日本地質学会第130年学術大会:トピックセッション招待講演者の紹介


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世話人や専門部会から提案され,行事委員会が承認したセッション招待講演者を紹介します.なお,講演時間は変更になる場合があります.

◆ トピックセッション    
T1.岩石・鉱物の変形と反応 T2.変成岩とテクトニクス T3.ジオパーク
T4.中生代日本と極東アジア T5.テクトニクス T6.堆積地質学
T7.鉱物資源研究 T8.応力逆解析 T9.マグマ
T10.文化地質学 T11.南極研究 T12.地球史
T13.沈み込み帯・付加体 T14.原子力 T15.地域地質・層序
T16.都市地質学    

*タイトル(和英),世話人氏名・所属,概要を示します.*印は代表世話人(連絡責任者)です.

T1.岩石・鉱物の変形と反応

  • 赤松裕哉(広島大学:非会員)30分  赤松氏は海洋地殻及び海洋マントルの物理特性におけるクラックの影響について研究している.特に,室内実験により得られた弾性波及び比抵抗データや掘削コア試料のCTスキャンデータなどから抽出したクラックの物理パラメーターをベイズ理論などを用いた数値計算により拡張し,地球物理観測データに厳密な物理的解釈を与えるという近年の一連の研究成果は参加者の興味を大きく引くと考えられる.
  • 金木俊也(京都大学:会員)30分  金木会員は断層露頭観察および室内摩擦実験により,断層滑りに伴う鉱物結晶化度の変化や断層滑り挙動に関する研究を行っている.また,直近の研究では,岩石の圧密・スメクタイトの脱水などを考慮した沈み込み帯の水理学モデリングから,有効垂直応力の深度分布を見積もる研究も行っている.これらの研究成果は本セッション聴講者の興味を引くものであると期待される.
 

T2.変成岩とテクトニクス(なし)

 

T3.大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク(なし)

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T4.中生代日本と極東アジアの古地理・テクトニクス的リンク:脱20世紀の新視点

  • Julien LeGrand(静岡大学:会員)30分  LeGrand会員は日本各地の多数の中生層の花粉化石分析を行い,従来,年代未詳であった地層の年代決定や日本列島の中生代植物相の変遷に重要な成果を挙げてきた中堅研究者である.本セッションでは,20世紀に提案され,定説となっていた極東アジアと日本の古典的古植物相の理解に対して,今起きつつある新たな進展についての最新研究レビューをお願いしたい.

T5.テクトニクス

  • 星 博幸(愛知教育大学:会員)30分  星会員は,地質学と古地磁気学を中心とした研究を進められており,特に近畿・中部地方をはじめとる日本列島の新生代テクトニクスに関する多くの論文を発表されてきた.これらの研究成果は造山帯における地殻変動のモデルとして,その他の研究に大きな影響を与えている.招待講演では,星会員の最新の研究成果も含めた西南日本弧の形成過程について提示していただくことを目的としている.
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T6.堆積地質学の最新研究

  • 奥村知世 (高知大学海洋コア総合研究センター:会員)30分  奥村会員は,温泉成の炭酸塩堆積物であるトラバーチンの研究を始め,深海冷湧水に関連した炭酸塩チムニー,高知沖の宝石サンゴ,高知県龍河洞の鍾乳石など,炭酸塩堆積物に関して幅広く研究をされている.招待講演では最新の研究を紹介いただく予定である.
  • 齋藤 有(徳島大学:非会員)30分  齋藤氏は,日本におけるハイパーピクナル流堆積物に関する先駆的な研究を行ったほか,近年ではSrなどの放射壊変源安定同位体比を指標とする堆積物供給源解析から,地球表層の堆積物移動様式の解明にアプローチする研究を進めている.招待講演では,黒潮による細粒砕屑物の運搬可能性についてSr-Nd-Pb同位体比から考察した研究例についてお話ししていただく.

T7.鉱物資源研究の最前線

  • 見邨和英(千葉工業大学:会員)30分:見邨会員は,地球科学の研究に機械学習を応用することで新たな展開をもたらしている新進気鋭の研究者である.最先端のディープラーニング技術に基づく画像認識手法を用いて,年代の決定や海洋環境の推定に必要な微化石を高精度で検出・観測する新しいシステムの構築や,海底熱水鉱床の自動探査技術の開発・実装など,革新的かつ独創的な研究を展開している.本講演では,最新の研究展開と今後の展望について話題を提供していただく予定である.
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T8.フィールドデータにおける応力逆解析総決算

  • 山路 敦(京都大学:会員)30分  山路会員は,理論テクトニクス研究を長年に渡り進めてきた中で,2000年の多重逆解法(Multiple inverse method)をはじめとする応力逆解析手法を精力的に開発してきた.多くのユーザーにより地殻応力の時間変化や空間的な不均一が次々と明らかとなり,島弧の構造発達史の理解が大きく進んだ.山路会員に手法のこれまでの発展史の紹介と今後の課題や期待を提示していただくことは本セッションにとってこれ以上ない講演である.
  • 内出崇彦(産業技術総合研究所:非会員)30分  内出氏は,地震学研究を進める中で,AIを活用した地震波形ビッグデータ処理による微小地震の震源メカニズム解の解析から,日本列島内陸部にかかる現在の応力の向きについて,日本列島規模の大局的な傾向から約20 km規模の地域的な特徴まで知ることができる「ストレスマップ」を2022年に公表した.内出氏に日本列島内陸部の現在の応力の特徴を紹介していただくことは本セッションにとってこれ以上ない講演である.
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T9.マグマソースからマグマ供給システムまで

  • 村岡やよい(産業技術総合研究所:会員)15分  村岡会員はバソリスを構成する小規模深成岩体を対象に野外調査を主軸とした岩石学的研究を推進している.特に北部九州花崗岩バソリスに分布する低Sr含有量の深成岩体(低Sr花崗岩類)の成因について,下部地殻溶融時の低圧条件の可能性を指摘し,小規模岩体での解析結果をバソリス規模に展開した.ミクロの解析をマクロの議論に展開できる今後の活躍が期待される若手研究者である.
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T10.文化地質学

  • 貴治康夫(立命館高等学校:会員)30分  貴治会員は京都周辺の地質の研究に関わって,古都・京都で使用されてきた石材に興味を持ち,用途からみた岩石の特徴,開発経緯・文化的背景などについて検討するようになった.現役の庭園師・石匠と情報交換しながら庭園内の庭石や採石地を調査した成果に加え,焼き物や壁土,砥石,茶磨などの素材にも着目して京都の伝統産業と周辺地質との関わりについて論じてくださるものと期待している.
  • 加藤友規(植彌加藤造園株式会社:非会員)30分  加藤氏は,植彌加藤造園の社長として,京都市内の名庭の維持管理を行ってきただけでなく,京都芸術大学大学院日本庭園分野の教授として,庭園文化の研究も進められている.京都の庭園文化に造詣が深く,植木だけでなく岩石の作庭における役割について,地質学者とは異なった視点で論じてくださるものと期待している.

T11.南極研究の最前線

  • 板木拓也(産業技術総合研究所:会員)30分  板木会員は,長年に渡って現世,海底堆積物,露頭試料 まで幅広い試料を対象とした放散虫の研究を行っており, 最近ではAIを使った微化石解析システムの開発で世界的に注目される研究者である.また,南極周辺の海底堆積物を用いた最終氷期以降の氷床融解イベントの復元にも進捗が見られており,地質学会でもこのトピックについて講演いただく.
  • 野木義史(国立極地研究所:非会員)30分  野木氏は,地球物理学を専門とし,観測船や航空機によ る地磁気異常、重力異常や地形等の観測に基づいて,ゴンドワナ超大陸分裂機構の解明や南極大陸氷床下の地質構造の推定に取り組んでいる.今回の招待講演では,主にNogi et al. (2013)で提唱された,地球物理データから見る南極大陸のテクトニクス史についてご講演いただく予定である.
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T12.地球史

  • 千葉謙太郎(岡山理科大学:非会員)30分  千葉氏は,恐竜類の中でも角竜類を専門に,骨化石から個体成長過程や雌雄差や個体差についての古生物学的な研究を行なっている.恐竜標本から骨のがんを世界で初めて報告し,最近では骨化石から有機物を抽出するなど,古生物や地質学の分野だけでなく病理学などの研究者と共同で,最先端の恐竜研究に取り組まれている.招待講演では,モンゴル上部白亜系の絶対年代決定と最近の発掘で発見され た脊椎動物小型化石の研究について講演していただく.
  • 梶田展人(弘前大学:会員)30分  梶田会員は,有機地球化学を専門とし,現在の地球表層システムや第四紀の気候変動の解明に関する研究を行っている.梶田会員は,海洋・湖の堆積物だけではなく,房総半島に分布する地層からもバイオマーカーを抽出し,過去の表層海水温の復元を行うなど,地質学の分野においても重要な研究成果を挙げている.招待講演では,第四紀におけるバイオマーカーを用いた温暖期の古環境復元に関する 総説について,これまでの研究と今後の展望を講演していただく.

T13.沈み込み帯・陸上付加体

  • 小平秀一(海洋研究開発機構:非会員)30分  現行IODPによる最後の科学掘削となる日本海溝掘削計画 J-TRACKが2024年に予定されている.日本側のリードプロポーネントである小平氏にJ-TRACKの詳細を沈み込み帯に関わる地質学会員に紹介していただくとともに,興味を持つ研究者に乗船希望の機会となることを期待している.

T14.原子力と地質科学

  • 志間正和(原子力規制庁:非会員)30分  NUMOによる文献調査が実施される中,2022年に原子力規制委員会から,地層処分の概要調査地区等の選定時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項について公表された.これは文献調査を行う観点からの重要な指針であることから原子力規制庁からご紹介いただく.
  • 千木良雅弘(深田地質研究所:会員)30分  これまで国内外で数多くの岩盤の特性を調査されてきた千木良会員より,地質構造と地下水流動の不確実性についてご紹介いただき,今後のサイト選定調査に係る問題点を議論する.

T15.地域地質・層序学:現在と展望

  • 板木拓也(産業技術総合研究所:会員)30分  地域地質・層序の研究で重要な要素は年代決定であり, 微化石は有用なツールであるが,一方で鑑定には専門的知識と習熟が必要で,今般の人口減の文脈において人材の涸渇が危惧される.その中において,板木会員はAIの機械学習による微化石判定に取り組んでおり,この問題を解決する基幹的な技術の一つになる可能性がある.この技術の実相と展望について開発者本人の口から広く地域地質研究者に報せるべきと考える.
  • 脇田浩二(山口大学:会員)30分  脇田会員は,野外調査を基とした地質図作成とグローカルなテクトニクス研究に長年取り組み,特に付加体及びその形成機構を実証した第一人者である.さらに,日本初のWeb地質図である日本シームレス地質図の開発を主導した.野外調査を基とした研究は予定調和とコスパ重視の風潮から近年敬遠される傾向にあるが,脇田会員には足のスケールから地球スケールに至る研究経験を踏まえて野外調査の意義・魅力・醍醐味などを語ってもらう.本講演がフィールドジオロジーの再評価につながることを期待する.

T16.都市地質学:自然と社会の融合領域

  • 竹村恵二(京都大学名誉教授:非会員)30分  竹村氏は,関西空港建設時より,理学分野の専門家として調査研究に携わり,施設施工管理に必要な工学的モデル検討の基礎的な情報の取りまとめを行った.そのほかにも, 都市インフラ整備などに必要な工学的要求事項に対して地質情報を用いて検討・対応を行った.本講演では,都市部における地質情報の収集と利活用方法などの事例を含めてご発表いただく.
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