最優秀賞:奇岩越しの世界文化遺産
写真:後藤文義(神奈川県)
撮影場所:三浦市諸磯海岸
【撮影者より】
諸磯の隆起海岸といえば,地震歴史が目の当たりに分かる,海食崖として国の天然記念物に指定されています.この写真は,関東大震災で隆起した波食台が,その前後の激しい浸食作用を受けて,この様な奇岩となったと考えます.
【審査委員長講評】
三浦半島の南西端にある諸磯海岸から冨士山を臨んだ作品です.房総半島や三浦半島の南部には1923年関東地震で隆起した海岸が広く分布します.隆起海岸は平坦面となっている場所が多いのですが,諸磯海岸では地層に硬さや色の違いがあってキノコ岩のような面白い地形になっています.冨士山を入れたので,臨場感がアップしました.
【地質的背景】
三浦半島は1923年の大正関東地震,1703年の元禄地震をはじめ相模湾,房総沖を震源とする地震の際に繰り返し隆起しており,海岸の地層の露出が非常に良好です.諸磯には凝灰質砂岩,凝灰岩と泥岩の互層からなる三浦層群三崎層(中期〜後期中新世)が分布します.露頭中央には共役逆断層が発達し,断層面が完全に癒着していることから,断層の形成が堆積層の固結前であることが分かります.プレート沈み込み,もしくは大規模な地すべりにともなう変形によるものと考えられます.(芦 寿一郎:東京大学)