優秀賞:異様な光景
写真:長谷 洋(和歌山県)(和歌山県)
撮影場所:東牟婁郡古座川町小川 滝の拝
【撮影者より】
南紀熊野ジオパーク,ジオパークサイトの滝の拝のポットホールです.砂岩泥岩層が過去のマグマ活動による熱水を受け,白っぽく硬くなっています.また,大雨時の激流に混ざった岩石類によって削られて穴や溝が出来ています.良く訪れる所ですが,この日は紅葉が紅く水面に反射し,長い年月を経て出来た波打つ奇岩と相まって,まるで動物達の墓場のような「異様な光景」となっていました.
【審査委員長講評】
:「滝の拝」とは変わった名前ですが,和歌山県古座川にある小さな滝とその周辺のポットホールが多数ある河床のことです.作者は滑らかに侵食された岩肌と水面に映った紅葉が新鮮に見えたようで,その部分のみを切り取って撮影しています.シンプルな画面構成にセンスの良さが感じられます.
【地質的背景】
紀伊半島南東部には,前期中新世末から中期中新世に堆積した熊野層群が分布し,古座川の支流小川流域にはその下部層が現れます.熊野層群は,四万十付加体上の前弧海盆に堆積したものです.滝の拝付近は層理面が不明瞭な砂岩からなり,熱水変質を受けて岩石が白色化・硬化しています.このため河床は,さまざまな形のポットホールの発達した岩盤となっています.この変質帯は中期中新世の火成作用によるもので,有名な橋杭岩から北北西に伸びる珪長質火成岩脈群があります.(和歌山大学災害科学教育研究センター 後 誠介)