以来,世界の地球史研究の入門書として愛読されてきた”Evolving continent”の著者であり,早くから日本での地球史研究にも深い理解を示して来た.

■ 戎崎俊一(理研)非会員,15分
1980年代に京都大学の林グループが打ち立てた太陽系形成の標準モデルは世界中で受け入れられて来たが,近年の系外惑星の大量発見によって再検討が迫られている.戎崎氏は,既存モデルの問題点を整理し,より普遍性の高い新しい一般的モデルを提唱している.


R4.変成岩とテクトニクス
■板谷徹丸(岡山理科大学)会員,30分
板谷氏は,希ガス用高性能質量分析計及び希ガスの迅速分析技術を K-Ar年代測定に適用し様々な地質事象の解明に貢献した.特に中新世以降の火山活動の分解能を格段に高め,プレート運動の変遷に制御された火山活動論に貢献した.さらに,微細な変成鉱物の系統的なK-Ar年代測定を行い,西南日本の高圧変成岩などの地帯構造を明らかにし,島弧―海溝系の造山運動の新たなモデル構築を行うとともに,西アルプスの研究では,大陸衝突型の沈み込み変成作用の時代論に貢献した.最近では,様々な地質プロセスにおける鉱物や岩石中のArの挙動について精力的に研究を進めており,K-Ar年代測定法の精密な適用と解釈に関する新知見を提示している.板谷氏には,K-Ar年代測定法および微小領域のAr/Ar年代測定法を用いた,新たな地球惑星科学に関する,魅力的な講演を期待する.

■廣井美邦 (千葉大学) 会員 30分
廣井氏は,徹底した岩石組織観察と厳密な岩石学的解析に基づき,国内外の高温・超高温変成岩を用いて,地下深部での部分溶融現象の岩石学的研究を行い,造山帯深部における様々な地質過程や岩石のダイナミックな動きを明らかにしてきた.特に,世界に先駆けて,温度‐圧力‐時間経路の概念を提示した阿武隈変成帯の研究は特筆に価する.最近では,大陸衝突帯に産出する高温・超高温変成岩のザクロ石結晶中から,花崗岩質メルトが過冷却し,極度の非平衡条件下で結晶化したことを示す,珪長岩包有物(felsite inclusion)を見出している.これは,従来の高温・超高温変成岩の地下深部からの上昇・冷却過程に関する常識を覆す発見であるとともに,地殻深部の諸過程の解明に新しい手掛かりとなるものである.廣井氏には,高温・超高温変成岩の部分溶融現象ならびに地殻深部から上昇・冷却を含めた地質過程に関する,魅力的な講演を期待する.


R6.ジオパーク
■ 松原典孝(兵庫県立大学大学院)会員,30分
松原典孝氏は,火山砕屑岩の層序と堆積相解析に基づく島弧の構造発達史の研究を専門としつつ,学生時代から茨城県北ジオパーク構想の推進に関わり,現在は山陰海岸ジオパークを学術面から支えるとともに,日本ジオパーク委員会の審査にも貢献している.これらの経験を元に,同氏は現在のジオパークの到達点と課題を講演することができ,本セッションの招待講演者にふさわしい.


R7.海洋地質
■ 横瀬久芳(熊本大学)非会員,30分
北部沖縄トラフ,特にトカラ列島海域の火山地質学を精力的に推進しており,これをテーマに大学での教育にも力を入れるとともに,TV出演等,アウトリーチ活動もしっかりと展開している.同氏からは,「トカラ列島海域の火山地質学に関する総合レビュー」などの講演を期待できる.

■ 石橋純一郎(九州大学)非会員,30分
沖縄トラフなどの海底熱水系の地球化学的研究を研究キャリアを通じて行ってきた,海底熱水研究の第一人者の一人である.新学術領域研究「海底下の大河」では,計画研究の研究代表者に一人として領域研究の成功に尽力した.その成果は,同氏を筆頭エディターとした論文集「Subsefloor biosphere linked to hydrothermal systems: TAIGA concept」(Springer, 2015)として刊行された.同氏からは,「沖縄トラフの海底熱水系のレビュー」などの講演を期待できる.


R8.堆積物(岩)の起源・組織・組成
■太田充恒(産総研)非会員,30分
太田充恒氏は現世河川堆積物を用いた地球化学図の第一人者であり,化学組成から地球表層の物質移動を解き明かす研究を進めている.今回はある元素に注目して,後背地からどのように物質が移動・濃集するかについての講演を頂く予定である.

■大山隆弘(電中研)会員,30分
大山隆弘氏は風化作用の専門家であり,今回は化学的風化作用の総論についてお話し頂く予定である.いずれの発表も,現世風化プロセスを理解するために重要であり,地質時代の風化度の研究を進めている会員にとって有益であると期待される.


R10堆積過程・堆積環境・堆積地質
伊藤 慎(千葉大学)会員,30分
伊藤会員は,露頭観察に基づいて堆積過程や堆積環境を解明する研究に一貫して取り組んでおり,この分野をリードする一人である.特に,直接観察・観測が困難で露頭観察の役割が大きい深海環境に注目し,セディメントウェーブを含む重力流堆積物の形成プロセスに関する多数の成果を挙げてきた.このため,近年の研究動向のレビューも交えて最新の知見を紹介いただき,堆積学研究における露頭観察の意義について再考する機会としたい.

 


R11石油・石炭地質学と有機地球化学
■奥井明彦(出光興産(株))非会員,30分
奥井氏は石油システムに関するモデリングのエキスパートであり,国内外の石油探鉱開発業務に従事している.長野大会を機会に,新潟堆積盆地の直江津地域の石油システムに関する講演をして頂き,地質学の研究が石油探鉱にどうのように活用されているかを講演して頂く.

■森田澄人(産業技術総合研究所)会員,30分
森田氏は経産省・資源エネルギー庁による委託研究「日本海表層型メタンハイドレートの資源量把握のための調査」の責任者として調査・研究を統率している.現在,進められている調査の概要と,地質学的な面白そうないくつかの話題について講演して頂く.

 

R12岩石・鉱物の変形と反応
■大内智博(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)非会員,30分
大内智博氏は,岩石の組織発達・構造形成に関する動的過程の実験研究で最先端に立つ研究者の一人である.近年,高圧力・含水量の幅広い条件においてマルチアンビルを用いた剪断変形実験や構造発達のその場観察に取り組み,上部マントルかんらん岩のレオロジーの多様性を示す結果を発表されている.今回は最近議論が活発となっている上部マントル流動の素過程についてお話をしていただきたい.実験室とフィールドの視点を合わせて地球物質科学的な議論の活性化に期待する.

■片山郁夫(広島大学大学院理学研究科)会員,15分
片山氏は,フィールド調査や変形・透水実験を通して地球内部での物質循環に関する研究を精力的に展開されている.特に,沈み込み帯深部での流体移動や岩石レオロジーへの水の影響に注目して,プレート境界で起きる地震や火山に関する魅力的な研究成果を発信し続けている.本セッションにおいて,ここ数年取り組まれている摩擦ヒーリングに関する最新の成果を講演していただき,地質学,岩石学,鉱物学など様々な視点から地震と断層に関する議論をおこないたい.

 

R13沈み込み帯・陸上付加体
■ウォリス サイモン(名古屋大学)会員,30分
ウォリス氏は三波川変成岩類を対象に岩石学的・構造地質学的研究を長年精力的に進め,興味深い成果を次々とあげられている.近年,三波川変成岩類は南海トラフ深部におけるスロー地震(Episodic Tremor and Slip: ETS)発生域の陸上アナログとして注目を浴びている.ウォリス氏らのグループは,三波川帯中の蛇紋岩における反応・変形・鉱物組み合わせを検討し,それらを南海トラフにおけるETSの地球物理学的観測結果と比較することで,ETSをコントロールする地質学的要因を論じている.ETSの地質学的描像構築を目指したこれまでの研究成果を詳しく紹介して頂くとともに,今後取り組むべき課題を議論していきたい.    

■山下幹也(海洋研究開発機構)非会員,30分
山下氏は反射法地震探査による地下構造の研究を専門とし,例えばパレスベラ海盆の反射断面を用いて海盆の初期発達過程を明らかにするなどの成果をあげられてきた.近年では,南海トラフ軸域を対象とした高分解能反射法探査を担当されており,前縁断層帯等,トラフ軸近傍の構造を詳細に明らかにしつつある.これまでに得られた結果をご紹介いただくことで,南海トラフ沈み込み帯最浅部での付加体や断層帯の発達を議論したい.

 

R14 テクトニクス
■ 田上高広(京都大学)会員, 30分
候補者は,熱年代学を用いた地質学的時間スケールで山岳の隆起/侵食史を明ら かにする研究を行ってきた.熱年代学とは,放射年代が熱によってリセットされ る現象を利用して温度変化を伴う地質イベントの年代を求める学問領域であり, 候補者は同分野の第一人者である.この手法を地下深部の高温領域から地表 ま で上昇してきた岩石に適用することによって,過去数100万年スケールにおい て,測地学的手法にも迫る数mm/yr程度の分解能で山岳の隆起・削剥速度を見積 ることが可能である.本講演では長野大会では最適である,熱年代学を用いた中 央アルプスなどの隆起史復元について最新の話題提供を期待する.


R16ジュラ系+
■ 伊庭靖弘(北海道大学)会員,30分
伊庭氏は,中生代におけるテチス−パンサラサの海洋環境変遷を,生物地理学的なアプローチから議論している.軟体動物や原生生物など,多様な海洋生物を取り扱い,複眼的な視点から現象をとらえようとするところに研究の特徴がある.招待講演では,今後の研究の展望を含む内容になるよう依頼しているので,活発な議論が交わされることを期待したい.


R18 環境地質
■ 中屋眞司(信州大学)非会員,30分
中屋氏は,地層中の断層・節理・クラックなどの亀裂を考慮した岩盤透水性の研究や地下水資源管理・保全に関わる研究ですぐれた業績を上げている.中屋氏が所属する信州大学工学部で年会を開催するに当たって,その成果を講演頂き,地質学会の多くの方々と議論,情報交換することは大変有意義である.


R19応用地質学一般およびノンテクトニック構造
■ 佐々木靖人(土木研究所)会員,30分
佐々木氏は,応用地質学の立場から,日本全域の直轄国道の道路斜面防災に関する研究を推進している.1996年に発生した北海道・豊浜トンネル事故のように,突発的に発生する岩盤崩壊は,通行車両に甚大な影響を与えるため,危険な道路斜面をあらかじめ抽出し,定期的な監視と維持管理を継続する必要がある.そのためには,斜面の地質学的な理解に基づく危険度評価が必須となる.招待講演では,具体的な道路被災事例と防災対策,ならびにそれらの課題に関する講演を期待する.

■ 近藤久雄(産業技術総合研究所)会員,30分
近藤氏は,現在糸魚川-静岡構造線活断層系(以下,糸静線)を最も精力的に調査している研究者の1人である.変動地形調査やトレンチ調査を継続して実施し,糸静線全体の活動性や連動性を明らかにしようと試みている.昨年11月の長野県北部の地震では地震直後に神城断層の現地調査を行い,地表変状や地盤災害の状況を報告された.本報告では最新の調査結果を中心に,活断層と地震災害についての講演を期待する.


R22地球史
■ George M. Tetteh(ガーナ,鉱業・資源大学)非会員,30分
(当初の予定より招待講演者は変更となりました.2015/6/24)
 


R23原子力と地質科学
■ 山崎晴雄(首都大学東京)会員,30分
山崎氏は,地形発達史研究を中心に,第四紀地殻変動や地震断層等に関する分野の研究を精力的に進めてきており,近年では,総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会放射性廃棄物WG委員をなどを務める.とくに日本の長期的な地質環境の変化を踏まえた上で,地質科学の原子力における役割について議論の行える研究者の1人だと言える.招待講演では,第四紀変動に関する知見も踏まえて,原子力分野の課題についてどう対処していくべきか等の講演を頂く予定である.


R24.鉱物資源と地球物質循環
■ 小宮 剛 (東京大学)会員,30分

小宮氏は,グローバル物質循環と,その全地球史を通じた変遷に関する研究の第一人者である.近年,カナダにおいて最古の表成岩を発見し,初期地球の表層環境解読に関する重要な成果を挙げられている.また,資源形成と関連の深い地球表層の酸化還元状態の変遷について,レドックスセンシティブな元素(Fe, C, Sなど)と水や親水元素の挙動から明らかにする研究を,精力的に展開されており,本セッションの目指す「地球表層-内部環境,テクトニックセッティング,ダイナミクスと,資源の形成メカニズムとの関わり」についての最新の話題を提供して頂くのに最も相応しい方である