入選:王冠形態をつくる岩片インパクト
写真:椎野勇太(東京都)
撮影場所:ユーシャン採石場(スウェーデンダーナラ県シリヤン地域)
【撮影者より】
雨天続きで調査が難航しつつ,ようやく晴天に恵まれたある日,ユーシャン採石場の片岡に捲れ上がった王冠を見つけました.それは,蹟石衝突直後の一瞬を連想させるような静かな躍動感でした.
【審査委員長講評】
これも内部からのガスによって泥の泡が飛び散った瞬間を撮影した写真かと思いましたが,そうではなく王冠状に固結した衝突孔だということです.それぞれの王冠の中には大きな岩片が入っているので,雨上がりの採石場の泥だまりに岩片を投げ込んで作った人為的な衝突孔のようです.
【地質的背景】
スウェーデン中南部シリヤン地域には,オルドビス紀(およそ4億5000万年前)の生物礁に由来する石灰岩の採石場が散点的に分布します.重機や発破などの石灰採掘作業で舞い上がった粉塵は場内に再堆積し,ひとたび雨が降れば,至るところが細粒泥質の泥溜りと変貌します.まだ乾燥しきらない泥溜りに岩片が飛び込むと,まるで隕石が衝突したかのようにめり込み,飛び散った泥が空中で固化することもあります.絶妙な保湿量と泥溜りの粘性が,その底面に王冠のような衝突痕を形成しました.(撮影者)