入選:造形美
写真:大矢 学(東京都)
撮影場所:イギリス・スカイ島
【撮影者より】
スコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島最大島であるスカイ島の北端トロッターニッシュ半島は壮大な地質学的特徴に恵まれた風景が広がります.地滑りの結果形成されたと言われる約50メートルの玄武岩の石柱「オールド・マン・オブ・ストー (Old Man of Storr)」は,まさに自然が作り出す造形美そのもので,朝日に輝く様は荘厳の一言に尽きます.
【審査委員長講評】
スカイ島は,太古代の片麻岩から新生代の火山岩まで多様な岩石が露出します.この作品は,火山岩が広く分布する島北部の名所,Old Man of Storrを早朝の絶妙なタイミングで撮影しています.なだらかな遠景は氷河で削られてできた地形でしょうか.風景写真としても地質写真としても通用する第一級の作品です.
【地質的背景】
スコットランドの西部のインナー・ヘブリディーズ諸島最大の島であるスカイ島では,基盤(トリドニアン砂岩)の上に,古第三紀の約63-52 Ma 頃の玄武岩や分化岩体などが大規模に噴出・貫入しており,マグマの分化,貫入,噴出などの研究上のメッカとして知られています.本写真(スカイ島北部のオールド・マン・オブ・ストー(Old Man of Storr)と呼ばれる)は,玄武岩質のマグマの火道が岩尖状に残された岩体であり,地すべりによって移動してきたものとされています.(小川勇二郎)