┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬
┴┬┴┬ 【geo-Flash】 日本地質学会メールマガジン ┬┴┬┴┬┴┬┴
┬┴┬┴┬┴┬ No.108 2010/9/7  ┬┴┬┴  <*)++<<  ┴┬┴┬┴
┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴
★★目次 ★★
【1】富山大会関連情報いろいろ
【2】本の紹介:「地殻進化学」堀越 叡 著
【3】支部情報
【4】その他のご案内
【5】公募・各賞助成 情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】富山大会関連情報いろいろ
──────────────────────────────────
■見学旅行:追加募集
申込・問い合わせは各案内者へお願い致します。
B班 跡津川断層(1-2名)
竹内 章 <takeuchi@sci.u-toyama.ac.jp>
I班 糸魚川ジオパーク ヒスイ楽(若干名)
宮島 宏<hiroshi.miyajima@city.itoigawa.niigata.jp>

各コースの見どころはこちら
http://www.geosociety.jp/toyama/content0032.html

■参加・講演をキャンセルされる場合(変更も含む)は,早めにご連絡をお願い
致します。
参加登録料ほかのキャンセル料は下記の通りです。ご注意ください。 
9/15まで:キャンセル料50%
9/16以降:キャンセル料100%
 
■富山大会就職支援プログラム
学生・院生・教官のみなさまへ。民間企業・団体、研究機関と相互に情報交換
を行う就職支援プログラムが開催されます。ぜひご参加ください。
日時:2010年9月19日(日)14:00-17:00(*時間帯は若干変更になる場合があります)
場所:富山大学 五福キャンパス 共通教育等E棟
参加費:無料
参加予定企業・団体(敬称略・8/10現在):
株式会社クレアリア,石油資源開発株式会社,ジーエスアイ株式会社,
株式会社ダイヤコンサルタント,明治コンサルタント株式会社,
(独)産業技術総合研究所,川崎地質株式会社
詳しくは、 http://www.geosociety.jp/toyama/content0006.html
 
■託児室・学童ルーム
富山大会期間中、9/18(土)〜9/20(月)に開設されます。
ご利用希望の方は、9月10日(金)までにお申し込みください。
詳しくは、 http://www.geosociety.jp/toyama/content0014.html
 

■地質情報展2010とやま —海・山ありて富める大地—[先行イベント]
富山大会前日の17日に地質情報展開会式に引き続き、先行してイベントを
開催します(13:00〜16:30)。入場無料です。ぜひ御参加ください。
本番は、9月18日(土)〜19日(日) 9:30-16:30(19日は16:00まで)です。
場所:富山市民プラザ
地質情報展詳細は↓
http://www.gsj.jp/Info/event/2010/johoten_2010/index.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】本の紹介:「地殻進化学」堀越 叡 著
──────────────────────────────────
東京大学出版会,2010年8月20日発行344ページ,横書
15.5 x 21.5 x 2.5 cm, ハードカバー,定価6,400円+税
ISBN978-4-13-060747-6 C3044

本書は,昨年10月16日に亡くなった堀越 叡氏の校正刷りの遺稿を,鎮西清高・
島崎英彦・大藤 茂の3氏が編集したもので,世界のプレカンブリア剛塊地域(ク
ラトン)とカレドニア・ヴァリスカン両造山帯に関する地質学の教科書である.

章立ては,第1章 造山論の概念,第2章 地殻の誕生,第3章 グリーンストン・
花崗岩帯,第4章 楯状地堆積物,第5章 剛塊の成長,第6章 プレカンブリア時
代の終焉,第7章 アパラチア・カレドニア造山帯,第8章 ヴァリスカン造山帯,
第9章 超大陸パンゲア,第10章 生命の多様性と絶滅,となっている.これら各
章の末尾には充実した引用文献・概説書リストがあり,最後に索引と最新の地質
年代表がついている.図や写真が多く,複雑な地質図なども著者がすべて整理・
簡略化して描き直している.

序文によると,著者が専門とする鉱床学は「地質学の中でももっとも総合的な学
問である.悪く言えば雑学である.したがって,多分に手前味噌だが,鉱床学の
専門家は何をやらせてもそれなりにこなすことができる」.そこで1978年の富山
大学着任時に,Brian F. Windleyの“The Evolving Earth” をタネ本として「地
殻進化学」の講義を始めたが,10年も続けると「当初のウィンドレイ色はほとん
どなくなった」そうである.編集者の「本書刊行の経緯」によると,この講義の
ノートと,学生に配布した私家版の教科書をもとに拡張発展させたものが本書で
ある.著者が遺した目次によれば,さらに第11章 アルプスとヒマラヤ,第12章 
北米コルディレラ,第13章 東アジアの形成,第14章 日本列島の萌芽,第15章 
日本島弧と続くはずであったが,著者の急逝によってこれらの章が完成されなかっ
たのは残念である.

第1章には興味深いエピソードが満載である.250年以上前のドイツのヴュルツブ
ルグ大学のベリンガー教授は,学生が露頭に埋め込んでおいた太陽の化石,星の
化石などを「発見」して論文を書いたが,自分の名前が彫ってある化石を掘り出
して,さすがに悪戯であることに気がつき,出版物の買い戻しに奔走したという
有名な話があるが,当時の裁判記録によると,真犯人は学生ではなく大学の地理
の教授と図書室係であったこと,化石に彫られていたのは教授の名前ではなく「
エホバ」の文字だったことが本章の冒頭で語られ,面白い話には換骨奪胎がつき
ものであることを知る.「一般地質学(または地質学原理)」を書いたロンドン
大学のライエルの講義には,着飾った女性たちが押し寄せたが,ライエルは女性
の聴講を拒否し,地質学会への女性の出席の是非をめぐる論争になったという話
も興味深い.この章ではこうしたエピソードを交えながら,地向斜,ナップ,大
陸漂移説,海底拡大説,プレートテクトニクス,そしてプルームテクトニクスま
でが説明される.プレートテクトニクスの創立者の一人であるルピションが「海
洋底拡大説に反対したという点では関係者の記憶が一致している.彼は1966年に
海洋底は動かないという趣旨の論文で博士号を得ている.しかしその2年後,彼は
プレートテクトニクスと呼ばれる地球変動の枠組みを完成した」という記述には
目が点になった.確かに,ルピションの著書「極限への航海」(岩波書店,1990)
の40頁を見ると,「1966年4月にストラスブール大学でドクター論文の公開審査を
受けていた頃・・・熱量の食い違いは,私がハリー・ヘスの海洋更新仮説を退け
るべき主要論拠となっていたのである.しかし,私は自己の非を悟るに手間取り
はしなかった(加賀野井秀一訳)」と書いてある.第2章では,隕石,年代測定法,
地球最古の岩石,地球最古の化石などについて述べられている.第3章は世界各地
のグリーンストン・花崗岩帯の説明であるが,世界最古の硫酸塩鉱床,正マグマ
性ニッケル鉱床,中熱水性金鉱床(最近は「中熱水性」と言わず「造山性」とい
う:Goldfarb et al. (2001) Ore Geol. Rev., 18, 1-75),黒鉱型鉱床などにつ
いても詳しい.第4章は縞状鉄鉱層,巨大貫入岩体,隕石孔などを扱っているが,
ザ・グレートダイク,スティルワーター,サドバリーなど著者独特のカタカナ英
語表記が目立つ.第5章ではオーストラリア,バルト楯状地,北米などの原生代造
山帯が扱われ,縞状鉄鉱層,堆積性噴気鉱床(鉛・亜鉛・銀),堆積岩内銅鉱床
(ホワイトパイン)などについても説明されている.第6章はロディニア超大陸の
形成と分裂,氷結地球,エディアカラ化石群,原生代/古生代境界問題,気圏・
水圏の進化などの話であるが,ここでもザンビア,ザイールの世界最大の堆積岩
内銅鉱床,北米の堆積性噴気鉱床などについて述べている.第7章は北米東岸,英
国北部,ノルウェーの地域地質とアパラチア・カレドニア造山運動のテクトニク
スを概説している.ローレンシア(Laurentia), ローラッシャ(Laurussia),ロー
レイジア(ローラシアLaurasia)はそれぞれ範囲が違うので注意が必要である.
第8章では,まずヴァリスカン造山帯の岩石は露出が悪いためプレートテクトニク
スの解明が遅れたことを指摘し,英国南部,ドイツ,「ボヘミアマッシーフ」,
スペイン,ポルトガルなどの地質を概説してテクトニクスを論じているが,ここ
でも「石炭紀の石炭」について述べるのを忘れない.第9章はカンブリア紀の生物
進化の爆発に始まり,北米・中欧・東欧などの卓状地堆積物,ウラル造山運動と
パンゲアの形成,そしてパンゲアの分裂までを述べている.ミシシッピヴァレー
型炭酸塩岩内鉛・亜鉛鉱床についての説明もある.第10章では顕生代の生物5大絶
滅期について述べているが,北海油田,イリジウム異常,チチュルブ隕石孔などK
/T境界に関するトピックも詳しい.大規模火山岩類のところで,シベリア・トラッ
プ(洪水玄武岩)の話があり,トラップという語が「階段」を意味するスウェー
デン語(溶岩台地の末端が溶岩1枚ごとの階段状になっている)に由来すること
を初めて知った.なお,本書には「まとめ」や「あとがき」はない.

以上のように,本書の背骨を貫くのは,鉱床の性質や成因を,地球進化の大きな
枠組みの中で解き明かそうとする著者の強い意志だと思う.そして本書の至ると
ころに,著者の幅広い知識,深い洞察,批判的精神の発露をみることができる.
その結果,本書は地球史とグローバルテクトニクスに関する学部学生・大学院生
向けのこの上ない教科書となっており,同時に地球科学の諸分野に広い関心をも
つ研究者にも有用な,示唆に富む記述が盛り沢山である.著者は序文で「本書に
は多くの鉱床地質が引用されている.これを我田引水とは考えないでほしい.ほ
かの地域とは地質解明の精度が極度に違うのである」.「世界の地質が鉱床地域
と同じくらいの精度で明らかになれば,地球の歴史は変わるであろう」と述べて
いる.著者の鉱床研究者としての矜持が輝いている.著者には「地向斜征伐のす
すめ」(マグマ発生の時間的空間的分布(GDP), 1, 119-122, 1973)に代表される
戦闘的イメージが強いが,本書を読めばその学識・経験の豊かさ,奥深さがよく
わかる.本書を読んで,著者にいろいろ質問し,ご教示いただきたいと思うが,
もうそれは叶わないのが寂しい限りである.なお,本誌13巻3号20頁に速水 格・
大藤 茂両氏による追悼文がある.拙稿を校閲していただいた小西健二先生に感
謝する.

石渡 明(東北大学東北アジア研究センター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【3】支部情報
──────────────────────────────────
■日本地質学会関東支部2010年秋季シンポジウム
「関東盆地の地下地質構造と形成史」
>開催日:2010年11月20(土),21(日)
場所:日本大学文理学部3号館5階
詳しくは、http://kanto.geosociety.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【4】その他のご案内

 

 

──────────────────────────────────
■ 日本学術会議回答「大学教育の分野別質保証の在り方について」の公表
日本学術会議は、8月17日(火)、会則第2条に基づき表出する政府及び関
係機関等への回答として、日本学術会議回答「大学教育の分野別質保証の在り方
について」(平成22年7月22日開催の第100回幹事会了承案件)を公表し、
同日、文部科学省への手交を行いました。本回答は次のURLからご覧になれます。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-k100-1.pdf

■The 7th International Conference on Asian Marine Geology (ICAMG-7)
日程:2010年10月11日〜14日
会場: National Institute of Oceanography (CSIR), Goa, INDIA
Deadline of session proposal: 31 January  2011
Deadline of abstract submission: 31 July 2011
http://icamg7.nio.org

■日本の活断層・フォトコンテスト:作品募集中
日本活断層学会では,活断層に関する教育・普及活動の一環として
「日本の活断層・フォトコンテスト」を実施しています.変動地形や活断層露頭
写真に,簡単な説明と撮影場所の地図を添えて,ご応募下さいますようお願い致
します.(締切は9月末日).11月末頃発表予定.詳しくは,
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/jsafr/fotocontest01.html

■産総研オープンラボのご案内(地質分野)
日時:2010年10月14日(木)・15日(金)(参加無料)
場所:産総研つくば
産総研のこれまでの研究の成果や実験装置・共用設備等の研究リソースを、企業
の経営層、研究者・技術者、大学・公的機関の皆様に広くご覧いただくための催
しです。
地質分野の展示内容は、
G-02 20万分の1日本シームレス地質図講習会
G-20 地質調査業務に役立つ粒子径計測技術ワークショップ など
ラボツアー予約〆切:10月4日(月)まで
来場者登録〆切:10月12日(火)まで
詳しくは、http://www.aist-openlab.jp/

■平成22年度 東濃地科学センター 地層科学研究 情報・意見交換会
日時:平成22年10月19日(火)12:45〜17:00
場所:瑞浪市地域交流センター「ときわ」(定員:約150名)
「瑞浪超深地層研究所 深度300m水平坑道見学会」
日時:平成22年10月20日(水)9:30〜11:30
場所:瑞浪超深地層研究所(定員:約40名)
※入場無料(事前の申込が必要です)
詳しくは、http://www.jaea.go.jp/04/tono/index.htm

■第1回地質リスクマネジメント事例研究発表会
日時:2010年9月24日(金)9:30-16:30
会場:飯田橋レインボービル
詳細:http://www.georisk.jp/2010/0924georisk.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【5】公募・各賞助成 情報

──────────────────────────────────
■(地独)北海道立総合研究機構研究職員募集:環境・地質(地下水)(9/13締切)
■熊本大学理学系地球環境科学講座地球惑星物質科学分野女性教員公募(10/8締
切)

■海のフロンティアを拓く岡村健二賞(9/21締切)
詳細およびその他の公募情報は、
http://www.geosociety.jp/outline/content0016.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
報告記事やニュース誌表紙写真,マンガ原稿募集中です.
geo-Flashは、月2回(第1・3火曜日)配信予定です。原稿は配信前週金曜日
までに事務局( geo-flash@geosociety.jp)へお送りください。
geo-Flashは送信用であり、返信はできません。