注:これは地質学会としての統一見解ではなく、読者の理解の一助として広報委員会が整備したものです
タイムマシーンがあれば40億年前の岩石のでき方を観察できるかも知れませんが,それはできないので,現在の岩石や地層のでき方を観察したり,実験したり,計算したりして昔の岩石や地層のできた時の条件や過程を推測するのです.
地球は固体惑星ですから,基本的に岩石や地層からできています.地球で最も古い岩石は約40億年前のものが知られています.そのような岩石には岩石ができた時の条件(温度,圧力など)や過程(例えば,マグマが冷えて固まったとか海底で堆積したとか)も記録されています.また,岩石や地層に含まれている化石も重要な情報源です.地球上には様々な岩石や地層があり,それらはすべての時代を通して絶え間なく作られています.このような地道な作業を繰り返すことによって,過去から現在にいたる地球の姿を捉えることができるのです.(菅森義晃・奥平敬元 大阪市大)
縞状鉄鉱層(オーストラリア,ハマスレー鉱山近くで採集)25〜18億年前に海底で堆積したもの.この様な岩石から当時の酸素量が推定されています。
軽い地殻が厚くなるおかげで、山は高くなれます。 |
山が高くなるのには様々な原因がありますが,結局は地殻が厚くなったためです.私たちが住んでいる大地は大陸地殻ですが,この大陸地殻はマントルの上に浮かんでいます.大陸地殻は主に花こう岩質の岩石からできているのに対して,マントルはより重たい(密度の高い)かんらん岩(かんらん石からなる岩石,かんらん石は宝石のペリドットといっしょ)からできていますので,大陸地殻には浮力が働いています.つまり,軽い大陸地殻が厚いほど,マントルから顔を出す部分(標高)が高くなります(これをアイソスタシーといいます).
では,なぜ大陸地殻が厚くなるのでしょうか?その原因の一つは,マントルから大陸地殻へとマグマが供給されるからです.玄武岩質マグマはマントルの一部が溶けてできたものですが,この玄武岩もかんらん岩よりは軽いので,マントル内を上昇し,大陸地殻の底にペタッとひっつきます.日本列島の山脈下ではこのような「底付け作用」が起こっていますので,地殻が厚くなり,標高の高い山脈ができます.もう一つの原因は,大陸と大陸の衝突です.この例は,ヒマラヤ山脈(ユーラシア大陸とインド亜大陸の衝突)やヨーロッパアルプス山脈(ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸の衝突,イタリアはアフリカ大陸の一部)です.規模は小さいですが,丹沢山地(本州弧と伊豆・小笠原弧の衝突)もそうです.二つの大陸が衝突したとき,一方の大陸がもう一方の大陸の下に沈み込むことがありますが,この場合大陸地殻の厚さは短期間に倍近くになります.また,大陸同士が衝突した時,非常に強い力がかかるのでその内部に「しわ」ができます.この「しわ」は褶曲とよばれるものでこれによっても大陸地殻は厚くなります.これらのような過程が重なり合って山脈の標高が高くなっていくと考えられています.(奥平敬元 大阪市大)
アトランティス大陸はプラトンの著作に登場する,大西洋に存在したと言われる伝説上の大陸のことです.この大陸には世界の覇権を狙っていた王国があったが,ゼウスの怒りに触れ大陸ごと消滅(沈没)させられたと伝えられています.一方,ムー大陸はアメリカの作家ジェームズ・チャーチワードの著作に登場する大陸で,約1万2千年前に太平洋に存在したが,現在は消滅したとされるものです.両大陸とも,その存在には科学的根拠が乏しく,伝説(物語)上の大陸です.
地球の表面は,大陸地殻と海洋地殻からできています.大陸地殻は私たちが住んでいる海面上の大地で,海洋地殻は海の底だと考えてそんなに間違っていません.大陸地殻は主に花こう岩や堆積岩からできているのに対して,海洋地殻は玄武岩からできています.一般に大陸地殻の方が軽く(密度が低い),海洋地殻の方が重い(密度が高い)ので,前者が後者の上に浮いているイメージです.プレート運動によって地殻はマントルへと沈み込んでいきますが,大陸地殻は軽いためなかなか沈み込めません.現在,インド亜大陸がユーラシア大陸に沈み込もうとしていますが,なかなか難しいようです.どうやら,一度できた大陸はなかなか消えてなくなるのは難しいようです.
また様々な海洋地質調査でも、太平洋や大西洋の深海で広大な大陸地殻は見つかっておらず、人類の有史以来ずっと海底だったことがわかっています。(奥平敬元 大阪市大)
地球の表面は十数枚のプレートからなっていて,それら各プレートが相対的に動くことによって,いろいろな地質現象が引き起こされるというのが,プレートテクトニクスです.プレートの相対運動によって作られる境界には,大きく分けて2種類あり,それはプレートが近づく「収束境界」と離れる「発散境界」です.日本列島は収束境界に位置しています.日本列島では海側のプレート(太平洋プレート,フィリピン海プレート)が大陸側のプレート(ユーラシアプレート,北米(またはオホーツク)プレート)に対して沈み込んでいます.私たちの日本列島は北米プレートとユーラシアプレート上にあります.ハワイ諸島は太平洋プレート上にあり,太平洋プレートは北米+ユーラシアプレートに対して年間8 cm程度で沈み込んでいますので,毎年8 cmハワイは日本に近づいているわけです.日本ーホノルル間は約4100マイル(約6600 km)ですので,8千万年後には徒歩でハワイに行けるかも知れません.
(奥平敬元 大阪市大)
砂とか泥が硬くなって石(岩石)になったものは堆積岩と呼ばれ,砂が固まると砂岩,泥が固まると泥岩になります.砂や泥が厚く堆積すると底の部分には大きな圧力(荷重)がかかります.その様な状態では粒の間の間隙が詰まったりします.これだけだと硬く搾められただけですので,岩石とは呼べません.圧力のかかり方は均質ではなく,あるところでは高く,あるところでは低いといった状態になります.このとき粒の間に水分があると,圧力の高いところでは粒の成分が溶け出し,圧力の低い部分でその成分が沈殿します.この沈殿した成分が接着剤の役目をはたし,最終的には硬い岩石となります(この過程を続成作用といいます).この砂→砂岩,泥→泥岩の変化速度は様々な条件によって違うので一概には言えませんが,日本では 2千万年前よりも新しい地層では岩石とは呼べない「やわい」地層が多いため,砂→砂岩,泥→泥岩の変化にかかる時間は1〜2千万年程度だとされています.
(奥平敬元 大阪市大)
パンゲア大陸復元図 ウェゲナー著 「大陸と海洋の起源」より) |
現在,地球上には大陸が六つ(ユーラシア,アフリカ,北米,南米,オーストラリア,南極)ありますが,この大陸の配置は日々変化しています.かつては地球上の大陸がほぼ1ヶ所に集まり「超大陸」を形成していたとされています.地球と他の太陽系の固体(地球型)惑星との大きな違いの1 つに,大陸地殻のあるなしがあります.実は火星や金星には大陸はありません.そのような地球に特徴的な大陸は主に花こう岩質の岩石からできています.大陸の体積増加パターンには未だ定説がなく,大陸誕生(これ自体もいつなのか議論が分かれるところですが,約40億年前とされています)以降,一定の割合で成長したのか,ある時期にドカッとできたのかはっきりしませんが,10億年前にはほぼ現在の体積(地球の表面積の3割程度)に達したとされています.
その後は,プレートの相対運動にともない,離合集散(バラバラになったり,ひっついたり)を繰り返しています.つまり超大陸とは地球の表面積の3割を占める大陸が1ヶ所に集まった巨大大陸で,「ちょー」は「巨大」という意味です.これまで,様々な地質学的観察から,約2億年前の「パンゲア」,約5億年前の「ゴンドワナ」,約10億年前の「ロディニア」などの超大陸が存在したと言われています.現在はユーラシア大陸を中心にして新たな超大陸が形成されつつあり,それは約2億年後であるとされています.(奥平敬元 大阪市大)
私たちの暮らしている街や山々の表面、そして海や湖の底には土や砂や泥といった堆積物が広く覆っています。なかには軟らかい泥が厚くたまっている場所もあり、底なし沼と呼ばれたりします。でも、それがずっと続くことはありません。地下深くなると圧力が上がってきて、堆積物中の水分は押し出され、泥も固くしまってきます。堆積物がもっと地下深くまで持ち込まれると、温度も上がり、時間が経つといずれは岩石へと変化します。
水分を豊富に含んだ軟らかい泥が、どこまでも続くことはないのです。私たちの足元の深いところは、すべて岩石なのです。これを岩盤と呼びます。底なし沼も、森の腐葉土も、砂漠の砂も、海底の泥もすべて地球表面を覆っているだけなのです。(坂口有人 海洋研究開発機構)
地球表層は何枚かのプレートで区分され、プレート同士は互いにいろんな向きにゆっくりと動いています。プレート同士は勝手に動きあうので、その境界では、衝突したり、沈み込んだり、互いに離れあったり(次々生成されたり)、すれちがったりしています。そしてそれによって、地震や火山や造山運動といった重要な地質現象が生じます。プレートの厚さは約100kmで、地殻とマントルの一部からできています。日本周辺にはユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの4つのプレートがひしめき合うという世界でも稀な場所で、実に様々な地質現象が絶え間なく起きています。まるで地球の縮図ですね。
(坂口有人 海洋研究開発機構)
海水浴場の砂浜で穴を掘ったら、地中から水が染み出てきたことはありませんか? あれはある深さまで水に浸っていて、そこまで掘ったので水が出てきたのです。そして水は砂粒と砂粒の間に浸透していて、決して水だけの層があったわけではありません。私たちの街の地下にある地下水も同じで、水が透りやすい層にだけ水が存在しています。そしてそれはある深さならどこでもあるわけではなく、居やすい場所にだけ居るのです。それは地表の川や池と同じですね。地表には水がたくさんありますが、どこにでもあるわけじゃありません。そうして地下水も多く集まったり、ゆっくり、地表の川とは比べ物にならないほどゆっくり流れたりしているのです。こうしたいわば地下の川を水脈と呼んだりします。しかしそれは地表の川とは全く違い、砂や礫の隙間に水が浸みているだけですので、魚が入れるほどのスペースはありません。
(坂口有人 海洋研究開発機構)
地球の内部は地震波の伝わる様子から推定されています。それはまるでスイカの実の詰まり具合を叩いた音で判別することに似ています。その結果、地球はスカスカではありませんでした。地殻の下には分厚いマントル層、そして液体の外核と固体の内核があることがわかっています。よって地球内部が空洞になっているということはありません。
(坂口有人 海洋研究開発機構)
隕石には岩石質のもの(石質隕石),鉄のかたまり(隕鉄,鉄質隕石),そして鉄と岩石がほぼ半々に混ざったもの(石鉄隕石)があります.しかし,落下が確認された隕石の90%近くは石質隕石です.そして石質隕石の90%近くは球粒隕石(コンドライト)です.球粒隕石は直径1〜10 mm程度の球形の物体(球粒,コンドルール)を多量に含むことが特徴で,球粒の多くはかんらん石や輝石よりなります.球粒隕石は,地球の岩石の中では「かんらん岩」に似た鉱物組成をもっていますが,地球のかんらん岩には球粒組織は見られません.隕石と地球の岩石の大きな違いは,隕石には金属鉄(実際は少量のニッケルを含む合金)の粒が含まれることです.地球の岩石中では,鉄は珪酸塩,酸化物,硫化物などとして含まれ,金属鉄は非常に稀です.これは隕石が形成された宇宙空間が地球(の表層部)よりも酸素に乏しかったことを示します.金属鉄を含むために,隕石は強い磁力を持ち,隕石を地球の大気中に露出しておくと,金属 鉄が酸化して錆びを生じます.
ところで,製鉄所の熔鉱炉の鉱滓(スラグ)が田畑や道路の整地に使われることがあり,その中に混ざっている鉄のかたまりが隕鉄と間違えられることがよくあります.鉄鉱石から人工的に作り出された鉄のかたまりは,ほとんどニッケルを含みませんが,隕鉄は必ず5〜10%程度のニッケルを含み,特徴的な離溶組織を示します.これによって人工的な鉄と隕鉄を区別できます.石質隕石の少数派である非球粒隕石(エイコンドライト)の中には,最近話題の火星隕石や月から来た隕石が含まれ,それらは玄武岩,斑れい岩,斜長岩,輝石岩といった地球の岩石とよく似ていますが,鉱物の種類や化学組成の違い,微量元素や同位体比の違いによって地球の岩石と区別することができます.なお,落下直後の隕石は,宇宙空間で強い放射線(宇宙線)を浴びていたために,微弱な放射能を持っており,これは隕石であることの証拠になります.(石渡 明 金沢大)
地球外天体の地球への衝突頻度は,小さいものほど頻繁に,大きいものほど稀に起きます.例えば,直径7mくらいの天体(10-2Mtほどのエネルギー)の場合,半年に1回くらいの確率で地球にぶつかっています.ただし,この規模の天体は大気圏の上部で燃え尽きてしまうので,地上まで落下してくることはありません.直径250m(103Mtほどのエネルギー)くらいの規模の天体になると,大気圏を通過して地上に衝突し約5kmほどの衝突クレーターを形成すると考えられています.この規模の衝突は1万年に1回くらいの確率で起き,その影響範囲は100km四方くらいに及ぶと推測されています.恐竜絶滅の原因として挙げられている,今から約6500万年前の白亜紀/第三紀(K/T)境界に衝突した天体は直径約10kmです.この規模の天体が地球に衝突する頻度は1億年に1回ほどと極めて稀ですが,ひとたび衝突が起きれば地球規模の大災害が発生します.我々が生きている間にこの規模の衝突に遭遇する確率は非常に低いと考えられますが,46億年の地球の歴史の中では頻繁にこのような巨大衝突が起き,地球や生物の進化に大きな影響を及ぼしたと考えられます.それにも関わらず,K/T境界での衝突以上の規模の衝突が起きたことが確認されているのはわずかに3つしかありません.巨大天体衝突と地球や生命の進化の関係に関する研究は,まだまだこれからです.
参考文献:(後藤和久 東北大学)
Chapman C. R. and Morrison D. 1994, Impacts on the Earth by asteroids and comets: assessing the hazard. Nature 367, 33-40.
Toon, O, B., Turco, R. P., Covey, C., (1997) Environmental perturbations caused by the impacts of asteroids and comets. Reviews of Geophysics, 35, 41-78.
天体衝突クレーターとは,地球外天体が地球にぶつかることによって地表面または海底面にできる大きな穴のことです.その多くは円形構造(“おわん”のような形)をしており,縁辺部にリムと呼ばれる盛り上がりがあります(アメリカ・アリゾナ州のメテオール・クレーターが代表的です).天体衝突クレーターの可能性がある円形構造は,地質調査や衛星写真・空中写真の解析などで見つかることが多く,現在までに地球上で180個くらいの天体衝突クレーターが確認されています.この数は,長い地球の歴史を考えると驚くほど少ないのですが,天体衝突クレーターの大部分は侵食されていたり,地下に埋没しており,発見することができません.また,衝突クレーターの発見はヨーロッパやアメリカなど,地質調査が盛んに行われている場所に偏っています.今後,アフリカやアジア,中東などで研究が進めば,その数はさらに増えると考えられます.こうした円形構造が見つかると,天体衝突クレーターかどうかの検証が行われます.例えば,円形構造の地形的特徴や衝突起源物質(衝突により溶融した岩石が冷え固まってできた衝突メルトや,衝撃変成石英のように地球外天体衝突時の高温・高圧化でしかできないと考えられる鉱物など)の有無などが調べられ,こうした厳しい検査に合格した円形構造が,晴れて天体衝突クレーターとして国際的に認められます.
(後藤和久 東北大学)
参考文献
Melosh, H.J., 1989. Impact cratering: A geologic process. Oxford University Press, 245 pp.
地球外天体が海に落ちる現象を海洋衝突と呼びます.これまでに,海洋衝突クレーターはわずかに20個ほどしか見つかっていません.これは,海底にできた衝突クレーターを見つけることは非常に難しいことと,古い時代のものは海洋プレートの沈み込みとともに地下に沈み込み,消失してしまっていると考えられるからです.見つかっている海洋衝突クレーターに関する研究も,構造の把握や試料採取などが難しく,ほとんど進んでいません.しかし,地球上の約70%が海で覆われていることを考えると,地球外天体の多くは海に落ちていると言っても過言ではなく,今後の研究の進展が期待される分野です.海洋衝突が起きた場合,衝突地点周辺の海水が高温にさらされるため,まず周囲の海水が大量に蒸発します.さらに,巨大津波も発生し,衝突地点からはるかに離れた場所にまで津波の影響が及びます.例えば,白亜紀/第三紀境界の天体衝突は水深〜200mくらいの海洋で起きたと考えられていますが,メキシコ湾沿岸で最大300mもの波高の津波が発生したと考えられています.
参考文献(後藤和久 東北大学)
Ormo, J., Lindstrom M., 2000, When a cosmic impact strikes the sea bed. Geological Magazine, 137, 67-80.
Matsui, T., Imamura, F., Tajika, E., Nakano, Y., Fujisawa, Y. 2002, Generation and propagation of a tsunami from the Cretaceous-Tertiary impact event. Geological Society of America Special Paper 356, 69-77.
今から約6500年前の白亜紀/第三紀(K/T)境界の天体衝突(直径10kmの隕石)の規模の場合,すべてのエネルギー(108Mt)が地震波に使われたと仮定すると,マグニチュード12.8にも達する地震が発生すると言われています(Toon et al., 1997).スマトラ島沖で2004年に発生した大地震のマグニチュードは9.1と考えられていますが,マグニチュードが1ずつ増えると地震のエネルギーは32倍ずつになりますから,スマトラ島沖の地震の数十万〜100万倍くらいのエネルギーということになります.ただし,実際には衝突のエネルギーは熱エネルギーなどにも変換されるため,すべてが地震波として使われることはありません.そのため,地震のマグニチュードはもっと小さいと思われます.また,衝突地点から放出された地震波が地球内部で反射を繰り返して地球の裏側(対蹠地)に集中し,火山噴火やホットスポットの形成などを引き起こすという説もあります.Bosloughら(1996)は,K/T衝突当時,衝突地点の対蹠地に現在のデカン高原があった可能性を指摘し,洪水玄武岩(大規模な溶岩台地を形成する玄武岩)の噴出の原因は地球の反対側で起きた天体衝突だったのではないかと主張しています.ただ,この仮説には両者の年代が合わないという問題や位置関係が正確に対蹠地ではないという問題がありますし,K/T境界の衝突のときにこのようなことが実際に起きたかは実証されていません.しかし,火星や月の巨大衝突クレーターの対蹠地には,火山噴火の痕跡や破砕された地形が見つかることが多く,興味深い仮説だといえます.
(後藤和久 東北大学)
参考文献
Boslough, M. B., Chael, E. P., Trucano, T. G., Crawford, D. A., Campbell, D. L., 1996. Axial focusing of impact energy in the Earth’s interior: A possible link to flood basalts and hotspots. Geological Society of America Special Paper 307. 541-550.
Toon, O, B., Turco, R. P., Covey, C., (1997) Environmental perturbations caused by the impacts of asteroids and comets. Reviews of Geophysics, 35, 41-78.
一般家庭にある釘打ち用のハンマー(トンカチ)は岩石を割るのに適していません.専用の岩石ハンマーが必要です.まず,ハンマーの形ですが,硬い岩石を割るには片方の先が尖り,他方は平らな「ピック型ハンマー」が適しています(軟らかい岩石を削って構造を見るためにはチゼル型ハンマーが適します).持ち運びも考えて,重さ800〜1000 g程度のものがよいでしょう(価格は1本5000〜10000円程度).ただし,大きな岩石を割るには,5ポンド(2.5 kg)〜10ポンド(5 kg)程度のハンマーが必要で,この大きさのものは両側が平らなものが多いです.
野外で岩石を割るには,まず自分自身の安全のために手には軍手(手袋),目にはゴーグル(安全メガネ)をして,周囲数メートル以内に他人がいないことを確かめます.破片が飛んでケガをしますので,他人が近くにいる場合は離れてもらい,ガラス窓や乗用車などからも離れる必要があります.10cm程度の大きさの岩石を割る時は,岩石のできるだけ平らで広い面を上にして,片足でその岩石を押さえ,ピック型(またはチゼル型)ハンマーの平らな面(尖った方ではない)が岩石の平らな面の真ん中に平行に当たるように(ハンマーを足に当てないように注意して)振り下ろします.1回で割れないときは,同じ動作を数回繰り返します.もっと大きい岩石の場合は,真ん中を打っても割れませんので,できるだけ鋭角に割れた角(稜)から5〜10 cm離れた平らな部分にハンマーを当てます.大きいハンマーを使う場合も要領は同じです.ただし,川原の礫のように,大きな丸い石は,大きいハンマーを用いてもなかなか割れません.20〜30 cm大の川原の石を割る最も簡単な方法は,同じくらいの大きさの別の石を両手で頭の上まで持ち上げ,割ろうとする石に向かって投げ下ろすことです.1回で割れなければ,何回か繰り返します.非常に原始的で豪快な方法ですが,これが最も効果的です.ただし,危険を伴うので,ケガをしない(させない)ように注意して行って下さい.(石渡 明 金沢大)
山の中にある鍾乳洞は,基本的に過去の地下河川の跡です.従って上流側に入口があり,下流側に出口があって,入口から出口に向かってゆるく傾斜した(ほぼ水平に近い)洞窟が本洞になっている場合が多く,昔はこの本洞内を川が流れていたわけです(現在も流れていることがあります).そして,地表のドリーネ(凹地)の底から鍾乳洞の本洞まで竪穴が延びていたり,河川の下方浸食の進行によって本洞から下に向かう枝洞ができていたり,下方のほぼ水平なもう一つの洞窟と組み合わさって網目状になっていたりします.しかし,いずれにしても,鍾乳洞は石灰岩が水に溶けやすいためにできるので,石灰岩の地層の中にしかありません.つまり,鍾乳洞の全体は石灰岩の地層の中にすっぽり収まっているわけです.ですから,地質図を見れば鍾乳洞の範囲の限界を知ることができます.石灰岩は浅い海の底に堆積した地層ですから,その広がりには限りがあります.従って鍾乳洞の奥深くが地球の中心まで続いているということは絶対にありません.
溶岩洞窟は,火山の火口から溶岩が流れ,周囲から冷やされて固まりかけた時に,内部のまだ高温のドロドロした部分が,溶岩の傾斜方向に流れ出てしまい,その跡が空洞として残ったものです.従って,溶岩洞窟の全長は1つの溶岩流の中にすっぽり収まります.ですから,溶岩洞窟を探検すると地球の中心まで行けるということは絶対にありません.(石渡 明 金沢大)
発見当時日本の領土であった樺太(現在のロシア連邦サハリン)からニッポノサウルス・サハリネンシスという鳥脚類の化石が発見されており、現在、北海道大学に収蔵されていますが、それを除くと、現在、北は北海道から南は熊本県まで、15の道および県から見つかっています。 かつては、日本から恐竜化石は出ないとも言われていましたが、1978年、岩手県岩泉町から竜脚類の上腕骨の化石(通称:モシリュウ)が発見され、これが日本における最初の恐竜化石の発見となりました。それ以降、各地で発見が相次ぎ、最近では、2006年に兵庫県丹波市から竜脚類のまとまった化石が発見され、現在も発掘調査が続けられています。また、福井県や熊本県などでも継続的に恐竜の発掘調査が続けられているので、今後も発見される恐竜化石の数は確実に増えていくと考えられます。これ以外の地域でも恐竜時代に堆積した地層が全国各地にあり、国内の恐竜産地も増えていくことが予想されます。
追記:
和歌山県からカルノサウルス類と見られる獣脚類の歯の化石が見つかったことが発表されため、現在恐竜化石の発見されている道および県は16となりました。2007.11/2追記:
2008年に鹿児島県、2012年に長崎県で恐竜化石が発見され、現在恐竜化石の発見されている道および県は18となりました。2012.12/28(廣瀬 浩司 天草市立御所浦白亜紀資料館)
これは日本の地質百選にも選ばれた熊本県御所浦です。通称白亜紀の壁と呼ばれます。詳しくはこちら。
日本最大級の肉食恐竜の歯。先端部分は欠損していますが、残されている歯の部分の大きさは6.4cmで、復元される歯の大きさは10cmくらいになると推定されます。御所浦層群烏帽子層 日本では歯や骨など部分的な化石が多く、それらから推定された全長で見てみると、三重県鳥羽市で発見された竜脚類(通称:トバリュウ)は約16〜18mと推定されており、兵庫県丹波市の発掘中のもの(通称:タンバリュウ)も同様に10数mはあったと見られています。また、福井県勝山市からも竜脚類と見られる大きな上腕骨の化石が見つかっています。
獣脚類(肉食恐竜)では、熊本県天草市と福岡県宮若市から先端部の欠けた大きな歯の化石(大きさがそれぞれ、6.4cm、5.7cm)が発見されており、どちらも復元すると10cm程度あったと考えられ、10m級の獣脚類であったと推定されます。 ちなみに全身が復元されている日本の恐竜では、フクイラプトル・キタダニエンシスが4.2m、フクイサウルス・テトリエンシスが4.7mです。また、ニッポノサウルス・サハリネンシスの全長は4.1mですが、復元されているものは子供であることが知られ、まだ大きくなったと考えられます。引用文献(廣瀬 浩司 天草市立御所浦白亜紀資料館)
三重県立博物館ホームページ http://www.pref.mie.jp/HAKU/HP/
福井県立恐竜博物館ホームページ http://www.dinosaur.pref.fukui.jp
古生代シルル紀後期(約4.28〜4.16億年前)にオウムガイから分化し、出現したと考えられています。古生代から中生代に大繁栄し、現在までに1万種以上が報告されています。恐竜などと共に、中生代白亜紀末(約6550万年前)に絶滅しました。
その殻の内側はいくつもの隔壁で仕切られた「気室」からなり、それぞれは細い管でつながっていました。殻口付近は、「住房」と呼ばれ、その部分に軟体部が入っていました。軟体部は、10本程度の腕を持っていたと考えられ、大きなカラストンビ(顎器)を持っていました。また、ドイツのゾルンホーフェンから見つかったものには、腕に吸盤ではなく、小さな鈎爪が残されています。
アンモナイトは形も様々で、一般的な巻きをしている「正常巻き」に対して、「異常巻き」と呼ばれるものもたくさんいます。その形は、クリップ状や螺旋状、棒状、蚊取り線香状などあり、色々な生活様式があったとも考えられています。(廣瀬 浩司 天草市立御所浦白亜紀資料館)
アンモナイトの化石です。(提供:氏家恒太郎さん) 魚売り場のイカです。 引用文献
早川浩司著.化石が語るアンモナイト,北海道新聞社,pp.253,2003
両角芳郎・辻野泰之著.アンモナイトのすべて,徳島県立博物館, pp.47, 2003
岐阜県高山市の地層中から見つかる無顎類の歯化石とされるコノドントで、古生代オルドビス紀中期〜後期(約4.72〜4.39億年前)のものです。 これらは微化石ですが、大型化石としては、古生代シルル紀後期(約4.23〜4.19億年前)のものが高知県横倉山、宮崎県祇園山などから知られ、クサリサンゴやハチノスサンゴなどのサンゴ類、三葉虫、腕足類、ウミユリなどの化石が産出しています。
ちなみに、哺乳類化石で見てみると、日本最古のものは、石川県白山市から中生代白亜紀前期(約1.3億年前)のものが知られ、肉食の小型哺乳類と考えられる三錐歯類(さんすいしるい)ハクサノドン・アルカエウスや、草食の小型哺乳類の多丘歯類(たきゅうしるい)が見つかっています。また、大型哺乳類の化石では、新生代古第三紀始新世 (約5000万年前)のものであり、熊本県天草市からはコリフォドンの仲間やトロゴサスが発見されています。(廣瀬 浩司 天草市立御所浦白亜紀資料館)
お近くの博物館にも行ってみましょう。博物館情報はこちらのページにあります。この写真は熊本の御所浦白亜紀資料館。 恐竜化石は、恐竜の生息していた中生代に堆積した地層から見つかります。日本では、中生代ジュラ紀から白亜紀に堆積した地層から発見されており、その多くが白亜紀のものです。
中でも、恐竜は陸上に棲んでいたため、河川や氾濫原、汽水域(干潟)などといった、陸域ないし陸域に極めて近い場所で堆積した地層中から見つかることが多いのが特徴です。同じく陸域の河川などに棲んでいたカメやワニ、淡水生貝類の化石が一緒に産出することも多く、これらは恐竜化石を探す際の目印にもなります。恐竜の化石を探したい人はまずこれらの地層が分布している場所を調べてみるのが、恐竜発見への近道です。
ただし、陸域から海に流され化石となったと思われるものが、浅海の海成層から産出することもあるので、陸域で堆積した地層がなくても、恐竜時代の地層が分布する地域では、恐竜化石の発見される可能性があるといえます。(廣瀬 浩司 天草市立御所浦白亜紀資料館)
中国・山東省蒙蔭のダイヤモンド鉱山.中央部の暗緑色の部分がダイヤモンドを含むキンバレー岩.周囲の白っぽい部分は片麻岩.最も大きいもので約120カラットのダイヤモンドが産出しました。 ダイヤモンドは,石墨(黒鉛)と同様に炭素(C)からできています.そして,マントルと呼ばれる地球深部(120〜150 km以深)の高温・高圧条件下で,炭素原子の配列が変化して形成されます.宝石となるような粗粒のダイヤモンドは,キンバレー岩と呼ばれる特殊な岩石から採掘されています.一方,変成岩の特に高圧で形成されたものからは,顕微鏡を使ってやっと観察できる程度の微細なマイクロ・ダイヤモンドが見つかっています.また,これらダイヤモンドを含む岩石が風化してできた砂・泥やそれが再び固まってできた堆積岩からも発見されています.中国・東部の渤海周辺や大別山−蘇魯大陸衝突帯には,ダイヤモンドを含む岩石が分布しますから,そこから砂や泥と一緒に運ばれてきたダイヤモンドが,日本の堆積岩中で発見される時を待っているかもしれません.また,日本には変成岩が広く分布しており,その一部にはダイヤモンドが安定な深さでできたと考えられるものもあります.これらの岩石を丹念に調べると,ダイヤモンドが見つかるかもしれません.
(榎並正樹 名古屋大)
ところが! 「日本地質学会2007年札幌大会」で、ついに国内でのダイヤモンドの発見報告がありました。驚きました。この画期的な成果の発表資料はプレスリリースのページにあります(編集部 2007.9/18追記)
地球の内部構造は,しばしば卵にたとえられます.卵殻にあたる最も外側の部分(厚さ5〜70 km)は地殻と呼ばれ,主に花崗岩や玄武岩と呼ばれる岩石からできています.卵白に相当するマントル(地殻の下約2,900 kmまで)は,カンラン岩またはそれと似た化学組成の岩石からなっていると考えられています.卵黄にあたる中心部は,金属鉄からできており,液体状態の外側の部分 (深さ2,900〜5,100 km)は外核,それ以深の固体部分は内核と呼ばれています.このような,地球の内部構造は,地震波が伝わる速度の変化の様子を解析して求められました.しかし,地震波データだけからでは,それぞれの部分が,具体的にどんな物質からできているかを決めることは困難です.地球内部の詳しい様子を知るために,地球のような惑星の欠片である隕石や,地殻変動や火山活動などによって地表面にもたらされた地球深部の岩石の研究,地球内部の様子を室内で再現する高圧・高温実験などが行われています.
(榎並正樹 名古屋大)
三波川変成帯中に産する輝石岩の偏光顕微鏡写真(横幅約1.4 mm).岩石を薄く(厚さ30 µm程度)研磨すると光を通すようになり,顕微鏡で鉱物を観察することができます。 まず,岩石や鉱物の色,模様,重さ(比重)や硬さなどを,調べてください.岩石であれば,それがどんな種類や大きさの鉱物でできているか,どんな場所で採取したかなども,重要な情報となるでしょう.また,鉱物はそれぞれが特有の形をしている場合が多いので,名前を調べるときの助けとなります.岩石や鉱物の特徴がわかったら,図鑑で調べたり,相談できる人がいたら聞いてみたりしてください.
同じ種類の岩石や鉱物であっても,できたときの条件や化学組成のわずかな違いなどによって,見かけが様々に異なる場合があります.一方,互いによく似ているものでも,別の鉱物や岩石である場合もあります.そのため,名前を決めるために偏光顕微鏡や電子顕微鏡で観察したり,X線,電子線やレーザーなどを利用して分析したりすることが必要な場合もあります.自分で調べてみてもよくわからないときは,理学部や教育学部のある近くの大学や,国立科学博物館(http://www.kahaku.go.jp/)・地質調査総合センター(http://www.gsj.jp/HomePageJP.html)などの博物館・科学館に問い合わせてみてください.日本は,「鉱物の博物館」と言われるほど,多くの珍しい鉱物が見つかっています.何だろうと不思議に思ったら,調べてみてください.(榎並正樹 名古屋大)
岩石の種類をきちんと決めるには,岩石の専門家でも手に取っただけで岩石の種類を正確に決定するのは困難です.しかし,そうは言っても,経験を積んだ地学の先生や研究者は,かなり正確に,しかも即座に岩石の種類を言い当てます.結論として,この質問に対する答えは「経験者に見せるのが一番」ということになりますが,図鑑と見比べながらいろいろ考えるのは楽しいものですし,まずご自分で図鑑と見比べて目星をつけることをお勧めします.「多摩川」,「相模川」など特定の川の石に対象を絞った図鑑は特に有用です.川原や海岸に落ちている岩石は,その地域や川の上流に分布する地層が侵食されたものである場合が多いので,その地域周辺の地質図を見るのも大いに参考になります.産総研のホームページで全国の地質図を見ることができます.
(石渡 明 金沢大)
いくつかの例外はありますが,一般に原子の規則正しい配列(結晶構造)によってできており,ほぼ一定の化学組成をもつものを結晶と呼び,そのうち天然に産出するものが狭い意味の鉱物で,石英,雲母やダイヤモンドなどがその代表です.したがって,結晶構造が同じであっても化学組成が異なれば違う鉱物となり,化学組成が同じでも結晶構造が異なれば別の鉱物とみなされます.たとえば,方解石(CaCO3)とマグネサイト(MgCO3)は,同じ結晶構造ですが,化学組成が違うため,別種の鉱物とみなされます.一方,石墨とダイヤモンドは,ともに炭素(C)からできていますが結晶構造が異なるため,色や硬さなどが異なり,別種の鉱物です.人工的につくられた結晶の種類は多いのですが,そのうち天然に産出が確認され,国際鉱物学連合(IMA)の「新鉱物・命名・分類委員会(CNMNC)によって鉱物として認められているものは,現在のところ3,000種類程度です.そして,毎年数十種類の新鉱物が発見されています.鉱物の中には想像を超えるほど巨大なものがあり,例えば石英の結晶(水晶)には長さ2m, 重さ4 tに達するものが知られています.
鉱物の集合体が岩石です.マグマが固まってできた火成岩,砂や泥などが固まってできた堆積岩,温度や圧力の変化によって岩石が変化してできた変成岩に分けられます.多くの岩石は,複数の鉱物からできていますが,大理石のように一種類の鉱物(方解石)だけからなるものもあります.岩石には,それができたときの条件や含んでいる鉱物の種類によって,様々な色や模様を見せるものがあります.(榎並正樹 名古屋大)
石墨(左側)とダイヤモンド(右側)の結晶構造.丸い玉ひとつひとつが炭素原子です.石墨では,炭素原子が水平方向につながり,それが重なって何枚もの層をなしています.一方,ダイヤモンドでは,炭素原子が水平・垂直の両方向に,均等につながっているのがわかります.隣り合う炭素原子の間隔は,およそ1オングストローム(1 mmの1千万分の1)です 。
地球の固体部分を構成している岩石,その岩石を形づくっている1つ1つの粒を鉱物と言います.1つの鉱物は物理的・化学的にほぼ均質な天然の無機物質であり,鉱物よりも小さい単位は分子や原子になります.結晶というのは物質の状態の1種で,気体・液体・固体のうちの固体が結晶と非結晶に区分されます.結晶は原子や分子が規則正しく配列している状態(氷や水晶など),非結晶はそれらが(液体と同様に)不規則に配列している状態(ガラスなど)です.従って,鉱物と結晶はそれぞれ「視点が違うことば」であり,例えば水晶(石英)は鉱物であり結晶でもありますが,オパール(ガラス質)は鉱物ですが結晶ではありません.氷砂糖(有機物)は結晶ですが鉱物ではなく,チョコレート(これも有機物)は鉱物でも結晶でもありません. 鉱物と結晶の用語法は,どの言語でもかなり混乱しています.例えばクリスタルガラスというのがありますが,これは結晶ガラスということで,矛盾した言葉です(本当は完全にガラスです).また,鉱物の英語はミネラルですが,この言葉は日常的には人体に必要な栄養素のうち鉱物質の成分(カルシウム,マグネシウムなど)を意味します.人工的に合成した結晶を鉱物と言う場合もあり,鉱物資源と言えば生物の働きで形成された石灰岩や珪藻土なども含まれます.
(石渡 明 金沢大)
壁材中に少量含まれる石綿(中央にある繊維状の結晶)の電子顕微鏡写真. 結晶の太さは1ミクロン(1 mmの千分の1)以下です。 石綿は,繊維状鉱物の集合体で,耐久性,耐熱性,耐薬品性や電気絶縁性などに優れているため,建設資材や電気製品など様々な用途に広く使用されてきました.竹取物語に登場する,火にくべても燃えない「火鼠の皮衣」はこの石綿であったろうと言われています.また,平賀源内が石綿を布状にしたものを,火浣布と名付け幕府に献上しました.このように大変有用な石綿も,体内に吸入されると長い潜伏期間の後に肺がんや中皮腫の病気を引き起こすことが明らかとなり,現在では使用がほぼ全面禁止されています.ILO(国際労働機関)は,石綿(アスベスト)を「蛇紋石と角閃石両グループに属する繊維状の鉱物」と定義して,具体的な鉱物として蛇紋石グループのクリソタイルと角閃石グループのカミングトン閃石−グリューネ閃石(アモサイト),リーベック閃石(クロシドライト),直閃石,トレモラ閃石,アクチノ閃石の6種類の鉱物をあげています.しかし,これら以外にも繊維状の鉱物は数多く存在します.また,石綿の代替品として,ガラス繊維が使用されています.これらの安全性は,早急に検討される必要があります.
(榎並正樹 名古屋大)
正直言って、恐竜がなぜ巨大化したのか、よくはわからないのです。体が大きい方が有利であることは理解できるのですが、なぜあそこまで巨大になったのかは、不明なのです。地球の重力は、地球の質量と、地球の中心から表面までの距離で決定されます。現在も中生代も、それらは変化していませんから地球の重力は現在も中生代も同じです。中生代の地球の重力が小さかったという事実は存在しません(ちなみに生命発生以降の地球のサイズや直径に変化はありません)。
(瀬戸口烈司 京都大学名誉教授)
地層が堆積しているところに生物の遺骸が運ばれてくると、その生物の体が化石となって残ります。大洪水によって生物の遺骸が運搬されることもありますでしょうが、洪水でなくとも運搬されます。化石となる場所は、いろんなところにあります。
(瀬戸口烈司 京都大学名誉教授)
ノアの洪水というのは、キリスト教の聖書に出てくる概念で、実際におこった現象ではありません。グランドキャニオンの形成とノアの洪水はまったく関係はありません。
(瀬戸口烈司 京都大学名誉教授)
日本周辺の海底にはメタンハイドレート(包接化合物といいます)というシャーベット状のメタンが,海底から深さ数百m程度の浅い地層のなかに大量に存在する事が知られるようになってきました.一方,プレート境界の巨大地震発生帯は海底から深さ7〜60km程度のはるかに深いところにあります.したがって、地震発生とメタンハイドレートの掘削は全く関係ありません。日本列島の陸上にも多数の活断層があり,地下には多数の地震発生帯が存在すると考えられていますが、地表近くで地下開発(地下街,地下鉄,トンネル,井戸,温泉,地熱,炭鉱,坑道など)が行われてきましたが、そのことによって 活断層が活性化して大きな地震が起きたということはありません.活断層は,私たちの活動に関係なく,何百万年も前から黙々とエネルギーの蓄積と地震発生というサイクルを延々と繰り返し続けています.掘削の物理的影響など全く心配する事はないでしょう。
(坂口有人 広報委員会)