【geo-Flash】札幌大会せまる No.006

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┴┬┴┬【geo-Flash】日本地質学会メールマガジン ┴┬┴┬┴┬┴┬┴
┬┴┬┴┬┴┬ No.006 2007/08/21 ┴┬┴┬ <*)++<< ┴┬
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★★目次 ★★

【1】札幌大会の見所(その3)(海底地すべりとは?)
【2】新潟県中越沖地震&ペルー地震&房総沖群発地震・スロースリップ
【3】新潟県中越沖地震緊急ポスター発表申し込み〆切せまる
【4】今週のキーワード「海底地すべり」
【5】Geo-Flashにアクセス急騰!
【6】京都大学大学院 地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室 公募(10/5締切)

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【1】 札幌大会の見所(その3)
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■ シンポジウム:「海底地すべり」
日本列島は,険しい地形,激しい気象変動,地震などの頻繁な地盤変動に
よって,地すべり災害が頻発する地域であり,その周辺海底でも地殻変動に
よって,多くの地すべりが生じている.これらの海底地すべりは,津波を引
き起こす要因となることが指摘されているだけでなく,その存在は,メタン
ハイドレートをはじめとする資源の探査における障壁となっている.
このシンポジウムは,日本で初めて学際的に海底地すべりに焦点を当てて
行われるものである.ここでは,近年発生した日本周辺の海底地すべりのみ
ならず,台湾,スマトラ,さらにハワイで生じた海底地すべりの最新の知見
が発表される.そして,それらの発生原因を,海底でのリアルタイム地盤計
測や海底地盤の物性を直接試験した結果から検討している.シンポジウムでは,
これらの成果を海洋国日本の国土防災,資源開発に役立てる方策を探る.
本シンポジウムは,社団法人日本地すべり学会との共催であり,長年の陸
上地すべりの研究の知見を海底地すべり研究に役立てることも目指している.
陸上地すべりの事例としては,北海道内の各地の地すべりの形態・内部構造の
研究,空中写真判読による地形解析の研究が発表される.さらに,地すべりの
滑り面と地震断層との比較研究という新しい視点の研究も発表される.このよ
うな近年の陸上地すべり研究の成果は,海底地すべりの実体を明らかにするこ
とに役立つ.
海底地すべりは,海底活断層と密接な関わり合いを持つとされており,今年
始動する掘削船「ちきゅう」による南海地震発生帯掘削計画でも注目されてい
る.それを砂箱での実験で再現すると,その発生の様子がよくわかる.西南日
本の太平洋側の海底には,南海付加体,と呼ばれる地質体があり,そこには,
多くの活断層があることが知られる.それらの活断層が動くと,断層上盤が崩
壊し,その前縁部に堆積する.もし活断層で長年にわたって,そのようなこと
が生じていたとしたならば,その崩壊堆積物,すなわち海底地すべり堆積物は,
断層の活動履歴を記録していることになる.この研究は,京都大学工学研究科
の山田泰広准教授のグループによって発表される.以下に,関連図を添付する.

 

用語解説
・メタンハイドレード:メタンの周囲を水分子が囲んだ形の低温かつ高圧で安
定な水和物.日本周辺の水深千〜二千メートルの海底面下,数百メートルに大
量に存在している.次世代エネルギーとして注目されている.
・付加体:海洋プレートの沈み込みにともない,海底に堆積した様々な物質が,
大陸側の斜面の先端部に次々と付け加えられる.このような地層を付加体という.
日本の国土をつくる地層の多くの部分はこの付加体である.
(川村喜一郎 深田地質研究所)

第1図 地質モデルに見られる付加体形成に伴う斜面崩壊. ━━

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【2】 新潟県中越沖地震&ペルー地震&房総沖群発地震・スロースリップ
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■ 新潟県中越沖地震 続報
山形大学 川辺研究室 調査報告

■ ペルー地震(Mw=8.1)情報
筑波大 八木研究室(地震概要)

名古屋大学地震火山・防災研究センター(地震概要)

USGS(地震概要)

気象庁(津波観測)

■ 房総沖群発地震・スロースリップ
防災科技研

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【3】 新潟県中越沖地震緊急ポスター発表申し込み〆切せまる
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■ 緊急展示の申込みについて(再録)
講演申し込み終了後、台風4号や新潟県中越沖地震による災害が発生し、
多くの地質学会会員が現場で調査を行っています。学会活動の一端を広く
社会に紹介するとともに、ホットなテーマについて議論する場を提供する
ために、災害報告や社会的に影響のある新技術紹介などの「緊急展示コー
ナー」を設けます。
ポスター展示を希望する方は、8月23日までに以下の内容で下記の実行
委員会にご連絡ください。
1)発表要旨PDF(ニュース誌5月号P12参照) 2)緊急展示の必要性
3)発表代表者と連絡先 4)展示に関わる要望 
(2)から4)の様式は自由)

実行委員会は行事委員会と協議し、可否の判断を致します。
希望にはできるだけ応えるようにしますが、
展示方法等については実行委員会の指示に従ってください。


申込先 札幌大会実行委員会 前田仁一郎
メール jinmaeda@mail.sci.hokudai.ac.jp
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【4】今週のキーワード「海底地すべり」
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海底地すべりとは,なんでしょう?わからないので,辞典を引いてみま
しょう.有名な「Glossary of Geology 4th edition(AGI)」には
Submarine sliding という言葉は載っておらず,Subaqueous glidingは
Slumpとあります.しかし,近年の学術論文には,Submarine slide(ing)
やSubmarine landslideという用語は頻繁に見られますので,実際にはまか
り通っているようです.そしてSlumpは陸上地すべりと海底地すべりの2つ
の意味があり,海底地すべりとしては「The sliding-down of a mass of
sediment shortly after its deposition on an underwater slope」と記
されており,より正確には,「Subaqueous slump」とあります.
一方、日本の「地学事典(平凡社及び地学団体研究会)」には「海底地滑り:
海底の堆積物が重力の作用により斜面をすべり落ちる現象」とちゃんと載って
います。堆積物とは,泥や砂,石などのことです.しかし,近年ハワイ諸島や
カナリア諸島の火山島でも海底地すべりの事例が見つかっており,用語もどん
どん進化中のようです。
最後に海底地すべりの重要性について少しだけふれておきます.ハワイ諸島
や北海などで大規模の海底地すべりによって,津波が引き起こされたことがわ
かっています。しかし日本周辺では研究例が多くありません.現在,日本では
海底資源であるメタンハイドレートの開発を押しすすめており,海底地すべり
に対する関心が高まってきています.20世紀中頃には,ミシシッピデルタの
油井プラットフォームの流出事故などの産業構造物に対する被害が社会問題に
なりました.失敗学(http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search)ではないですが,
過去に学んで,未来につなげる意味でも,海底地すべり研究は,必要不可欠です.
(川村喜一郎 深田地質研究所)


この写真は,石川県白山南麓にある別当大崩,という地すべり痕です(この写真は,
海底地すべりではありません.あくまでこの記事のイメージです).この地すべり
は山間部にありますが,陸上の地すべりは,移動体の上に人家や田んぼがあること
がめずらしくありません.地すべりによって,地形がなだらかになるからでしょう.
ですから,詳細に動態観測が行われ,その移動体が監視されています.こういった
詳細な観測が活断層でもできたらいいのにな..
地すべりと活断層.一見して関連性が無いように思えますが,百聞は一見にしかず.
今年の日本地質学会第114大会(札幌)で行われる「海底地すべりシンポジウム」
ではそんなトピックスも取り上げられます。ページTOPにもどる

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【5】 Geo-Flashによるアクセス急騰
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■  地質学会ホームページは平日が約400人/日くらい、休日は約200人くらい
の訪問者数があります。しかしこの1ヶ月半の統計を見ると、Geo-Fashが
配信される度にアクセスが急騰することがハッキリと見て取れます。

下のグラフは地質学会ホームページの平日のみの訪問者数です。5月は特
に大きなイベントもなく一定数で推移していますが、6月中旬にとても大き
なピークが現れます。これは6/18が学術大会講演要旨〆切(郵送)の1週間
前の月曜だからかもしれません。そして6/25にGeo-Flashの予告号が配信さ
れました。この週は講演要旨申し込みと重なって、ただでさえアクセスが集
中していますが、それでも配信日にはピークがあります。そして講演要旨が
締め切られた後もGeo-Flashが配信された日には必ずアクセスが増加してい
ます!


これはGeo-Flashからリンクをたどってホームページに来た人の数ですから、
メールマガジン中の記事は、これよりもはるかに多い方の目に触れたことで
しょう。地質学会会員にアピールする上でGeo-Flashはきわめて有効な手段で
あると結論づけられます。
ところで、7月下旬以降アクセスが全体的に減ってきていますが、多くの会
員が調査に出てしまうからでしょうか。地質学会のアクティビティが高いゆえ
の現象かもしれません。
(インターネット委員会 坂口有人)ページTOPにもどる

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【6】京都大学大学院 地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室 公募(10/5締切)
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1)採用職名・人員:助教・2名

2)所属講座:地球テクトニクス講座 ・ 地球生物圏史講座 ・ 各1名

3)期待する研究・教育分野:
<地球テクトニクス講座>
同位体を用いて地球変動の研究を行っており、分析手法の開発の経験を有する方。
野外調査の指導のできる方が望ましい。

<地球生物圏史講座>
野外調査にもとづき、堆積学的または構造地質学的研究をしている方。
野外調査の指導ができること。

4)採用予定: 2007年度のできるだけ早い時期

5)必要書類:
イ 履歴書
ロ 業績目録(論文,出版物などのリスト)
ハ 主要論文5編以内の別刷り(又はコピー)各1部、及び内容の簡単な解説
ニ これまでの研究経過(約1,000字以内)
ホ 今後の研究計画と教育の抱負(約1,000字以内)
なお、推薦書は特に必要ありません。

6)適任者の方を御推薦下さる場合は、被推薦者の氏名・所属・連絡先を、
2007年 9月18日(火)までに、文書で教室主任宛お知らせ下さい。
その際、上記の必要書類は不要です。当方で被推薦者に応募の意志の
確認及び必要書類の請求等を致します。


7) 応募締め切り:2007年10月5日(金)必着

8) 書類提出先および問合せ先: 
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 地質学鉱物学教室
教室主任  平島崇男
電話: 075-753-4151・4171 FAX: 075-753-4189

注:封筒の表に「教員公募・応募講座名」又は「教員推薦」と朱書し、郵送の
場合は書留便として下さい。教室段階での選考結果については、
確定次第本人および推薦者に通知いたします。

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geo-Flashは、月2回(第1・3週)配信予定です。原稿は第2・4週金曜日まで
にお送りください。geo-Flashは送信用であり、返信はできません。