入選:巨岩砲
写真:長谷 洋(和歌山県)
撮影場所:和歌山県西牟婁郡白浜町 富田の磯 メズロノ鼻付近
【撮影者より】
"南紀熊野ジオパーク,エリア内の奇岩です.干潮時に現れるひび割れた岩肌から奇岩を撮影しました.遠近法で人物を小さく見せることで,もたれかかった岩をよりダイナミックに表現しました. 後ろに垂直に立つ奇岩も引き立て役となって巨大な大砲のように見えました.".
【審査委員長講評】
不思議な雰囲気の作品です.モデルが立っている地層はほぼ水平ですが,その上に2つの巨岩が置かれています.夏の正午,トップライトの光線でできた影が巨岩の存在感を強く感じさせます.この巨岩はどこから来たのでしょうか.モデルの立ち位置やポーズも決まっています.
【地質的背景】
紀伊半島南西部には,前期中新世末から中期中新世に堆積した田辺層群が分布し,白浜町の海岸沿いにはその上部層が現れます.田辺層群は,四万十付加体上の前弧海盆に堆積したものです.この上部層は砂岩・砂岩泥岩互層・礫岩などの粗粒砕屑岩が優勢で,厚い砂岩層は平行葉理,斜交葉理などのベッドフォームが発達するとともに生痕化石を多産します.砂岩の巨大転石は,その表面に侵食により形成された変化に富む起伏があり,際立った景観を形づくります.(後 誠介:和歌山大学災害科学教育研究センター客員教授)