優秀賞:月明りのメテオラの谷
写真:川口雅也(神奈川県)
撮影場所:ギリシャ テッサリア地方 トリカラ県カランバラ
【撮影者より】
ギリシャのテッサリア平原が尽き、ピンドス山脈が始まる境にカルスト台地が浸食をうけた「メテオラ」がある。巨大な柱のような岩峰が何本も聳え立ち、その岩峰の上に修道院が建っている。14世紀にセビリアの侵攻による混乱を避けた修道士たちが俗世との関わりを断ち切って共同生活を始めたのがその始まりとのこと。「メテオラ」とは、ギリシャ語で「中空の」を意味する「メテオロス」からきていて、流星の「メテオ」と同じ語源だ。
【審査委員長講評】
メテオラはギリシャ北西部にあり,石灰岩の岩峰群の上には14〜16世紀に修道院が建てられました.1988年には世界遺産に登録されています.従来の応募作品には「ジオ+星景」という組合せはありましたが,この作品ではさらに歴史が加わりました.月齢13の月光に照らされた石灰岩の岩肌,修道院の建物,遠くの街明かりからは現代人の営みなどさまざまな思いを辿ることができます.
【地質的背景】
(メテオラの奇岩群) ギリシャ北西部のセサリア(テッサリア)地方にあるメテオラの奇岩群をつくる地層は、後期漸新世から前期中新世(約2300万年前)にかけて、プレート収束域の陸側前弧海盆の海底扇状地に堆積した砂岩や礫岩からなるメテオラ礫岩層である。地層中に発達した断層や節理に沿って、選択的に侵食が進んでできた地形である。奇岩群の上には、15世紀後半〜16世紀頃に建設された東方正教会の修道院があり、奇岩群とともにユネスコ世界遺産(文化・自然複合遺産)に指定されている。(平田大二:神奈川県立生命の星・地球博物館)
参考文献: Ferriere J. et al. (2011) Bull. Soc. Geol. France. 182(5):437-450. Tectonic control of the Meteora conglomeratic formations (Mesohellenic basin, Greece)