スマホ賞:大地のグラデーション
写真:加古原恵(東京都)
撮影場所:ベトナム ムイネー,スイティエン(妖精の渓流)
【撮影者より】
砂漠を抜けた先に広がるのは,鮮やかな絶景.自然の造形美に目を奪われます.
【審査委員長講評】
ムイネーはベトナム南部のホーチミン市からバスで6時間の海岸にあるリゾートで,近くにあるのがこの渓流です.長さ600m,崖の高さは20m程度ですが,この作品では崖上部の赤い地層に目が惹かれます.対岸の緑との対比でより鮮やかに赤が際立ちます.しかし雲が青味をおびていることからもわかるように彩度が強調されており,赤い地層も同様です.過度な彩度強調は実物とかけ離れてしまうのでご注意下さい.
【地質的背景】
ベトナム南東部のBinh Thuan省の沿岸には,長さ100 km,最大幅20 km,最大標高150 m以上の砂質堆積物からな丘陵地が発達します.ムイネー地域はその中の美しい砂丘の一つで,この地域では白亜紀の流紋岩などの火成岩類が基盤となって,その上に主に風の作用によって堆積した砂が見られます(風成堆積物).砂の堆積は少なくとも20万年前より前に始まったと考えられています.現在でも植生がない裸地では,東北東からの冬季モンスーンにより横列砂丘や縦列が発達しています.左手の露頭は更新世の風成堆積物で,上部と下部の砂の色の違いは,雨季と乾季を繰り返す半乾燥地の続成作用を反映しています.