地学露頭紹介

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河川堆積物に見られるHCSのような構造
小松原純子(産総研)

 
野島層群大屋層の河川流路堆積物中に見られる斜交層理
 長崎県佐世保市小佐々町楠泊の海岸に露出している前期中新世野島層群大屋層の河川流路堆積物上部には,ハンモック状斜交層理(HCS)のような低角で比較的波長の長い斜交層理が見られる(小松原ほか, 2003).HCSは一般に荒天時に海底で形成されると考えられており,晴天時波浪限界以下で保存されたものが地層として残る(Harms et al., 1975).堆積環境と堆積構造の不一致が気になっており今回写真を紹介したところ,アンチデューンもしくはHCS-mimicsではないかというコメントをいただいた.HCS-mimicsはアンチデューンとして形成された,HCSによく似た構造のことである(増田ほか, 1993).いずれも高流領域で形成され,陸上の洪水堆積物からも報告がある.今回の構造はこれらである可能性が高いと考えられる.

(文献)
Harms J. C., et al., 1975, SEPM Short Course no. 2, 161p. 小松原純子ほか, 2003,地質学雑誌, 109, 20-29. 増田富士雄ほか, 1993, 堆積学研究会報, no. 39, 27-34.
2021.10.25掲載
 
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