最優秀賞:宝永火口岩脈群
写真:露木孝範(静岡県)
撮影場所:静岡県御殿場市 宝永山 山頂付近
【撮影者より】
2021年7月23日01時35分撮影.宝永火口の上部に割れ目を通過するマグマが固まった屏風のような岩脈が連なる一帯があることは,麓からの観察でも確認することができます.その姿を間近で詳細に捉えようと満月期に宝永山を訪れました.西に傾いた明るい月の光が赤い山肌に立ち並ぶ岩脈を浮かび上がらせ,荒涼として壮大な光景を目前に見ることができました.
【審査委員長講評】
富士山の宝永第1火口岩脈群は五合目から撮影されることが多いのですが,作者はぐっと近づいた宝永山山頂からの撮影なので迫力があります.満月の夜,適度な陰影ができる明け方の撮影で,溶岩流とその間に挟まれる火砕物,それらを貫く岩脈の関係がよく判ります.中望遠で画面一杯に捉えた緊張感のある構図が良かった.
【地質的背景】
1707年噴火で形成された宝永火口の壁には,富士火山の内部が見事に露出している.斜面とほぼ平行し横に連続する灰色の固い岩の層は,山頂火口からの爆発的噴火で放出されたスコリアや火山灰が固まったアグルチネートである.一方,縦に連なり火口壁から突出した岩の壁は,山腹割れ目噴火を起こしたマグマの通路が固まって出来た岩脈である.このようにタイプの異なる噴火の産物が同時に観察できる点で,宝永火口は興味深い.(山元孝広:産業技術総合研究所)