入選:自然の造形
写真:山本和恵(福岡県)
撮影場所:阿蘇山麓
【撮影者より】
地質学とは無縁の者ですが阿蘇火口付近の撮影後,下って行くと自然の造形美と思われる場所を発見.感動し部分的に撮っていました.見渡すとグランドキャニオンを思い出すような断層面もあり,全体を撮った中の一枚です.(2014年4月8日撮影)
【審査委員長講評】
阿蘇中岳第1火口は昨年夏から噴火活動が活発で,それまであった池が干上がり,火山灰を周囲にまき散らしています.この作品は阿蘇山ロープウェイ山頂駅から少し下った場所から東側の第4火口を撮影したものです.昨年8月からこの地域は立入禁止となっています.ここに写っている白い堆積物もGoogle Earthで見ると黒い火山灰に覆われてしまい,まさに地球が生きていることを感じさせます.
【地質的背景】
阿蘇中岳は,第1火口が現在も活動を続けていますが,この第4火口は1932-33年ごろに活動していた場所です.火口底にはイタドリの小丘状群落が発達し,その間を縫うように,降雨による水の流れが網目模様を形成しているとともに,流れ込んだ火山灰が扇状地状の地形をつくっています.火口壁には柱状節理が発達したアグルチネートが垂直な崖をつくり,その上に幾層もの火山灰層がみられます.このように,様々な火山の営みがつくる景観を,微妙なコントラストとともに捉えたすばらしい写真です.(池辺伸一郎:(公財)阿蘇火山博物館)