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┴┬┴┬ 【geo-Flash】 日本地質学会メールマガジン ┬┴┬┴┬┴┬┴
┬┴┬┴┬┴┬ No.154 2011/10/4 ┬┴┬┴ <*)++<< ┴┬┴┬┴
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★★目次 ★★
【1】台風12号による紀伊半島における地盤災害合同調査団調査速報
【2】地球惑星科学連合2012年大会のセッション提案にご注意下さい
【3】本の紹介:「宮澤賢治地学用語辞典」加藤碩一著
【4】水戸大会アンケート結果:ご協力ありがとうございました
【5】支部情報
【6】その他のお知らせ
【7】公募情報・各賞情報
【8】地学クロスワードパズル
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【1】台風12号による紀伊半島における地盤災害合同調査団調査速報
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9月23日〜25日にかけて奈良県内で実施された、台風12号に伴う大雨で発生
した主要な大規模な斜面変動を対象とした緊急調査の調査速報を掲載します。
調査結果概要:調査の結果、以下の状況が確認できた。
・大半の崩壊が、泥質メランジュ(泥質混在岩)でかつ流れ盤構造の斜面
で発生した。
・過去の崩積土と共に地山が崩壊している箇所が多かった。
・多くの崩壊前地形に地すべり地形(不規則な変状など)が認められる。
・黒滝村赤滝の2つの崩壊斜面は断層破砕帯からなる。その断層破砕帯の
一つは、四万十帯・秩父帯の境界断層に相当する。
調査速報全文はこちらから、、、
http://www.geosociety.jp/hazard/content0067.html
<参考情報>
産総研地質調査総合センターHPに関連する地質概要が掲載されています。
「2011年9月台風12号による紀伊半島の土砂災害(地質概要)」(産総研HP)
http://www.gsj.jp/Gtop/topics/kiihanto/
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【2】地球惑星科学連合2012年大会のセッション提案にご注意下さい
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来年(2012年)の日本地球惑星科学連合大会でセッション開催を予定している
専門部会及び会員の皆様へ
すべてのセッションが公募になっています。セッション提案を予定している
場合は、お忘れのないよう申込手続きをお願いします。
締切は【10月21日(金)】です。
地質学会主催または共催の形(地質学会を提案母体にする形)でセッション提案
を予定している専門部会及び会員は、次のような手続きをお願いします。
・最も関連する(または従来母体となってきた)専門部会の行事委員を通じて
行事委員会に報告し、承認を得たら申込手続き。
・関連する専門部会がない場合は,コンビーナーが行事委員会(学会事務局)
に直接報告し、承認を得たら申込手続き。
ご協力よろしくお願いします。
日本地質学会行事委員会
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【3】本の紹介:「宮澤賢治地学用語辞典」加藤碵一著
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愛智出版 2011年9月16日発行
カラー口絵3ページ,A5判460ページ
ISBN978-4-87256-416-7 定価本体6000円+税
宮澤賢治ほど,多くの人びとに愛され親しまれ続けている作家は少ない。賢治の作品には,地質や鉱物に関する多くの専門用語がきら星のように詰まっており,多くの賢治愛好家による解釈・論評がなされている。けれども,これらの用語が賢治作品に現われるとき,知識不足の故に,それに対する解釈が誤りの多いままに見過ごされてきた。著者は,このような事情を憂えて,これまでに賢治に関する多数の著書を公刊された。著者による『宮澤賢治の地的世界』(愛智出版)は,その嚆矢(こうし)として高く評価され,2007年度の宮澤賢治奨励賞を受賞された。
今回上梓された本書は,さらに賢治の文学に用いられている地学用語に関しての徹底的な解説を試みた労作である。著者の立場は,「はじめに」にあるように「地質学分野の学術用語の解説等には,残念ながら非常に多くの誤りないし疑わしい事例が見られ,このことは作品の理解を妨げるだけでなく誤りが再生産されることによってひいては地質学の普及啓蒙にも影響を及ぼしかねない。・・・わかりにくい用語や見知らない用語を一方的に「賢治の造語・修辞」として思考停止するのはいかがなものであろうか。・・・いずれにしても基本的な記述・解説は正確であるべきである」ことであり,「作品・テクストそのものとだけ向き合えば必要十分だといった感傷的な反発では,かえって賢治作品の素晴らしさを見逃しかねない」との考えで終始一貫している。
本書の構成の特徴は,まず賢治が参考にしたと思われる所蔵図書,ならびに盛岡高等農林学校在籍当時に同校に備えられていた蔵書目録などが載せられていることである。周知のように,賢治の書簡には彼がたびたび仙台や東京・日本橋の丸善,あるいは古書店などに出向いて岩石学や鉱物学の洋書を求めたことが記されている。賢治はDana, Harker, Iddingsなど,当時の第一級の専門家によるテキストブックが刊行されるたびに求め,読んでいた。実を言うと,これらの書物の何冊かは私の学生時代にもお世話になったものもある。これらの蔵書目録から,賢治が相当専門的な知識を得ていたことが理解される。続いて,賢治やその作品に関係する地質学者,地球物理学者や学協会についての紹介があり,当時の日本における地質学界の様子が概観されて興味深い。そして,用語解説と続く。 著者があえて『辞典』とした理由は,それぞれの用語に関して,単なる用語の解説にとどまらず,賢治が作品を書いた当時の地学用語の解釈や,学問的・社会的背景について詳述され,それぞれの用語がどの作品,あるいは書簡などに現われているかが詳しく紹介されているからであろう。例えば,「地球」の項では,19世紀から20世紀初頭にかけてはケルヴィン卿による地球年齢の推定から,ラザフォードによる放射性同位体を用いた年代測定への転換期に相当し,ハッブルの宇宙膨張説が提唱された頃なので,賢治もそういった科学の進歩をどのように捉えていたかを改めて問う必要があるとしている。また,「イリドスミン」の項では,明治中期に北海道夕張川で発見・同定されたイリドスミンの実物を賢治が実際に見たであろうこと,その後,北海道や陸前・常陸などでも発見され話題になっていたことを受けて,賢治が早池峰山を中心とした北上山地の蛇紋岩地帯でイリドスミン採掘を夢見ていたことが詳しく書かれている。「地形図・地図」ならびに「地質図」「地質調査」の項では,当時の地形図の発行状況,地質学者としての賢治がいかに活躍したかなどが,彼の調査した地域を具体的に挙げ,さらに賢治の作品に彼の調査結果がどのように現われているか,詳しく紹介されており,たいへん興味のあるところである。「鉱物」の項でも,古く「金石学」と呼ばれた頃の状況,賢治がたびたび参考にした盛岡高等農林学校所蔵の京都島津製作所製,あるいはクランツ社製鉱物標本,当時の農商務省地質調査所鉱物陳列館や上野の帝室博物館の様子などが詳しく紹介されている。こういった項目における詳細な記述は,賢治の生きた時代についての科学史的側面を浮き彫りにした役割も果たしていると考えられる。その他の一つ一つの項目においても,賢治作品中の地質学用語に関するこれまでの解釈に疑義のあるものについては詳しい論評が加えられている。さらに誤りの一人歩きを危惧して,誤植と思われる小さな誤りまでが洗い出され,指摘されている。
最後に参考文献が掲載されているが,本書執筆のものの他に,『盛岡高等農林学校図書館 和漢書目録』(1937)が載せられており,賢治が在籍した当時,自分の蔵書の他に,彼がどのような書物に囲まれていたかが分かる。さらに,補遺の中で,賢治の作品によく出てくる西域やトランスヒマラヤに関する知識をどうやって得たのかが述べられているのは,大変興味の深いところである。賢治が得た知識の源として,本学会の前身である東京地質學會による『地質學雑誌』の他に,東京地學協会の『地學雑誌』や『地學論叢』の果たした役割は大きかった。
賢治のすべての作品に目を通し,地学用語を洗い出してその解説のみならず,作品評論から当時の社会情勢まで話が及んでおり,著者の並々ならぬ賢治作品への畏敬の念と,情熱がひしひしと感じられる。いままでの「基本的な記述・解説は正確であるべきである」ことに欠けていた賢治研究者はもちろん,地学の知識をあまり持ち合わせない一般読者にとっても格好な辞典と言える。本書のカバーに描かれている賢治の点描画は,物見山の閃緑玢岩露頭を背にして,物思いにふけりつつもハンマーを手に持ち,明日への希望をうかがわせる明るい賢治像となっている。あたかも賢治が地学の魅力を語りかけているような印象を受けて興味深い。 こういった豊かな内容であるが,索引があればさらに便利であると感じた。賢治の作品を読んで,難しい地学関連の用語が出てきたときに,すぐに探し出すのはちょっと難しい。例えば岩手山のシンボルともいえる「焼走溶岩流(本書では熔岩流)」については独立した項目ではなく,「岩手山」の項にわずかに,しかし「熔岩流・鎔岩流」の項に詳述されている。賢治作品にしばしば出てくる「早池峰山」の説明も各所にあるが,項目としては独立していない。
たびたび東北地方を襲った飢饉,火山活動,大地震,津波などは賢治の作品にもしばしば現われている。地学の裾野を広げることは,地質学の存在感を世間に知らしめる重要な課題である。2011年3月に襲った東日本大震災を「想定外」などとせずに,貴重な教訓とし,今後の対策を立て,未来を予測するために,地質学の果たす役割は大きい。このような時にこそ,私たち学会員は賢治の作品を正確に読み,それを通して地質学の重要性を一般の人びとに認識してもらう努力をしなければならない。そのためには,本書は必読のものだと考える。そういった意味で,会員各位のみならず,一般の方々,そして賢治研究家の人びとの座右に是非そろえて欲しい一冊である。
蟹澤 聰史
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【4】水戸大会アンケート結果:ご協力ありがとうございました
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皆様からお寄せいただいた水戸大会アンケート結果の報告です。
http://www.geosociety.jp/mito/content0050.html
皆様からのご意見を、次回以降の大会に活かしていきたいと思います。
ご協力ありがとうございました。
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【5】支部情報
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■関東支部
・関東支部2011年度地質見学会 城ヶ島に続く第2弾!
「霞ヶ浦のあゆみ —環境変遷、過去から未来へ—(地質と霞ヶ浦導水路見学)」
日時:11月26日(土)10:00-17:30
※見学場所が多いため集合時間が9時となる可能性もあります
集合:JR常磐線土浦駅東口バス乗り場付近
参加費:3000円
申込締切:11月18日(金)
詳しくは支部HPまたはジオスクーリングネットへ
http://kanto.geosociety.jp/
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【6】その他のお知らせ
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■第3回シンポジウム「海は学びの宝庫〜海洋教育の研究と実践〜」
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター
日時: 2011年10月15日(土)13:00〜17:00
場所: 東京大学工学部2号館213号室
対象: 小・中・高等学校教諭、学生、一般
参加費: 無料(要事前登録)
プログラム詳細: http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/RCME/Sympo20111015.pdf
参加登録はこちらから、、、
http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/RCME/information/20110910_694.html
■第5回国際海底地すべりシンポジウム
5th International Symposium on Submarine Mass Movements and Their Consequences
(ISSMMTC-5)
日時: 2011年10月24日(月)〜26日(水)
場所: 京都大学
ISSMMTC-5は,IGCP-511とそれに引き続くIGCP-585の旗の下,海底地すべり
の研究者が約2年毎に開催する学術会議で,今回は初めて欧米以外での開催に
なります.シンポジウム前後には,神戸の地すべりや房総半島への野外巡検
も計画しています.
招待講演者7名のほか,世界各国から海底地すべりとそれに関連する幅広い
領域の研究者が京都大学に集い,最新の研究成果を発表します.また,地震と
津波,地盤流動,リスクアセスメントなどを多方面から議論するパネルディス
カッションを内外の著名な研究者を招聘して行います.野外地質観察,海洋調
査,モデリング,解析などに基づいた海底地すべりとその関連研究の第一線の
方々が日本に集まるまたとない機会です.
詳細はこちらから、、、
http://www.landslide.jp/
サードサーキュラー(詳細版):
http://www.landslide.jp/images/Third_Circular.pdf
第5回国際海底地すべりシンポジウム事務局
FAX 03-3944-5404、Email: info@landslide.jp
■いわて三陸ジオパーク震災復興シンポジウム〜震災の記憶を伝え生かすために〜
(日本地質学会学会 後援)
日時:2011年11月25日(金)シンポジウム 13:30〜17:00
(ポスター展示 10:00〜18:00)
26日(土)被災地巡検
場所:アイーナホール(いわて県民情報交流センター:盛岡市盛岡駅西通1-7-1)
内容
◇記念講演 尾池和夫氏(日本ジオパーク委員会委員長・元京大総長)
「東日本大震災においてジオパークができること」
◇事例紹介
杉本伸一氏(島原半島ジオパーク事務局・ジオパーク国際ユネスコ会議事務局長)
「雲仙普賢岳噴火災害から20年〜復興の軌跡」
草野 悟氏(三陸鉄道を勝手に応援する会会長)
「被災地の思いを伝える〜三陸鉄道の取組」
◇パネルディスカッション
○コーディネーター 中川和之氏
○パネラー 杉本伸一氏(同上)・草野 悟氏(同上)・大石雅之氏(岩手県立
博物館首席専門学芸員)・永広昌之氏(仙台市教育委員・東北大学名誉教授)
・渡辺真人氏(産業技術総合研究所主任研究員・日本ジオパーク委員会事務局)
◇閉会挨拶 実行委員長 豊島正幸氏
詳細はこちらから、、、
http://sanriku-fukkou.net/file/geopark%20fukkou%20symposium.pdf
■34th IGC Third Circular
2012年8月5日〜10日にブリスベンで開催される第34回IGCのThird Circular
が公開されました。
Third Circular:
http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor/geoFlash_img/no154_34igc_third_circular_v5.pdf
事前参加登録も始まっています。
詳しくは: 34th IGC Home
■ウィーン大学ホーヘンエッガー教授の著書のご案内
Hohenegger, J., 2010, Large Foraminifera - Greenhouse constructions and
gardeners in the oceanic Microcosm, Bull. 5, 81 pp.
鹿児島大学総合研究博物館では上記の本を出版致しました。81ページで6図、
270枚のカラー写真を掲載しております。
ご本人が、おもに琉球列島周辺海域で調査研究された結果をもとに大型有孔虫を
わかりやすく紹介しております。生体から化石まで網羅され教科書に最適な著書
です。活用いただける方には無料(送料は受取人着払い)でお送り致します。
お問合せ先:〒890-0065 鹿児島市郡元1丁目21-30
鹿児島大学総合研究博物館内 大木公彦
e-mail: oki@sci.kagoshima-u.ac.jp
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【7】公募情報・各賞情報
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■鹿児島大学総合研究博物館(教授/准教授) (10/14)
■茨城大学:教育学部理科教育教室教員公募(准教授) (10/18)
■北海道大学大学院:
工学研究院環境循環システム部門資源循環工学分野(准教授)(11/30)
詳細およびその他の公募情報は、
http://www.geosociety.jp/outline/content0016.html
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【8】地学クロスワードパズル
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地学クロスワードパズル タテとヨコのカギ(ヒント)を使って,マス目に文字を当てはめて下さい.
最後に完成するABCDのマス目に当てはまる文字から作られる言 葉がこのクロスワードパズルの答えです.地学系雑誌では,American Geological Instituteの雑誌「EARTH」(http://www.earthmagazine .org/)にクロスワードパズルが毎回掲載されています.
もっと,むずかしいクロスワードを楽しみたい方は,そちらをご覧下さい.
楽しく 学んで,遊ぼう地学.
(川村喜一郎 深田地質)
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報告記事やニュース誌表紙写真、マンガ原稿募集中です。
geo-Flashは、月2回(第1・3火曜日)配信予定です。原稿は配信前週金曜日
までに事務局(geo-flash@geosociety.jp)へお送りください。