地震が作り出した芸術:巨大乱堆積物

 

地震が作り出した芸術:巨大乱堆積物:
Artistic outcrop showing earthquake-induced chaotic sediment
 
写真:山本由弦(産業技術総合研究所)・坂口有人(海洋研究開発機構)

写真1


解説:

まるで絵に描いたように奇妙で,大規模な乱堆積物露頭.

 上部鮮新統〜更新統の千倉層群畑(はた)層中に発達するこの露頭は,2007年度初頭に房総半島南部の農業道路建設現場において発見された(Yamamoto et al., 2007 in press).約200万年前の地震によって,砂層が液状化し,剪断強度を失ったそれらが古斜面上を移動したものと結論される(いわゆるliquefied sediment flow).岩体の厚さは約20 mにおよぶ(写真は全体の半分程度しか写っていない).この露頭は,下底面・上端境界を含む岩体全体を運動方向に対してほぼ真横から観察できることから,地震が誘発した海底地すべりの内部構造を把握する上で非常に貴重な資料である.地震動によって液状化・地すべりを起こした岩体は,東西5 km以上におよんでいることから,巨大な津波を引き起こした可能性もある.現在調査を進めている.

 この露頭は,現在工事中のため立ち入りが規制されている.地質学的に重要な露頭であることから,工事発注元である(独)緑資源機構によって保存が検討されている.  この露頭の詳細については,下記Island Arc誌16巻を参照されたい(Online で閲覧可能).

文献
Yamamoto, Y. Ogawa, Y., Uchino, T., Muraoka, S., and Chiba, T., 2007. Large-scale chaotically mixed sedimentary body within the Late Pliocene to Pleistocene Chikura Group, Central Japan, Island Arc, 16, 2007 505-507, in press.