入選:立ち上る白煙
写真:岡本芳隆(神奈川県)
撮影場所:神奈川県足柄下郡箱根町 大涌谷
【撮影者より】
大涌谷は箱根の代表的な観光スポットです.約3000年前に箱根火山の水蒸気爆発でできた神山爆裂火口の跡が 大涌谷です.今も大地から熱い水蒸気と硫気を噴出している.この日も観光客の中,多くの外国人の姿も見られ 国際的な観光地であることがわかります.
【審査委員長講評】
箱根の大涌谷を訪れると中国をはじめ外国からの観光客が多いのにびっくりしますが,彼らが黒玉子を食べ,噴気活動を眺め,はしゃいでいるようすを見ると火山国日本を漫喫してくれているようで嬉しいものです.そのすぐ近くから撮影したのがこの作品です.太陽が冠ヶ岳にかかる位置をねらって逆光を軽減し,白い噴気や秋の大涌谷の雰囲気をうまく出しました.
【地質的背景】
大涌谷とは,本来的にはスマホ賞「灼熱の谷」で写された,大涌沢の流れる谷のことを言います.この写真は冠ヶ岳のふもと,大涌谷自然研究路の終点付近で撮影されています.黒たまごを蒸している有名なスポットですが,ここだけを訪れると大涌谷の“谷”はどこのことなのか,疑問に思ってしまいますよね.なお,大涌谷の「白煙」は湯気で,火山灰は入っていません.火山学者は噴気と呼んでいますが,大涌沢の噴気はこの付近の沸点(97℃)です.噴気温度の記録は大正時代にまで遡ることができますが,沸点を超える噴気はほとんど出ていません.(神奈川県温泉地学研究所:萬年一剛)
※追記:箱根山では,2015 年4月26日から大涌谷付近を震源とする火山性地震が増加し,火山活動が活発化しています.気象庁は,5月6日に火口周辺警報を発表し,噴火警戒レベルを 1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げました.今回の活動に関しては,各機関等HPに詳細情報が更新されています. (2015年5月19日現在)
[参考URL]
・気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html
・神奈川県 http://www.pref.kanagawa.jp/
・神奈川県温泉地学研究所 http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/