【巡検および巡検案内書について】
2013.8.29
巡検参加事前申込みは8月9日に締め切りました.参加者への連絡などを大会ホームページに随時掲載いたします.
巡検案内書は,CD-ROM版を119巻8号(2013年8月号)に添付して会員に配布いたします.また,地質学雑誌の一部となっていますので,発行から3 ヶ月目にはJ-STAGEにて公開をいたします.
※冊子体の案内書は作成いたしません.巡検参加者には各班の巡検案内の複写を巡検当日に配布する予定です.
各コースの詳細と魅力・見どころの紹介
■ 参加登録はこちらから ■
申込締切:8/9(金)(郵送 8/7(水) 必着)
★注意点★
*最小催行人員に満たない場合や,安全確保に問題があると考えられる場合は,コース内容の一部変更や巡検中止等の措置をとることがあります.
*各コースの案内書は,印刷したものを巡検当日に配布します.全コース分を収録した冊子体の出版はありません(CD-ROM版のみ).
*集合・解散の場所,時刻等に変更が生じた場合,大会期間中の掲示板に案内します.案内者から直接ご連絡することもあります.
*お申し込みは http://www.geosociety.jp/sendai/content0027.html 「日本地質学会120年学術大会(仙台大会)」にて,申込先着順に受け付け中です.
A班:津波 | B班:岩手・宮城内陸地震-断層 | C班:地学教育・アウトリーチ |
D班:南部北上の古−中生界 | E班:南部北上帯の中生界 | F班:岩手県白亜系 |
G班:仙台新第三系 | H班:蔵王 | I班:北上山地古生代初期オフィオライト |
J班:阿武隈東縁の花崗岩 | K班:北鹿黒鉱 | L班:津波 |
【巡検M班中止のお知らせ】
仙台大会の巡検コースについて,巡検案内者の都合により,下記コースは中止となりました。
申込受付開始後の変更のため,皆様にはご迷惑をおかけ致しますが,何卒ご了承下さい。
すでにお申込を頂いた方は,事務局よりキャンセルのお手続きをさせて頂きます。
【中止】M班 2008年岩手・宮城内陸地震による斜面災害(案内者 川辺孝幸・籾倉克幹)
A班 2011年東北沖津波と869年貞観津波の浸水域と堆積物 |
[9月13日(金):1日コース]
定員:30名
地形図
(1/2.5万)仙台東北部・仙台東南部・仙台空港
案内者
菅原大助(東北大災害研),箕浦幸治・山田 努・平野信一(東北大理)
魅力
2011年の東北地方太平洋沖地震に伴い,仙台湾一帯は高さ10mに達する大津波に襲われ,沿岸部は壊滅的な被害を受けました.砂浜や河口周辺では浸食・堆積作用により大規模な地形変化が起こり,内陸には海岸から運ばれてきた砂による地層「津波堆積物」が形成されました.地質学的研究により,仙台平野は869年の貞観津波でもほぼ同じ浸水被害を受けていたことが知られています.本巡検では,東北沖津波による被害や堆積作用の状況,貞観津波の堆積物を見学します.貞観津波堆積物の見学方法が,9月17日の巡検(L班)と異なる予定です.
見どころ
・閖上地区・荒浜地区—被害とその後の状況
・名取川河口—津波の浸食・堆積作用と地形変化
・貞山運河と仙台東部道路—津波に対する機能
・トレンチによる西暦869年貞観津波の堆積物の観察
・末の松山—歴史記録から知る古津波
巡検コース
9:00 仙台駅(集合)→ 10:00 仙台空港→ 11:00 名取市閖上→ 13:00 仙台市若林区荒浜周辺→ 16:00 多賀城市→ 18:00 仙台駅前(解散)
東北沖津波後の名取川河口付近の状況。 | 貞観津波の堆積物の産出状況.白く見えるのが915年のTo-aテフラである.その直下に見える均質な砂層が貞観津波の堆積物,その下位は堤間湿地の黒色砂質泥である. |
備考:弁当持参(コース途中で購入可)
B班 カルデラ縁辺などのリストリック正断層が再動した岩手・宮城内陸地震(M6.9)の地表地震逆断層 |
[9月13日(金):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)本寺
案内者
遅沢壮一(東北大理)・布原啓史(テクノ長谷)
魅力
2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震では,大崩壊と地表地震断層が特徴的でした.地震断層はカルデラや花崗岩の縁辺の正断層の位置そのものか,近傍に,これらが再動した結果,生じたものです.地震断層は既に改修されていて観察できませんが,これらの縁辺断層を観察します.併せて,グリーンタフ調査ではキイになる,カルデラを充填する陸成層と下位の海成層との区別の仕方を解説したいと思います.充填堆積物と海成層との層位関係は不整合ではありません.
見どころ
・花崗岩縁辺正断層の近傍に生じた地震性逆断層
・カルデラ縁辺正断層の近傍に生じた地震性逆断層
・カルデラ縁辺の陥没性高角断層
・カルデラ外縁側の低角断層と一部の整合境界
・溶結凝灰岩と海成シルト岩
巡検コース
8:00 仙台駅西口(発)→仙台宮城IC →一関IC →一関市本寺→祭畤大橋→昼食(骨寺村荘園交流館“若神子亭”)→枛木立→一関IC →仙台宮城IC → 18:00 仙台駅西口(着)
震源近くの磐井川上流、崩落した祭畤大橋。瑞山カルデラ基底断層周辺の崩壊が大橋崩落の誘因らしい。大崩壊は他にも見られるが、地表地震断層は生じなかった。2013.3.24. | 海成層と低角断層を挟んで上位の陸成軽石凝灰岩。凝灰岩の崩壊は地震動による。修復されているが、水田には地表地震断層が現れた。さらに手前側に高角の厳美カルデラ縁辺正断層(再動して逆断層に転化している;今回は不動)。 |
備考:
C班 仙台の大地の成り立ちを知る |
[9月14日(土):1日コース]
定員:40名
地形図
(1/2.5万)仙台西北部,仙台西南部
案内者
宮本 毅,石渡 明(東北大東北アジア研究C)・蟹澤聰史(東北大名誉教授)・根本 潤(東北大理)
魅力
仙台地域は海と陸の時代を繰り返しつつ現在の姿となりましたが,その大地の形成には火山噴火も大きな役割をはたしてきました.そのような火山活動によってもたらされた噴出物を観察し,過去に起こった火山活動について知るとともに,火山噴火の多様性についても理解します.本巡検は地質学会学術大会の巡検としては初のアウトリーチ巡検です.身近な場所にある代表的な露頭を基に,仙台の大地の成り立ちについて一般の方々にも分かりやすく解説します.
見どころ
・大規模な火山活動によって現在の仙台市街地一帯を埋め尽くした火砕流堆積物(広瀬川凝灰岩部層)
・約350万年前の噴火によって埋まった森林跡(立木の化石)
・約8万年前に形成された仙台に最も近く新しい火山からの降下軽石堆積物(安達−愛島軽石層)
・竜ノ口の海の時代に生息していた生物の化石採取
・仙台市街に残る仙台城,亀岡神社の石段などの歴史的建造物の石材となった溶岩(三滝玄武岩)
巡検コース
9:00 東北大学川内南キャンパス萩ホール前出発(バス)→9:15 旧三滝温泉(八幡)→ 10:30 化石の森(郷六)→ 12:00 昼食(東北大川内北キャンパス)→ 13:15 広瀬川河畔(評定河原)→ 14:00 化石林(霊屋)→ 15:00 八木山治山の森(青葉台)→ 16:15 東北大学理学部→ 17:00 東北大学川内南キャンパス萩ホール前(解散)
約350万年前の火山活動による広瀬川凝灰岩部層の模式地である仙台市評定河原の大露頭 | 仙台市霊屋下の約350万年前の火砕流堆積物によって埋まった立木の化石 |
備考:弁当持参(コース途中の大学生協レストランで食事可)
D班 南部北上帯長坂地域の先シルル紀基盤岩類・中〜上部古生界と歌津−志津川地域のペルム系〜ジュラ系 |
[9月17日(火)・18日(水):1泊2日コース]
定員:25名
地形図
(1/2.5万)前沢・沖田・千厩北部・津谷・伊里前・志津川
案内者
永広昌之(東北大総合博)・森清寿郎(信州大理)
魅力
南部北上帯は古生界基盤およびシルル系から白亜系までの浅海成層がまとまって分布するわが国唯一の地域です.長坂地域では,先シルル紀基盤の母体変成岩類や正法寺閃緑岩,それらを覆う中部〜上部古生界(鳶ヶ森層,唐梅館層,竹沢層)の岩相を見学し,層位関係について検討します.南三陸地域では,ペルム〜ジュラ系の岩相・層序を見学します.この地域はわが国唯一の三畳紀・ジュラ紀魚竜化石産地であり,これらの産出層準や現地保存されている化石を観察できます.あわせてペルム系に挟在する燐酸塩・炭酸塩岩の産状を見学します.
見どころ
・南部北上帯西縁部の先シルル紀基盤岩類
・母体変成岩類と鳶ヶ森層の不整合露頭
・上部デボン〜最下部石炭系鳶ヶ森層と下部石炭系唐梅館層の岩相と化石
・南三陸歌津地域の上部ペルム系と燐酸塩岩・炭酸塩岩
・下部三畳系大沢層のウタツギョリュウ化石産地(館崎)
・中部三畳系伊里前層のクダノハマギョリュウ化石産地(管の浜)
・中部ジュラ系細浦層の岩相と化石
巡検コース
1 日目:8:00 仙台−(東北自動車道)→水沢IC →奥州市正法寺(母体変成岩類,正法寺閃緑岩)→一関市東山町田河津(母体変成岩の縞状角閃岩,鳶ヶ森層の赤色岩)→同南磐井里粘土山(鳶ヶ森層)→南磐井里幽玄洞(石炭系唐梅館層・竹沢層)→気仙沼→岩井崎(岩井崎石灰岩)→南三陸町歌津(泊)
2日目:歌津泊崎→石浜(末の崎層の岩相と含燐酸塩岩ノジュール)→田の浦(含燐酸塩岩)→館崎(平磯層・大沢層の岩相とウタツギョリュウ化石産地)→管の浜(クダノハマギョリュウ)→皿貝坂(上部三畳系皿貝層群)→細浦(下部〜中部ジュラ系細浦層)→志津川→登米東和IC(三陸自動車道)→ 17:00 仙台(解散
一関市東山町夏山エチゴ沢中流部の,母体変成岩類と鳶ヶ森層の不整合露頭.Mu.母体変成岩類中の超苦鉄質岩,Tb.鳶ヶ森層基底部の赤色角礫岩,Tm.鳶ヶ森層の赤色泥質岩.矢印はスケールのハンマー. | 南三陸町歌津館崎の下部三畳系大沢層の魚竜化石産地.ウタツギョリュウ化石を露頭保存している. |
備考:2日間とも昼食代自己負担(コース途中で購入可)
E班 中部ジュラ系〜下部白亜系相馬中村層群の層序と化石 |
[9月17日(火):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)新地・相馬中村・磐城鹿島・丸森・青葉
案内者
竹谷陽二郎(福島県博)・遅沢壮一(東北大理)
魅力
福島県太平洋岸北部の丘陵地帯には,南部北上帯に属する中部ジュラ系〜最下部白亜系の相馬中村層群が分布します.本層群は浅海性堆積物と河川堆積物が交互に繰り返しており,環境変化が大きな沿岸相を連続して観察することができます.本層群からは近年新種の発見が相次いでおり,本邦におけるジュラ紀〜白亜紀の重要な化石産地として再評価されています。巡検では,本層群の代表的な岩相を示す露頭を訪れると共に,特に海生動物化石の産出状態を観察します.最後に南相馬市博物館を訪れ,展示されている相馬中村層群産化石の模式標本を見学します.
見どころ
・中部ジュラ系粟津層の泥質岩と含有化石
・上部ジュラ系中ノ沢層の石灰質砂岩〜石灰岩の岩相変化と含有化石
・上部ジュラ系の河川および氾濫原堆積物である富沢層の層相
・最下部白亜系小山田層の層相変化と含有化石
・南相馬市博物館で展示している相馬中村層群産化石の模式標本
巡検コース
8:00 仙台駅(集合)→相馬市西部→南相馬市鹿島区→南相馬市博物館→ 18:00 仙台駅(解散)
南相馬市鹿島区小池に露出する中ノ沢層小池石灰岩の大露頭 |
南相馬市博物館で展示されている相馬中村層群産化石の完模式標本 平宗雄氏採集 南相馬市博物館蔵 |
1.Nilssoniocladus tairae Takimoto, Ohana et Kimura (母岩幅27cm)栃窪層 南相馬市鹿島区小山田 | 2.Aulacosphinctoides tairai Sato et Taketani (化石径14.2cm) 中ノ沢層 南相馬市鹿島区小池 |
備考:弁当持参
F班 岩手県に分布する白亜系宮古層群及び久慈層群の浅海〜非海成堆積物と後期白亜紀陸生脊椎動物群 |
[9月17日(火)・18日(水):1泊2日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)田野畑・陸中野田・玉川・大川目
案内者
梅津慶太(JAMSTEC)、高嶋礼詩(東北大総合博)、平山 廉(早稲田大)
魅力
岩手県北部沿岸地域に分布する下部白亜系宮古層群及び上部白亜系久慈層群は続成作用の影響が少なく,非常に保存状態が良好で多様な化石を産することが良く知られています.さらに,両層群は細かな堆積構造を観察することができる国内有数の白亜系です.この巡検では,宮古層群の非海成層と,津波堆積物を含む浅海層及び,久慈層群の非海成〜浅海成層の層序,堆積相,化石及びその産状を観察します.また,近年新たな発見が報告されている後期白亜紀陸生脊椎動物化石群発掘サイトを見学します.
見どころ
・宮古層群の海成層及び化石とその産状
・宮古層群の海成層中に挟まる前期白亜紀の津波堆積物
・極めて連続の良い上部白亜系久慈層群の海成〜非海成堆積物の岩相層序変化と堆積構造
・久慈層群下部に挟在するカキ化石密集層とその産状
・後期白亜紀陸生脊椎動物化石群発掘サイト
巡検コース
1日目:9:00 二戸駅発→田野畑地域(コイコロベ海岸,ハイペ海岸,平井賀海岸,明戸海岸)→久慈市(泊)
2日目:久慈市→野田玉川海岸→久慈琥珀博物館→ 17:30 二戸駅着(解散)
ハイペ海岸北の宮古層群からの砂岩転石ブロックの層理面に見られる化石密集層.ウミユリやトリゴニアなどの二枚貝がレンズ状に散在する. | 岩手県九戸郡野田村玉川漁港の南に露出する久慈層群下部の砂岩大露頭.数十センチから数メートルの厚さのカキ化石密集層を何層も挟在する. |
備考:弁当持参(コース途中で購入可)
G班 仙台南西部に分布する中・上部中新統および鮮新統 |
[9月17日(火):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)仙台南西部・仙台北西部
案内者
藤原 治(産総研)・鈴木紀毅(東北大)
魅力
仙台南西部は,東北日本の太平洋側における新第三系が模式的に露出する場所であり,層序,古生物,テクトニクスなどの研究が戦前から連綿と行われてきました.また,名取川下流の河床の大露頭では最近になって堆積相や年代層序の解明が進み,詳細な相対的海水準変動の検討が可能になりました.今回の巡検では,放射年代や生層序が実際に調べられた露頭で層相や鍵層などを観察するとともに,堆積相解析から復元される相対的海水準変動についても現場で議論したいと思います.この巡検を通じて,東北日本弧の地史や,そこに展開した生物相の変遷についてより深く理解することを目指します.
見どころ
・高館層の溶岩を覆う茂庭層と,茂庭層に含まれる中期中新世の初め頃に暖海の岩礁に生息した貝類などの化石.
・名取川河床に露出する延長1000m以上,幅50m前後の連続大露頭.名取層群旗立層から仙台層群までが連続的に露出.旗立層には顕著な上方細粒化−上方粗粒化サイクルが少なくとも7回認められ,相対的海水準変動を示す.
・名取川下流の河床に見られる不整合の形成時期と東北日本のテクトニクス史との関連.
・竜の口渓谷入口の崖に露出する仙台層群(竜の口層から大年寺層まで)の地層群と,それらが示す環境変化.
巡検コース
8:30仙台駅西口→茂庭→旗立→青葉山(工大グランド)→名取川河床→竜の口?あるいは澱橋あたりの竜の口層→仙台駅(16:00頃)
名取川河床に露出する旗立層中部の石灰質砂岩.上方粗粒化サイクルの最上部にあたり,細礫質でフジツボやイタヤガイ科の貝類の破片が集積している.大型のトラフ型斜交層理が発達する.堆積年代は約11Ma. | 名取川河床に露出する綱木層上部を構成する砂岩・礫質砂岩の互層.左側が上位で,50度前後の東傾斜を示す.礫質砂岩の部分が凸になっている.堆積年代は約6.4Maで,年代からみると秋保層群の梨野層と同時異相をなす可能性がある. |
備考:弁当持参(コース途中で購入可)
H班 蔵王火山 |
[9月17日(火):1日コース]
定員:15名
地形図
(1/2.5万)蔵王山
案内者
伴 雅雄(山形大理)
魅力
テフラや火口近傍の噴出物を観察することにより、蔵王山最新期(過去約3万年間)の噴火履歴を理解します。
見どころ
・最新期は大きく約3〜1万年前、8〜4千年前、約2千年前以降に細分され、各々活動・噴出物の特徴が異なります。
・各活動によってもたらされた噴出物を代表的な露頭で観察します。
巡検コース
8:00仙台駅→9:40蔵王山大黒天付近のテフラ→10:40蔵王山頂(刈田岳)→五色岳あるいは熊野岳付近の火砕サージ・1895年噴出 物など(雨天の場合はエコーライン沿いの露頭など)→15:00駒草平のアグルチネート→17:00仙台駅
蔵王山、五色岳火砕岩。夥しい数の火砕サージ堆積物&アグルチネートが累重している。 |
備考:弁当持参
I班 オルドビス紀−デボン紀島弧系の復元と発達過程:岩手県早池峰宮守オフィオライトと母体高圧変成岩類 |
[9月17日(火)・18日(水):1泊2日コース]
定員:22名
地形図
(1/2.5万)区界・宮守・小友・野手崎・沖田・前沢・水沢
案内者
小澤一仁(東大理)・前川寛和(大阪府立大理)・石渡 明(東北大・東北アジア研究C)
魅力
南部北上山地は,大陸性の地殻がシルル紀−デボン紀に存在していたと考えられる古い地塊です.この地塊の北縁と西縁には,オルドビス紀の島弧性オフィオライト(早池峰・宮守オフィオライト)とオルドビス紀〜デボン紀の間に形成された高圧変成岩類(母体変成岩類)が分布しています.これらは,オルドビス紀以降のおよそ数千万年で成熟した島弧地殻へと進化していった沈み込み帯の発達過程を記録していると考えられます.本巡検では,早池峰・宮守オフィオライトのマントルセクションと,ほぼ同時〜1億年後の沈み込み帯である母体変成岩の露頭を観察し,古生代初期の島弧発達過程の実体を探索します.
見どころ
・早池峰かんらん岩体の主要構成岩石であり,早池峰・宮守オフィオライトの中でも最も始源的なレルゾライトの露頭を観察
・宮守かんらん岩体で,オルドビス紀の年代が得られた角閃石はんれい岩〜角閃石岩の岩相変化を露頭で観察
・宮守かんらん岩体を構成する始源的レルゾライト,層状かんらん岩,高枯渇ハルツバージャイトの露頭を観察
・宮守かんらん岩体のテクトナイトと沈積岩の境界を観察
・沈積岩メンバー中に分布する,極めて特異な岩相である,斜長石含有輝石角閃石岩〜角閃石輝岩とコートランダイトを含む超苦鉄質岩体の観察
・宮沢賢治記念館で賢治の作品世界にふれ,南部北上山地の地質との関わりに思いを馳せる.
・母体変成岩中の変はんれい岩(採石場),枕状溶岩,角閃岩と蛇紋岩の接触関係,アルカリ角閃石を含む緑色片岩を観察
巡検コース
1日目:8:00 盛岡駅出発,砂子沢,五ッ葉,長野峠,大迫,宮守北部,鱒沢駅西,花巻(宮沢賢治記念館・童話村),花巻(泊)
2日目:花巻発,宮守,鱒沢周辺,五輪峠附,白土川,五輪牧野,水沢,黒石,正法寺,一関で18:00(解散)
宮守岩体のテクトナイト層−沈積岩層境界に見られるハルツバージャイト礫(優黒質部分)を含むウエールライト | 母体変成岩中の枕状溶岩 |
備考:2日間とも昼食代自己負担(コース途中で購入可)
J班 阿武隅山地東縁の石炭紀および白亜紀アダカイト質花崗岩類 |
[9月17日(火):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/5万)角田,岩沼
案内者
土谷信高(岩手大教育)・大友幸子(山形大地域教育文化)
魅力
阿武隅山地東縁を走る双葉断層の東側の割山隆起帯には,従来「割山圧砕花崗閃緑岩」と呼ばれていた花崗岩体が分布しています.「割山圧砕花崗閃緑岩」は,最近のジルコンを用いたU-Pb年代測定結果から,約300Maの年代を示す割山花崗岩体と,117〜118Maの年代を示す高瀬花崗岩体に区分されました.割山花崗岩体の約300Maの年代は,これまで日本列島からほとんど見つかっていない花崗岩形成の空白期間に相当する年代であり,その地質学的位置付けは非常に興味深いものです.この巡検では,いずれもアダカイト質である割山・高瀬花崗岩体の地質学的・岩石学的特徴や,その周囲に露出する割山変成岩の特徴および割山隆起帯上昇時に堆積した中新世の金山層の特徴などを観察していただきます.
見どころ
・金彫沢の葉片状の片理や微褶曲が発達する割山変成岩.
・明通峠南東採石場跡の割山花崗岩体と高瀬花崗岩体.マイロナイト化した割山花崗岩体は,スカルン様岩や閃長岩質岩などを含む所属不明の塩基性変成岩類と断層で接し,マイロナイト化した高瀬花崗岩はこの変成岩類に岩脈として貫入していると思われます.
・高瀬峠北東の採石場の割山花崗岩体と所属不明変成岩類.マイロナイト面構造が発達している割山花崗岩マイロナイトと所属不明の塩基性変成岩類が断層で接し,その東には高瀬花崗岩が分布します.
・高瀬峠南西の割山−高瀬花崗岩体の西部に接する中新統金山層下部層の角礫岩.
巡検コース
8:30 仙台駅出発→角田市金彫沢の割山変成岩→山元町明通峠南東の石炭紀割山花崗岩体と白亜紀高瀬花崗岩体→山元町鷲足川の高瀬花崗岩体→山元町高瀬峠北東の割山花崗岩体→山元町小斎峠の高瀬花崗岩体→角田市高瀬峠南西の金山層下部層の角礫岩→ 16:00 頃仙台駅(解散)
明通峠南東採石場跡の割山花崗岩体と断層で接する所属不明の塩基性変成岩類. | 所属不明の塩基性変成岩類に岩脈として貫入していると思われる高瀬花崗岩. |
備考:弁当持参
K班 北鹿地域における黒鉱鉱床と背弧海盆火山活動 |
[9月17日(火)・18日(水):1泊2日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)大館,小坂,白沢,陸中濁川
案内者
山田亮一(東北大理)・吉田武義(東北大)
魅力
北鹿地域は,東北本州弧の発達過程において,時間的にも空間的にも,背弧リフトから島弧への転換点に相当します.このため,陸弧安山岩から,背弧バイモーダル火山活動を経て,島弧カルデラ火山活動まで,一連の造山イベントが同時に観察できる数少ない地域です.当地域に代表される黒鉱鉱床は,この地質イベントの産物と考えらており,黒鉱露頭では,海底熱水鉱床としての硫化物帯の様々な産状をはじめ,鉱床形成に関与した流紋岩や鉱床を取り巻く粘土変質帯まで,一連の事象を観察できます.
見どころ
・陸弧における安山岩
・背弧リフトのバイモーダル火山活動
・海底熱水鉱床としての黒鉱鉱床
・熱水活動に伴う変質帯や軽石火山
・島弧期における海底珪長質火山活動
巡検コース
1日目:9:00 仙台駅前→小坂鉱山→花岡鉱山→黒鉱試料室→大館(泊)
2日目:8:00 大館→玄武岩採石場→黒鉱下盤流紋岩→黒鉱上盤流紋岩→軽石凝灰岩→小坂発→ 19:00 仙台駅前(解散)
バイモーダル火山活動:下位より粗粒玄武岩シート,玄武岩質火山砕屑岩,枕状溶岩,泥岩および流紋岩 | 観音堂鉱床のチムニーとチムニー壁の黄鉄鉱球晶 |
備考:2日間とも昼食代自己負担(コース途中で購入可)
L班 2011年東北沖津波と869年貞観津波の浸水域と堆積物 |
[9月17日(火):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)仙台東北部・仙台東南部・仙台空港
案内者
菅原大助(東北大災害研),箕浦幸治・山田 努・平野信一(東北大理)
魅力
2011年の東北地方太平洋沖地震に伴い,仙台湾一帯は高さ10mに達する大津波に襲われ,沿岸部は壊滅的な被害を受けました.砂浜や河口周辺では浸食・堆積作用により大規模な地形変化が起こり,内陸には海岸から運ばれてきた砂による地層「津波堆積物」が形成されました.地質学的研究により,仙台平野は869年の貞観津波でもほぼ同じ浸水被害を受けていたことが知られています.本巡検では,東北沖津波による被害や堆積作用の状況,貞観津波の堆積物を見学します.貞観津波堆積物の見学方法が,9月13日の巡検(A班)と異なる予定です.
見どころ
・閖上地区・荒浜地区—被害とその後の状況
・名取川河口—津波の浸食・堆積作用と地形変化
・貞山運河と仙台東部道路—津波に対する機能
・ジオスライサーによる西暦869年貞観津波の堆積物の観察
・末の松山—歴史記録から知る古津波
巡検コース
9:00 仙台駅(集合)→ 10:00 仙台空港→ 11:00 名取市閖上→ 13:00 仙台市若林区荒浜周辺→ 16:00 多賀城市→ 18:00 仙台駅前(解散)
東北沖津波後の名取川河口付近の状況。 | 貞観津波の堆積物の産出状況。白く見えるのが915年のTo-aテフラである。その直下に見える均質な砂層が貞観津波の堆積物、その下位は堤間湿地の黒色砂質泥である。 |
備考:弁当持参(コース途中で購入可)
M班 2008年岩手・宮城内陸地震による斜面災害 |
【巡検M班中止のお知らせ】
仙台大会の巡検コースについて,巡検案内者の都合により,このコースは中止となりました。
申込受付開始後の変更のため,皆様にはご迷惑をおかけ致しますが,何卒ご了承下さい。
※すでにお申込を頂いた方は,事務局よりキャンセルのお手続きをさせて頂きます。
[9月17日(火):1日コース]
定員:20名
地形図
(1/2.5万)花山湖,切留,栗駒山,岩ヶ崎,沼倉,本寺
案内者
川辺孝幸(山形大地域教育文化)・籾倉克幹(基礎地盤コンサルタンツ)
魅力
22008年岩手・宮城内陸地震は,内陸部の山地と丘陵部との境界付近で発生したM7.2の地震によって,震源域を中心に,各種の斜面崩壊による災害が発生しました.とくに,荒砥沢ダム上流域で発生した巨大グライドは,その規模と発生メカニズムから大きな注目を浴びましたが,その他にも,トップリングや,谷埋め堆積物の液状化,古い崩壊堆積物または人工堆積物の強振動による崩壊など,強震動によって発生する多彩なメカニズムの崩壊が起こっています.巡検では,それぞれのタイプの典型的な崩壊地を見学する予定です.
見どころ
・崩壊堆積物が運ばれてできた花山湖のデルタの堆積状況
・栗原市浅布地区の斜面崩壊堆積物の崩壊
・栗原市小河原地区の谷埋め堆積物の液状化による崩壊
・栗原市小河原地区のトップルによる崩壊
・栗原市湯浜地区のトップルによる崩壊と天然ダム
・栗原市荒砥沢ダム上流域の巨大ブロックグライド冠頭部
巡検コース
8:00 仙台駅(集合)→宮城県栗原市国道398 号→浅布渓谷→湯浜地区→荒砥沢ダム上流域地すべり→ 17:00 くりこま高原駅(解散)
浅布地域の谷埋め堆積物の液状化による崩壊とトップルによる崩壊(国土交通省提供) | 湯浜地区のトップルによる崩壊と一迫川にできた天然ダム |
備考:弁当持参