ジオ鉄賞:古の海洋堆積物から見上げて
写真:藤岡比呂志(岐阜県)
撮影場所:岐阜県長良川鉄道 美並苅安駅〜赤池駅(下り赤池駅の20秒ほど手前で撮影)【撮影者より】
長良川鉄道は下りの場合,湯の洞温泉口駅〜徳永駅の約50分間は長良川沿いを通り,露頭を見ながら,地質に関わりながらの旅となります.付加体堆積物である美濃帯堆積岩類の中を主に走り,写真の場所はメランジュからなり,チャート層と泥岩基質の混在岩が見られます.すみきった快晴の中,はるか昔に堆積した海洋堆積物から列車を見上げているという時間のひとこまを切り取ってみました.
【講評・解説】
岐阜県の美濃太田駅(美濃加茂市)と北濃駅(郡上市)を72.1kmで結ぶ長良川鉄道.美濃帯のダイナミックな付加体構造をほぼ南北に縦断しながら走ります.撮影された第3長良川橋梁の架かる区間は1928年(昭和3)に開通しました.作品では露岩の質感を手前に大きく見せ,それを昭和初期のプラットトラス1連が引き立てています.角度が異なる背後の道路橋もアクセントに.新緑に映えるロイヤルレッドの車体は,クラウドファンディングと地元の支援を経て2018春にデビューした観光列車ながら3号「川風号」.ながら1号「森号」,2号「鮎号」と共に地元素材を満載した水戸岡鋭治氏デザインの車両として人気です.ジオの存在感,そして,鉄道があって初めて生まれるジオ鉄の風景,その両方の魅力を知る撮影者の思いが伝わる写真でした.(藤田勝代:深田研ジオ鉄普及委員会)