日本地質学会会長就任にあたって
一般社団法人日本地質学会 会長 山路 敦 |
今期(2024年〜2026年)本会の代表理事(会長)を務めさせていただきます.私の専門は構造地質学,特に,日本列島の新生代テクトニクスです.これが古典的なテーマであるからこそ,新しい観点を持ち込むことを心掛けてきました.本会には大学院進学を機に入会し,あっという間に40年以上が過ぎました.その間,年会などで様々な方々と知り合い,本会に育てていただいたと思っています.微力ではありますが,会長職を務めてまいりますので,どうかよろしくお願い申し上げます.
本会は地質学界で最大の学会であり,純理学的研究や応用研究,また,初等教育・社会教育・行政と,会員諸氏は多様な活動をしておられます.研究面では地質現象を理解したり地史を解明したりする純理学的な研究と,応用研究が両輪です.かつては資源開発と防災が後者の中心でしたが,環境や地層処分へと研究テーマが広がってきました.我々が地殻表面に住み,地殻表層を利用して生活する以上,地質学への社会的ニーズは変化するにせよ今後も絶えないでしょう.私自身は学生時代からずっと理学部・理学研究科に在籍して興味の赴くまま研究をしてきました.しかし,社会的ニーズを満たし,また,社会的課題の解決しようとする会員諸氏の努力が純理学的研究とともに,本会の威信を保ってきたのだと思います.こうした認識を踏まえ,様々な立場の会員諸氏が活躍できる場を提供し,会員として満足していただけるような環境を整えてゆきたいと思います.
さて,近年は多くの学会で会員が減っています.国全体の人口が減る以上,威勢の良いスローガンは空しく響きます.わが国が資源大国にでもならない限り,本会の会員数が長期的に減ってゆくことは避けられないでしょう.しかし2020年代は18歳人口の減少が鈍化する時代であり,2030年代以降の減少に備える猶予が与えられた期間とみるべきです.長期的な減少のペースを鈍化させ,また,減少にも耐える体制を,中期的に整えてゆく必要があります.
そうした取り組みのうち,今期取り組むべき課題として二つを考えています.ひとつは広報の整備と充実です.具体的には,いわば建て増しを続けてきた学会のホームページを整備し,また,新たにスマートフォンでも閲覧しやすいものとすることです.これらにより,会員諸氏の利便性を改善し,また,普及の手段ともしようというわけです.
もう一つの課題は,シニア層の活躍の場を整備してゆくことです.すでに若手会員を応援する取り組みや男女共同参画についての取り組みは,歴代執行部によりしだいに拡充されてきました.それらは今後も伸ばして行けばよろしい.しかし若年人口の減少にともなってシニア層の人数が相対的に増大しているにもかかわらず,シニア層のみなさんに満足感を持っていただく取り組みは遅れていました.若者の活躍を妨げないよう留意しつつ,また,皆様のお知恵をお借りしつつ,この問題に取り組んでゆきたいと思います.お力添えの程,よろしくお願い申し上げます.
2024年6月
一般社団法人日本地質学会
会長 山路 敦