ジオ鉄賞:たまゆらの中の洗濯岩
写真:落合文登(宮崎県)
撮影場所:宮崎県 宮崎市大淀川JR橋
【撮影者より】
JR橋下流の大淀川左岸河床部には,干潮時を中心に宮崎層群砂岩泥岩互層が露頭する.日南海岸沿いの「鬼の洗濯岩」同様に,波食により基盤面が平坦となり地表付近に波食台が形成されている.当該地の“宮崎相”の砂岩強度は,“青島相”より弱く「洗濯板(ギザギザの強度差)」が明瞭ではない.川端康成が絶賛した「たまゆら」の夕景は,すべての時間軸を優しく包み込む絶景スポットであり,私の週末のジョギングコースの1つにもなっている.撮影地点上流にある河岸沿いの橘公園は,かつて宮崎が空前の新婚旅行ブームであった1970年前後の面影として,フェニック並木が続いている.
【講評・解説】
日豊本線(宮崎〜南宮崎間)で有名な鉄道撮影スポットとして知られる大淀川橋梁(436.6m)は,大正4(1915)年の建設から 100 年を超える今も現役で活躍している鉄橋のひとつです.本作品は,大淀川橋梁を渡る特急列車のシルエットと夕景が織りなす写真の美しさもさることながら,河床の宮崎層群が露岩する干潮のベストの時間帯に狙いを絞った撮影で,地元の地質技術者ならではの常日頃の観察眼が感じられます.昭和 40 年代の宮崎新婚旅行ブームに拍車をかけた小説「たまゆら」.原作執筆のため川端康成が滞在した宮崎観光ホテルも右端にわずかに写しこまれています.地元愛あふれたジオ鉄的感性の光る作品です.(藤田勝代:深田研ジオ鉄普及委員会幹事)