入選:大荒れ橋杭岩
写真:福村成哉(和歌山県)
撮影場所:和歌山県東牟婁郡串本町くじ野川橋杭岩
【撮影者より】
橋杭岩に高波が打ち付けているときに露光時間を長くして写真を撮影しました.手前の波食棚に転がる津波石に波が打ち寄せていますが,雲の上に浮いている岩のように表現できたと思います.
【審査委員長講評】
橋杭岩は毎年応募作品があります.この作品では荒天の日に津浪岩に打ち寄せる白波を長時間露光で雲海のように表現し,今までに見たことのない幻想的な作品にしました.光線が柔らかく,橋杭岩や津浪岩の質感もよくわかります.上側3分の1を占める空の部分が単調になってしまったのが少し残念です.
【地質的背景】
1500万年前の紀伊半島中央部から南部では,複数のカルデラを形成した大規模な火山活動が起こりました.その一連の火山活動の中で流紋岩からなる橋杭岩岩脈が形成されました.その後,周辺の泥岩が浸食によって失われ,橋杭(はしぐい)のように残る姿が南紀熊野ジオパークのジオサイトとなっています.橋杭岩の手前,波食面上に散在する岩塊群は,南海トラフで巨大地震が発生するたびに大津波が橋杭岩からもぎ取り運んだ「津波石」です.(和田穣隆:奈良教育大学)