2018年 年頭挨拶


学会員の皆様に,日本地質学会の創立125周年の年を迎えるにあたり,年頭のご挨拶を申し上げます.
 
既に昨年より関連記念事業を進めて参りましたが,晴れて事業の本年度となりました.2年以上を準備に費やして進めてまいりました周年事業の目的は,最終的には地質学という学問の再認識とさらなる発展を,日本地質学会が一端を担う以上に先導すべく決意を共有することでもあります.ここでは地質学をとりまく潮流について,私見を3点ほどお話しし,今年一年が皆様にとって飛躍の年になる事を祈念させていただきます.
 
一つ目は月並みですが,この25年間の地球科学の進歩についてです.改めて振り返ってみると,数多くのブレイクスルーが思い起こされます.先般来,日本地質学会の学会賞受賞先達の業績を拝見し直していましたが,いずれも地質学の理解をよりグローバルにしつつ,同時に総合科学的な技術を駆使してより細密化する進歩を中心的に担っておられることを再確認いたしました.
 
このグローバリズムによって,地殻表層の変動現象の理解がますます進み,プレートダイナミクス抜きでは語れない時代になって久しいところですが,個々の変動の理解や予測については,新たな課題が提出され続けています.このチャレンジには,技術革新や機器開発に基づく対象や精度の微細化という逆方向の進歩が大きな助力となっています.微量元素や同位体の分析,年代測定技術を得たTime-Rock Unitの標準再構成や細分化などにより,いわゆる地質学的論理構成の元で,多くの課題は解決されていくと期待されます.
 
過去10年を振り返って見ても,大陸から分離した島弧地殻の構成の理解の元に,従来の地域地質の研究が,近隣諸国の連続地質帯の調査研究を伴うようになって来ています.日本地質学会では,海外5団体との互恵的相互協力関係にあって,特に韓国地質学会とは密接なお付き合いを継続しています.このような関係をさらに周辺各国に広げると共に,学会員の皆さんの研究に大きな恩恵を与えるべく,積極的に利用していただきたいと思います.
 
二つ目は日本の社会における地学リテラシーの向上と地質学の認知の必要性です.繰り返される自然災害の多くは地質災害であり,被災者の皆様や自治体,そして国の対応においてリテラシーの向上が望まれ続けてきましたが,災害慣れしている国民性があるのでしょうか,長期的な教育・普及の手立てはなかなか採られないでいます.学問の進歩に比して,この点は25年間ほとんど改善されていないと感じています.
 
日本地質学会は,可能な限りの手段を尽くしていますが,強力な影響力を持つために必要な法令,業界規模,資金,会員数等のすべてが揃っているわけではないため,なかなか政策反映までには至りません.これについては全国規模の認知活動によって,地方支部活動やジオパーク支援,県の石,年会の一般公開プログラムと地質情報展などを地道に展開することで,政治の場へのインパクトもごくわずかずつ与えられるようになったと感じています.
 
さはさりとて,活動規模としては限られていますので,全国の学会員の皆さんご自身のお力にも期待しています.基本的には集客呼び込み型だけでなく,自ら気づいていなくとも地学の知識を必要とされている方を見つけて知恵をお渡しするアウトリーチが,最も重要だと思います.皆さんの知識を役立たせていただいて,知恵にしていきたいと思います.
 
三つ目としては,日本地質学会創立125周年を我々地質学会の飛躍を生み出す大きな機会とすることです.先の二点の内容は,記念事業である地質学雑誌の特集や単行本の出版等に詳細が顕れています.5月18日の式典,9月の地質学会での国際シンポジウムでは,国際的にも学会が社会に対して大きなプレゼンスを示す機会となっています.皆さんの学会支部企画でも種々の事業が行われます.これらを通じて,会員の皆さんが,グローバリズムと微細化や,成果の社会共有を,学術・事業・教育をはじめとするそれぞれの場で担っていただければと思います.
 
地質学会は,会員活動を支援するためのサービスや機能の充実に引きつづき努めてまいります.成果や技術の共有を,出版・広報活動や会員ネットワーク化,情報技術の活用などを用いて進めます.会員の皆様と新たな年を迎えるにあたり,次の創立記念の折に,125周年が大きな節目の年であったと思い起こされるよう祈念するところです.

なお,末筆で申し述べますが,昨年も多くの会員のご逝去の報を受けました.既にご案内の通り,山本高司副会長も昨年末に突然お亡くなりになりました.関東支部執行部時代も含め,地質学と社会との関わりについて尽力されておられる最中のことで遺憾千万です.皆様のご冥福を謹んでお祈りするとともに,我々理事会・執行部としては故山本副会長の遺志を引き継ぎ,これを全うする所存です.

 

2018年1月
一般社団法人日本地質学会
会長 渡部芳夫
(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)