最優秀賞:地底の世界
写真:新垣隆吾(沖縄県)
撮影場所:ルーマニア サリーナ・トゥルダ
【撮影者より】
岩塩坑として使用されていた場所を,テーマパークにしたサリーナ・トゥルダ.撮影地は地下400メートルほど.圧倒されるその世界と,普段目にすることのない空間を遊び心を持ってテーマパークにしてしまう発想が魅力的な場所でした.跡地として残すだけでなく,リノベーションという発想によって,より理解を深めることができることを学んだ場所でした.
【審査委員長講評】
この作品を一瞬見たときは何が写っているだろうと迷いますが,下端に写っている人から巨大な地下空洞を見上げて撮影した作品であることがわかります.ルーマニアには岩塩の坑跡を利用したいくつかの観光地がありますが,撮影地のサリーナ・トゥルダは坑内に観覧車やボート乗り場まであるアミューズメント・パーク.日本ではほとんど知られていませんが,地質マニアならずとも行きたくなる場所です.
【地質的背景】
この岩塩鉱山は,ルーマニアの中心部に位置するテチス海の一部であるパラテチス海で起こった海水蒸発事件(バデニーナ塩分危機 13.8Ma)で堆積した岩塩層が起源となります(de Leeuw et al., 2010; Baldi et al., 2017).この堆積盆地では,ヨーロッパアルプスからつながるルーマニア北部のカルパティア山脈形成時の地殻変動と浮力により岩塩がダイアピルを形成しています.それら岩塩ダイアピアのいくつかは地表に到達し,人々が古代からそれらを利用してきました.写真は,トゥルダ地域(Turda area)には岩塩鉱山として,非常に大きな人工の空洞を作り出しました.現在,鉱床の役目を終え,トゥルダ鉱山複合施設は観光名所に変わっています.(Alexandru Andrasanu : Haţeg UNESCO Global Geopark)
引用文献
- de Leeuw et al., 2010; Geology, 38, 715-718. doi: 10.1130/G30982.1
- Baldi et al., 2017, GEOLOGICA CARPATHICA, 68, 3, 193-206. doi: 10.1515/geoca-2017-0015