第8回惑星地球フォトコンテスト入選作品

 

入選:渓谷の歴史
写真:寺田百合(東京都)
撮影場所:アイスランド (Iceland Fjadrargljufur Canyon)


 

【撮影者より】
Fjadrargljufur Canyonは,深さ100 m,全長2 km を誇る巨大な渓谷です.蛇行した切り立つ壁は,氷河時代に形成されたパラゴナイトで構成されており,約200万年前のものであると考えられています.氷河から川となって流れ出た水は,その渓谷を侵食し,同時に多くの堆積物を運んだとされています.やがて湖が一杯になり,その堆積層すら削られ始めました.両側に見られる河成段丘から,その歴史をうかがい知ることができます.

【審査委員長講評】
この谷はアイスランドの海岸沿いを走る国道1号線のすぐ近くにあるので,観光地としても人気のある場所です.この作品もHDRで処理しているため,影の中の谷間や雲の細部がしっかりと描写され,まるで絵画を見ているようです.渓谷というより峡谷と呼ぶのが相応しい谷です.


【地質的背景】
溶岩が水底で噴出すると,表面が急冷してガラス化します.この時ガラスにヒビが入り,沸騰する周囲の水に粉砕されるため,水冷破砕溶岩(ハイアロクラスタイト)となります.パラゴナイト(palagonite)は水冷破砕溶岩の火山ガラスが,高温の水の影響で変質したものです.陸上なのに水底の溶岩が広く分布するのは噴火が氷河の下で発生したためです.パラゴナイト化した噴出物は氷河と火山の国アイスランド特有の景観を数多く形作っています.(神奈川県温泉地学研究所 萬年一剛)

 

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