第10回惑星地球フォトコンテスト入選作品

 

日本地質学会会長賞:ルービックキューブ
写真:島村哲也(茨城県)
撮影場所:北海道 雌阿寒岳ポンマチネシリ


 

【撮影者より】
四角い形状とモザイク状の割れ目が面白くてシャッターを切りました.噴石の大きさは,一辺40cmくらいです.雌阿寒岳はいくつかの火山からなり,その一つのポンマチネシリは現在も噴気が立ち上がる活火山で,最近では2008年に小規模な水蒸気噴火が発生しました.周辺にはマリモで有名な阿寒湖や風光明媚なオンネトーなどの観光地のほか,泥火山“ボッケ”や生きている酸化マンガン鉱床“湯の滝”などの地質学的な見どころもあります.

【審査委員長講評】
この作品は,最優秀賞と同じ雌阿寒岳で撮影されたパン皮状火山弾です.肩の力を抜いてあっさりと撮影したようにみえるのがこの作品の魅力です.火山弾の落下時には割れ目がなく,落下後に内部が膨らむ結果,表面にこのような割れ目ができるのです.火山学の教科書に使いたくなるような作品です.

 

地質学的解説】
写真が撮影された雌阿寒岳では,1950年代から現在まで,小規模な水蒸気噴火(御嶽山で2014年に発生したような噴火)が10回以上頻発しています.写真の岩塊は,そのような噴火で放出し,火口付近に堆積したものと思われます.ギザギザしたひびは,岩塊が高温状態から急冷・収縮する際にできたものと思われますが,着弾の衝撃,あるいはその後の経年変化で露出部(地中に埋まっていない部分)のひびがさらに広がったのでしょう.径50cmほどの岩塊がバラバラにならずに保存され,立方体に近い形状と割れ方の偶然も重なって,ルービックキューブ構造を示す奇岩となりました.(長谷川 健:茨城大学)