地学露頭紹介

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Wawaの縞状鉄鉱層
大久保英彦(スターミネラルズジャパン)
 
写真1 縞状鉄鉱層の露頭.左から,淡褐色チャート層,磁鉄鉱を 含む淡灰色チャート層,褶曲した淡褐色チャート層. 写真2 露頭上部の厚い磁鉄鉱層と炭酸塩岩や珪酸塩岩の多様な縞 模様を見せる磁鉄鉱.
【露頭の位置】District of Algoma Province, Ontario, Canada.スペリオル湖東岸のMichipicoten Bayの南東側.トランスカナダハイウエイHWY17をWawaの町から11.1 km南下した場所. 北西にはBridget Lake,南東にはAntoine Lakeがある. 47°53’44.5”N 84°50’48.5”W をグーグルマップで検索し, 場所が表示されたらストリートビューにすると,道路の東側の露頭を見ることができる.

【地質学的背景・意義】Superior Province (3100–2500 Ma)の Wawa Subprovince: Wawa Neoarchean (2750 Ma) に属する, Michipicoten Greenstone Belt( 2750–2735 Ma)地域.Greenstone Beltの上の始生代アルゴマ型縞状鉄鉱層が容易に観察できる.北東に世界最大級のAbitibi Greenstone Belt(2800–2600 Ma)があり,Greenstone Beltと火成複合岩体を調べることは大変 面白い.

【露頭の概況】HWY17の東側に幅100 m,高さ4〜1.2 mに渡っ て露頭があり,右から左(SW–NE)に傾斜している.ここに至る道路の左右には輝緑岩の露頭が続き,グリーンストーンベルト帯であることがわかる.輝緑岩の上に縞状鉄鉱層があり,露頭を登ると最上部は磁鉄鉱層が縞模様を見せて広がっている.道路と同方向に滑らかな垂直な断面と,破壊されて凸凹になった部分がある.

【層序】下部,中部A,中部Bは写真1を,上部は写真2を参照. 下部: 変質した苦鉄質火山岩の輝緑岩(diabase) = Michipicoten Greenstone Belt.露頭での層厚は約3 m〜1 m. 中部A:褶曲が顕著で青みを帯びた磁鉄鉱層を含む淡灰色チャ ート層.磁鉄鉱層は5 mmから30 cm.層厚約1 m. 中部B:褶曲が緩やかな淡褐色チャート層.層厚約1 m.菱鉄鉱(siderite: FeCO3)と思われる濃赤色の層(約10 cm)がある.上部:露頭の上は青みを帯びた黒色の磁鉄鉱層が一面に広がる. 層厚約50 cm.7万年前に北東から,2万年前に東南東から二度の氷河が流れ,上部が約1000 m程度削られている.磁鉄鉱層の起伏には細い珪酸塩岩や炭酸塩岩を含む磁鉄鉱の同心楕円状の模様があり,起伏の方向と氷河と共に移動した石の傷跡で氷河が流れた方向がわかる.アルゴマ型縞状鉄鉱層は小規模だが,オンタリオ州には火成複合岩体と関連するGreenstone Beltが数多く存在し,氷河の痕跡と合わせてカナダの地質時代の大きなイベントが残り,大変興味深い.なお,次のウェヴサイト(
https://star-minerals.com/cell/?p=15)にWawaの縞状鉄鉱層の露頭や採集した岩石の写真を載せてある.

(文献) Eyles, N., 2002, Ontario Rocks: Three Billion Years of Environmental Change. ISBN 1550416197. Eyles, N. and Miall, A., 2007, Canada Rocks: The Geologic Journey. ISBN 1550418602.
Morris, T.F. et al., 1994, Ontario Geological Survey, Open File Report 5908.
2021.10.25掲載
 
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