入選:太古の覗き穴
写真:佐藤 孝(新潟県)
撮影場所:新潟県 佐渡市宿根木
【撮影者より】
新潟県佐渡島は岩礁が多く変化に富んだ景観が各所に見受けられます.南西部には景勝地の佐渡小木海岸があり,宿根木地区には隆起波食台という荒々しい岩場の地形となっています.ここでは長い間に波の渦の力で岩を削り作られた波食甌穴(はしょくおうけつ)という大きな穴があり,自然の造形美を感じることができます.
【審査委員長講評】
評者は甌穴(ポットホール)が川の流水によってできるものだと思っていましたが,この作品を見てはじめて波浪による甌穴があることを知りました.超広角レンズで甌穴を手前に入れ,遠景では海岸の様子を示しています.逆光でおどろおどろしい雰囲気となり,インパクトの強い作品となりました.
【地質解説】
宿根木は海底火山の噴出物である水中火砕岩が広く分布し,海岸には数多くの波食甌穴が認められます.「かめ穴」とも称される甌穴は硬質の礫が波打ち際のくぼみに入り込み,波の作用によって礫が回転,母岩(水中火砕岩)を削り込むことで形成されます.削られやすい岩質をもつ母岩は約1300万年前の日本海拡大期に海底から噴出したものであり,その後の東西圧縮に伴い陸化しました.沿岸には隆起波食台が発達,打ち寄せる暴浪がこの自然の造形を作り出しました.(佐渡ジオパーク推進協議会 相田満久)