入選:海上の城壁
写真:小林健一(埼玉県)
撮影場所:千葉県銚子市屏風ヶ浦
【撮影者より】
銚子半島の南西側の岸壁は「屏風ヶ浦」と呼ばれ,高さ40-50m,延長約10kmにおよぶ海食崖が連続しています.砂岩室の土壌のため浸食に弱く,波消しブロックが設置されています.この日本離れした雄大な景観を今後も後世に引き継いでいきたいものです.
【審査委員長講評】
屏風ヶ浦の崖下に下りられる場所は数カ所しかなく,撮影場所は定番ポイントとなっています.かつてこの崖は毎年0.5mずつ後退していましたが,作者の立っている防波堤で護岸されたことによって後退は止まりましたが,そのために新鮮な崖が見られなくなってしまいました.防波堤がなければこの作品はとれないので,痛し痒しですが・・・・・・・・.
【地質的背景】
写真では,色調・質感の異なる2つの地層群が重なる様子がはっきりと見て取れます.下部は遠方に向かって緩やかに傾斜する,深海堆積層の犬吠層群です.堆積年代は,写真右端で約2百万年前,左端の刑部岬あたりで約78万年前の下部−中部更新統境界付近となります.上部は,犬吠層群をほぼ水平に侵食した面を覆う,茶色の砂岩層からなる浅海堆積層の香取層です.堆積年代は約12万年前の最終間氷期と考えられています.なお地層名は酒井(1990)によります.(岡田 誠:茨城大学)
(文献)酒井豊三郎,1990,千葉県銚子地域の上部新生界―岩相・古磁気・放散虫化石層序―宇都宮大学教育学部紀要 No.23 Sec2 p1-34