日本地質学会は,コロナ禍で延期になった学術大会(名古屋大会)の代替企画の一つとして,昨年(2020)秋にオンラインによる「日本地質学会ショートコース」を2回開催しました。いずれも大変好評で,ショートコースの継続的な実施を望む声も多く寄せられました。それを受けて学会内で検討し,「大学で学部生や大学院生に十分教えられていない内容を学会がカヴァーする」,「地質技術者や学校教員,学芸員等が現在の地質学の知見や研究方法等について学ぶ機会を学会が提供する」というショートコースの目的を果たすには継続的な実施が必要と判断し,年4回程度のペースで継続的に実施する方針が確認されました。皆様にはこのショートコースをぜひ積極的に受講いただき,地質学の基礎的・応用的知識を習得していただくとともに,先端研究・技術の一端に触れていただきたいと思います。
今回は「津波堆積物」をキーワードに,その調査によって津波とそれを引き起こした地震の実像を探るための知識と研究事例を提供します。講師はこの分野をリードするお二人の研究者です(午前1名,午後1名)。
内容:(各コース、講義、質疑応答を含め3時間程度を予定)
<午前> 9:00-12:00
津波堆積物を理解するのに必要な基礎的堆積学:藤野滋弘(筑波大学)
津波堆積物は過去にその地域で発生した津波の物証であり,将来の津波災害を軽減するための基礎情報として重要です.しかしながら地球表層では津波以外の現象でできた堆積物の方が圧倒的に多く,津波堆積物を識別するには様々な地層の特徴を知っている必要があります.また,津波が浸水した場所であっても必ず津波堆積物ができて地層中に保存されるわけではなく,津波堆積物を探す場合には適切な調査地を選定することも重要です.そこで本講義では学部学生や大学院生などを主な受講者として想定し,津波堆積物を識別して理解するために必要な堆積学の基礎を解説します.
https://researchmap.jp/sfujino
<午後> 15:00-18:00
津波堆積物を理解するのに必要な応用的堆積学:後藤和久(東京大学)
津波堆積物研究では,様々な要因で形成される地層中のイベント堆積物から,津波堆積物を適切に認定することが最も重要な作業です.津波堆積物を認定できれば,次に津波の発生時期や規模の推定などの応用的研究を行うことができるようになり,津波リスク評価につながります.本講義では,学部生や大学院生など津波堆積物研究を行ったことのない方を主対象として,地層中からイベント堆積物が見つかった後,どのようなプロセスで津波堆積物研究を行うのかを概説します.そして,津波堆積物研究に残る課題を理解し,独立して津波堆積物研究を行うために必要な基礎知識を習得することを目指します.
https://researchmap.jp/7000003536
参加費(各1日券):
会 員 2000円(賛助会員に所属する⽅は会員と同額)
⾮会員 4000円
開催方法:WEB会議システムzoom(https://zoom.us/)によるオンライン講義
定員:各コース100名(定員は事務局および講師を含み、定員を超えた場合は,会員が優先となります)
申込方法:申込受付は締め切りました(5/12)
その他:希望者には各コース毎のCPD受講証明書を発行します.午前午後各3単位を予定
.(CPDプログラムID:2879)
申込締切:2021年5月12日(水)
問い合わせ先:一般社団法人日本地質学会
メールmain [at] geosociety.jp 電話 03-5823-1150
(参考)過去のショートコース(第1回,第2回)
http://www.geosociety.jp/science/content0121.html