入選:風雅
写真:佐藤 悠大(福岡県)
撮影場所:長崎県平戸市 生月(いきつきじま)町 潮俵断崖
【撮影者より】
海岸には玄武岩の柱状節理が広がっていた.海水を浴びその色はますます黒い.奥には荘厳な節理の崖がそびえていた.海と空の動・節理の静のコントラストを高濃度NDフィルターを使うことにより強調した.
【審査委員長講評】
北九州には新第三紀の柱状節理が広く見られますが,生月島の潮俵断崖もそのひとつです.この作品は濃いNDフィルターをかけて日没直前に219秒の長時間露光をしたものです.そのため波が手前の柱状節理上面をベールのように覆い,バックの海面の波は消されています.遠方には夕日に照らされた柱状節理の崖,雲の動きも表現されて幻想的な作品になっています.
【地質的背景】
生月島は長崎県の北部の平戸島から1991年に開通した1kmの橋によってつながっており,九州本土から車で行くことが可能となっている.撮影地塩俵断崖は生月島の北部に位置し,なかなかたどり着けない場所である.九州北西部は後期中新世以降(9−2Maごろ)のアルカリ火山岩が日本海拡大時期の中期中新世ごろの堆積岩や基盤岩上に広く覆っており,平戸島から呼子を経て福岡まで火山の痕跡が見られる.生月島では南部には中期中新世ごろの砂岩層が見られ,緩い傾斜の不整合でこのアルカリ火山溶岩が重なる.海岸に連続する垂直な柱状節理は溶岩が平坦なところにたまり,冷却時に収縮して固まったことを示している.(清川昌一:九州大学)