入選:台湾燕巣泥火山
写真:田中郁子(兵庫県)
撮影場所:台湾高雄県高雄市燕巣区金山村,烏山頂泥火山自然保護区
【撮影者より】
学部時代に留学していた台湾に思いを馳せ,金沢大の後輩の台湾一周大巡検に通訳として同行させて頂いた際の一枚です.これは台湾の最南端高雄市に位置する台湾最大の泥火山です.泥火山とは,地下深くの粘土鉱物に地下水が加わり噴出したもので,この写真は火口より噴出するバブルの決定的瞬間をとらえたものです.バブルはメタンを主成分としているため,火を近づけるとボッと激しく燃えます.
【審査委員長講評】
作者は泥の泡が破裂する直前を良いタイミングで撮影しています.日本でも別府や雲仙などの温泉の地獄巡りではこのような光景に出会いますが,破裂直前をとらえるのは難しいものです.デジタルカメラが普及した現在,フイルム代を気にすることもなく,連写機能を使ってこのような写真が撮りやすくなりました.
【地質的背景】
泥火山は堆積岩分布地域において,噴出する泥,地下水,ガス,石油などが形成した小高い地形的高まりと定義されています.写真の台湾燕巣泥火山は,地下深部において粘土鉱物の脱水により形成された異常間隙水圧層によりChishan(籏山)断層沿いに上昇した流体が形成したもので,標高180mの 尾根部に開けた平地に7個の噴出口を持ち,現在でも間欠的に活動しています.比高は3.3mあり,最も高いものは4.5mに及びます.湧出する地下水のδ18Oは6.13‰,δDは-17.7‰,Cl-濃度は5242.9mg/lであり,化石海水(大昔の海水が地層の隙間などに閉じ込められたもの)が起源と考えられています.(山口大学 田中和広)