2019年 年頭挨拶

 
学会員の皆様に,2019年の年頭のご挨拶を申し上げます.

昨年,日本地質学会は創立125周年を迎えました.3年以上にわたって準備を進めてまいりました周年事業も,5月18日に日本地質学会125周年記念式典を開催し,各支部においては記念事業を実施するとともに,フォトコンテストでは記念特別賞の授与などを行いました.また地質学雑誌における記念特集号の出版も進めてまいりました.ただ残念なことに,9月の第125年日本地質学会学術大会(札幌大会)で予定していた記念国際シンポジウムは,「平成30年北海道胆振東部地震」の発災により中止となりましたが,交流協定締結の海外5学会からの招聘研究者と意見交換がなされ,学術研究分野においてさらなる実質的な連携を推進していくことで合意いたしました.第125周年記念事業実行委員会委員の方々をはじめ,ご協力いただいた学会員・関連団体の皆様には,この場を借りて御礼申し上げます.

日本地質学会にとって125周年は,記念すべきことであります.これもひとえに長年にわたる諸先輩方の地質学に対する純粋な探求心,真摯な取組み,そしてたゆまぬ努力の賜物です.私たちはそれを継承していくと同時に,この125周年を一つのマイルストーンとして,次の25年に向けて歩んでいかなければなりません.日本地質学会は,日本の地質学界の一翼を担っています.地質学のさらなる進化と発展,そして社会における重要性の発信を,率先して進めていく立場にあると認識しています.ここでは,次の25年に向けて,我が国における地質学をとりまく環境を踏まえつつ,現在,私が考えることをお話しして,年頭の挨拶とさせていただきます.

現在,我が国は,少子高齢化となかなか進まぬ景気浮揚の中で,大学・研究機関などの学術研究・教育を取り巻く環境は厳しくなってきています.産業界においても,人材不足や効率化の波の中,基礎部門の維持が難しくなりつつあります.とりわけ地質学を含む基礎科学分野は,財政の逼迫や不安定な研究環境により国際的な研究力の低下が危惧されています.しかしながら,基礎科学の重要性は,ノーベル賞などにみられるように誰もが認めるところです.この25年間の地質学の進歩をみても,基礎的な研究から多くのブレークスルーが生み出され,これに技術革新や機器開発による高精度化や対象範囲の拡大が加わり,地殻表層の理解が進みました.それに伴い,新たな研究・科学分野の創出も進んでまいりました.加えて地質学は,自然災害や天然資源などの観点において,私たちの社会・生活に密接に関わっています.立ち止まり,厳しさを増す環境に嘆いているだけではなりません.

そのために日本地質学会は,地球惑星科学系最大の学会として地質学および関連学問分野のさらなる進化・発展に寄与するため,これまで築かれてきた研究に加え,大型研究や新たな研究領域の創案・推進に努めるとともに,行政や学術会議などへの提言などを通して地質学の継続的発展を目指すことが重要と考えます.また地質は,国内にとどまるものではなく近隣諸国へと連続します.そして地質現象の多くは,全球的な地球活動と密接に関連しています. 日本地質学会は,現在,海外5学会と交流協定を結んでいますが,各学会との研究連携を積極的に進めるとともに,さらに周辺諸国とも連携を深め,グローバルな研究展開に寄与していくことが大切と思います.また,これまで以上に学術大会,あるいは地質学雑誌およびIsland Arc誌の充実を図り,それを通して地質学の発展に寄与するとともに,社会への情報発信と日本地質学会の社会におけるプレゼンス向上を目指さねばなりません. 

そのような中,近年,僅かながらではありますが,日本の社会における地質学の認知度は上がってきているようにも感じます.当然のことながら,これは日本地質学会の活動によるものだけではなく,ジオパーク活動,地学オリンピックの開催,さらにはメディアによる情報提供なども大きな要因となっています.今後も,学会広報活動やフォトコンテストの開催,ジオパーク・地学オリンピック・地質の日事業への支援,「県の石」,学術大会での一般公開プログラムや地質情報展などを幅広く展開することにより,社会における地質学の認知を図る必要があります.

一方,近年頻発する自然災害に対する行政・住民などの対策・対応をみていると,地学現象に関する知識と理解はまだまだ十分であるとは言えません.アジアモンスーン地域の変動帯に位置し,多様な地形・地質により構成される我が国にあっては,地域にあった知識・情報の提供が不可欠です.またそれを必要とされている方々に積極的に提供するアウトリーチが重要です.そのためには,地域地質に精通した学会員の皆様の知識とお力,そして地方支部をはじめとして学会の地域への関与と連携が必要です.

本年4月には,文部科学省科学啓発ポスター「一家に1枚のポスター」として「日本列島6億年」が作成・配布される予定です.これによって,少しでも社会に日本の地質についての理解が広がることを願っています.

日本地質学会の根幹をなすのは,一人一人の会員の皆様です.会員活動を支援するためのサービスや機能の充実に引きつづき努めてまいります.研究成果や技術の共有,出版・広報活動の充実や新たな情報発信技術の活用などを進めてまいります. これらを通じて会員の皆様が,学術・事業・教育をはじめとするそれぞれの場で,学術研究成果の社会との共有を進めていただければと思います.

5月には元号が平成から新しい名称になります.心新たに,次なる25年に向けて第一歩を踏み出したいと思います.末筆になりますが,皆様の今年一年のご健康とご多幸を,そして今年が皆様にとって大きな飛躍の年となりますことを祈念いたします.

2019年1月
一般社団法人日本地質学会
会長 松田博貴
(国立大学法人 熊本大学)