入選:ハート型の礫
写真:辻森 樹(宮城県)
撮影場所:台湾,花東海岸
【撮影者より/地質的背景】
台湾東海岸,海岸山脈の鮮新世,石梯坪中凝灰岩の礫岩露頭(台湾花蓮県豊浜郷港口村石梯坪).白色の中性〜酸性凝灰岩に火山角礫岩が互層する石梯坪海岸は花蓮県の景勝地として知られています.この地域はフィリピン海プレート上のルソン弧がユーラシアプレート上の台湾弧に衝突・接合する激しい構造場であり,この写真の礫岩を含む火山砕屑岩の地層はルソン弧北端部の前弧堆積物として,ルソン弧の前弧域の火成活動と発達史を記録しています.数年前,石梯坪海岸を巡検中に写真のハート型の礫を見つけました.淘汰が悪く混沌とした印象の礫岩は,灰色の基質中に淡い単色に近い流紋岩や安山岩の火山岩礫を主としています.しかし,目にとまった 「ハート型の礫」は粗粒の閃緑岩ということもあって異彩な存在でした.ありそうでなかなかない形の礫にほっこり癒され,巡検の思い出に写真に残しました.(辻森 樹:東北大学)
【審査委員長講評】
大したことのないようでも,よく見ると凄いということがありますが,それがこの作品です.ハート型の礫だけが粗粒の火成岩で特に目立ちますが,普通の人には気付きにくいものです.と思ったら,作者はフィールドを得意とする岩石学者でした.遊び心がある楽しい作品です.