間違いだらけの発音選び


筆者は,かつて「間違いだらけの発音選び」なる内容の一文を,地質学雑誌のニュース誌に投稿したが,反響はほとんどなかった。その後も,内外の学会やシンポジウムで,気になる発音や使用法に気を止めていたが,一向に改善の兆しが見られない。著名な研究者が,間違い発音を繰り返すので,学生や若手が,直そうとしないのは,当たり前である。最近でも,日本人若手研究者の大発見の記者会見で,某著名な研究者が,正しい発音を使うようにとの意図は,某官庁の指示で,実現されなかったという。それは,lithosphereを正しくリソスフィアと使うことが,認められなかったのである。「間違い発音を使え」と,国家が統制しているのである。 以下,若干の重複をおそれず,この際,皆様に今一度ご一考願いたい。

最初に,教訓:

1.ほとんどの英語の用語が間違って発音されている。
2.しかも,その多くが,外来語化されてしまっており,修正はもはや困難かとも思われるが,間違い発音を使わざるを得ない場合でも,少なくとも,間違い発音が,正しい英語発音ではないと承知の上で,使うべきである。
3.どんな発音も辞書にあたるべきである。しかし,辞書に載っていない場合や,英語使用研究者間でも,各種の発音が入り乱れている場合もある。
たとえば,著名な研究者である某Moore氏は,自分の名前は,ムーアではなく,モーアである。と言っている。そうなのであろう。
4.日本語文の中で,日本で慣用とされている発音をカタカナ表記で使用する場合があろうが,あまりにも間違った発音を使うのは,考え物である。たとえ外来語化していようとも,使うべきではない。たとえば,reservoirをリザーバーとする類である。(正しくは,レザヴォア,アクセントはレにある)
5.少なくとも,英語で発表する講演やポスターでの説明には,心して,正しい発音,正しいアクセントを使うように心がけたい。



 

アクセント

スペリング   
  1.Lithosphere
  2.Reservoir
  3.Seismic

  4.Trough
  5.Southampton
  6.Frontier
  7. Stratigraphy


  8.Microbial
  9.Oceanic
10.Review

 

間違い発音 
リソスフェア
リザーバー
サイスミック

トラフ
サザンプトン
フろンティア



マイクロバイアル
おシアニック
レビュー

 

より好ましい発音(アクセントをひらがなで表記)
リソスふぃ
ザヴォア
イズミック
(ただし,Seismicityは、サイズシティー)

サウンプトン
フロンてぃア (アクセントは てぃ)
ストラてぃグラフィー
(アクセントは てぃ にある!ただし,
形容詞では,グフィックの ら にある)
マイクろうビアル (アクセントは ろう)
オシニック (アクセントは あ)
びゅー 動詞も名詞もアクセントはビューにある。

 


あまりにも簡単な言葉に関しては,辞書を引かないことが多いが,すべてあたるべきである。これは,ホノルルなどのアクセントにも当てはまる。成田のアナウンスでも,英語なのにもかかわらず,平板なホノルルと発音していた。おかしいと思う。ただし,地名,人名は,一般にどう発音していいか,分からないことが多く,いちいちあたる必要がある。しかも,人,場所によって異なる。

発音:

その道の研究者が自分の分野名の発音を間違えていることがある。
Burial をバリアル(本当はベリアル)
warmingをワーミング(正しくはウォーミング)
Neogeneをネオズィーン(正しくは(ネ)オーン;アクセントはニ,またジーにも第二アクセントあり)
Albianをルビアン(アクセントはアにおくべきで,ルにおいてはいけない(ありえない))
Schistをスィストなどと発音すると,この人は本当にシストを研究しているのか,と疑われ,低く見られる。
Analysisをアナらいシスとする人もいる。アリシスである。
Drill: これは,アクセントはシラブル(母音を含む)にしかないはずだから,どリルなどと発音するはずはない。アクセントはリ以外考えられない。ド

(つくばにあるビルのCreoも,皆 くレオと発音しているが,英語としてはありえないのである。日本語の宿命なのであろうか?)

(もっともバカらしいのは、あるクリニックのCMで、クーリニックとクーにアクセントをおいているのだ。英語人が、どれほど日本を馬鹿にするかが、わかる。シラブルもない子音にアクセントを置くなんて(また、それがために長音になるなんて)、あり得ない中のあり得ない、なのである。正しくは、当然、り)。


そのほか。日常用語的になっていて,もはや修正が難しいのも多いが,英語として発音するときは,正しく行うべきである。たとえば

channelは(チャンネルなどではなく、チャヌルまたはチャヌー(的に))。
acousticはアコ(またはアコー)スティックではなく,アくースティック
(アクセントはくー;ともかくアクセントのあるシラブルの発音は正確に,がモットーである)。
hammockyは はマキ。
faciesはファシースではなく,フェイシーズである。
labelはラベルではなく,レイボー。
Sampleはサンポー,などのほうが通じやすい。
Stickerはステッカーではなく,スティッカー
Digitalはデジタルと新聞、放送、一般に使われているが、ディジトー
(デズニーと発音すると、いかにも田舎くさい)。
Volunteerはボランティアー(アクセントはティ)
Matureはともかくメイチャーなどではなく,マチュア。
また,majorはメジャーリーグなどで使われるが,もちろんメイジャーである。
Measureの発音は難しく,メザーとメジャーの間くらいである。
そのほか,思いつくままにあげると,
patternは,99%の日本人が,パターンとターにアクセントを置くが,もちろん,タンであって,アクセントはである。
Plumeは,日本でも以前は正しくプルームと書かれていたが,いつの日からか,プリュームとされるようになり,岩波も,そう使うことがあるようである.しかし,これは,イギリスでも,アメリカでも,プルームである。
Diameterはダイミター、アクセントは(ダイアマター的)。


また,英語と米語の発音の差は,日本人にとっては,気にしていたらきりがなく,区別して行うこともないとは思うが,彼らは結構気になっているようである。(差別社会のせいかもしれない)。

Againは英語ではアゲインだが,米語ではアゲンである。こうした,ちょっとした違いは非常に多い。
Quite a few クワイタフュー 「少し」という意味ではない。正しい意味はmany. 

また,発音に関しては,ともかくR とLを,きっちりと区別する。Lが文頭にあるときは,極端に舌を突き出す。また,単語の最後にある時は,る,といわないようにして,無視する。ジンゴーベー,イーゴー(eagle)などである。全体的に,私もそうだが,発声方法(あごの動かし方や口,舌などの使い方)が,英語と日本語では根本的に違うので, physicalな面でもあえて英語的に変えないと,なかなか通じない。一つの方法は,高い声を出して発音することである。疲れるが有効である。私が手本としている人は,オウコウチ氏である。あえて言わせていただく。ただし,彼らは残念ながら,オークチと呼んでいるが。。。(今度は,彼らに日本語発音を学ばせる番か?)

そのほか:

事項が達成できたかどうかを示すのに,×,○,△は使わないようにする。(欧米では,Vや×は,yes, OK,できた,済み,などの意味に使われる。つまり日本の○として使われることが多い。○や△は,めったに使われない。)

 




話し方の対処療法:

和文英訳をしながら頭で文章を作りながら話をすると,つい硬くなる。Jeremy Leggett氏から教わった話し方は,枕を用意しておき(たとえば,As far as I know, To tell the truth, In this case, I may sayなど),それを言っている間に,次の文章を考えるとよい。

福音:

日本人の寡黙さ,謙虚さは,美徳でもあろうが,誤解をも招きかねない。彼らは,くだらないことでも,聞き返したり,一言余計にしゃべったりしている。また,確認を頻発する。この方が,あとあと面倒にならず,また相手の考えのレベルが相互に分かって,コミュニケーションにはふさわしい。どうであろうか?(その他;関係ないかもしれないが,かなり気になること:タバコはやめよう。著名な研究者や教授クラスの方でも,平気でタバコをふかすのが日本の学界である。恥ずかしさを通り越している。自らの周囲の環境をも守れないのである。)
(おあとがよろしいようで。みなさん,がんばってください。)(以上)



(補遺)ともかく、新しく外来語になる用語の発音表記には、気をつけるべきである。責任ある立場にあるのは、放送局, 大新聞、それにリーディング・リサーチャー特に大学教授である。



小川勇二郎(筑波大)