スマホ賞:流
写真:石田英俊(高知県)
撮影場所:高知県吾川郡 仁淀川支流中津川上流 雨竜の滝
【撮影者より】
撮影者のコメント:水流により時流が削り出され風流と為す.私たちの生活する惑星地球は,悠久とも思える時の流れを地質に重ね上げ現(うつつ)の姿を現しています.ある時から始まった水の流れが私たちを過去へと誘(いざな)う扉を開き,未来へ続く時の流れが更なる過去への誘いを深めていきます.剥き出しにされた過去の記憶,地質.書物すら無い時代の歴史の断面に誰もがロマンを感じこれを風流と呼びます.
【審査委員長講評】
雨竜の滝は,高知県の上流の仁淀川にかかる滝です.滝の高さは16mほどですが,堅いチャートを穿ってできたポットホールやチャットの縞模様や色合いが魅力的に撮られています.露出をアンダー気味にしたので,滝から落ちる水や濡れた岩肌の質感がよく表現されました.注意深く撮影すればこのような作品がスマホで撮影できるのですから,最近のスマホのカメラの進歩には驚かされます.
【地質的背景】
撮影場所の中津渓谷は,秩父帯の北部にあたる中生代の付加体です.ここにはトリアス紀のチャートがあります.チャートは放散虫という珪質プランクトンが深海底に降り積もってできた地層で,海洋プレートとともに移動してきて,日本列島に付加されたものです.ガラス質の地層が規則正しく繰り返す,とてもきれいな縞々です.そしてとても硬いがゆえに,中津渓谷は深くて急峻な崖に囲まれており,すばらしい景観をみせてくれます.(山口大学大学院創成科学研究科 坂口有人)