第10回惑星地球フォトコンテスト入選作品

 

最優秀賞:月下の大噴煙
写真:横江 憲一(北海道)

撮影場所:北海道 雌阿寒岳 頂上附近の稜線

 

 

【撮影者より】
2018年11月17日は,オンネトー国設野営場から雌阿寒岳を目指して登山しました.登山開始から深夜です.実は前週も同じ時間帯の雌阿寒岳に登っており,2週連続です.雌阿寒岳から阿寒富士にかけての稜線にさしかかった時,いつもと違い噴煙が多い事に気がつきました.11月20日以降にポンマチネシリ想定火口を震源とする火山性地震が増加し,23日は噴火警戒レベルが2に引き上げられたので,その前兆かもしれません.写真左側の噴煙がポンマチネシリ想定火口,右側の噴煙が中マチネシリ想定火口.左側の阿寒富士から雌阿寒岳の頂上までの雄大な地形を入れるため,フルサイズの魚眼レンズを使用しました.撮影は,強風・微風の中,激しく舞い上がる両噴煙でしたが,月が見えた一瞬,シャッターを切りました.手前側の赤色から黒色の火山土質,空の青さ,星,氷結した青沼など質感も表現してみました.

【審査委員長講評】
阿寒岳は日本百名山の1つで,月齢10の月が雌阿寒岳の火口を逆光気味に照らしています.魚眼レンズを使用していますが水平にセッテングしているために歪みがなく,たなびく白煙,その向こうに見える阿寒富士,雲海の上に浮かぶ月と星々,広がりがあって気持ちの良い作品です.4500万画素の高画素カメラとシャープなレンズの組み合わせで撮影されており,大伸ばしでの作品をじっくり見たいものです.

【地質的背景】
雌阿寒岳(標高1,499m)は北海道内で最も活動的な火山のひとつで,最近では1988年,1996年,1998年,2006年そして2008年に噴火しました.目の前の大きな凹地形は,ポンマチネシリ山頂火口(数百年前に形成)と呼ばれ,右奥(北西側)がより深く,二段構造になっています.さらにこの中に新しい小火口群が存在し,活発な噴気が,赤沼火口(右奥)と1996年噴火口(左手前)から立ち昇っているのが分かります.手前中央の青沼火口は,雪が解けると美しいエメラルドグリーンの姿を見せるでしょう.左奥に聳える阿寒富士は,約2,000年前にできたスコリア丘(黒い軽石が降り積もってできた火山)です. (長谷川 健:茨城大学)

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