最優秀賞:毘沙門海岸の奇岩
写真:田中健以(神奈川県)
撮影場所:神奈川県三浦市南下浦町,毘沙門海岸
【撮影者より】
自然が創りあげたとは思えない奇妙な外観に美しさを感じ、撮影しました。泡のようにも見える白い部分は濡れると黒くなります。撮影日前後は雨もなく、乾燥した日が続いたため、 海の塩が表面に浮き出ていたのでしょうか?下の方には赤い部分もあり、色の組み合わせがとても魅力的に感じました。
【審査委員長講評】
作者は地元の方で,この海岸をよく歩かれているのでしょう.普通の人が見過ごしがちな奇岩を注意深く撮影しています.この作品ではHDR(High Dynamic Range imaging)という処理を使っています.夕方に西向きに撮影しているので影になっている奇岩を,この処理によって浮き出さしています.ゴミや草などが全くなく(掃除をしたのでしょうか)画面がよく整理され,まさにジオが主役の力強い作品になっています.背景の城島や雲も良いアクセントになっています.
【地質的背景】
三浦半島南部の海岸には完新世の離水波食棚(波の浸食によってできた平らな棚状の地形)が広がり,地層の観察に適しています.写真の地層は泥岩とスコリア凝灰岩の互層からなる中新―鮮新統の三浦層群三崎層です.黒色のスコリア凝灰岩は伊豆・小笠原弧由来と考えられ,写真では吹き付けられた波しぶきから析出した塩が白く見えています.三崎層には断層による地層の繰り返しや注入構造,スランプ構造などが観察され,フィリピン海プレートの沈み込みによってつくられた付加体堆積物として注目されています.(柴田健一郎:横須賀市自然・人文博物館)