要旨・開催報告▶︎ 日本地質学会News vol.24, No. 6, p.6-7(2021年6月号掲載)

日本地質学会第1回・第2回ショートコース

 

本年秋の学術大会が新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中止(来年に順延)になったことを受け,その代替企画について執行理事会が中心となって検討してきました.その結果,代替企画の一つとして「日本地質学会ショートコース」を開催することになりました.検討を進める中で,大学の地球惑星科学系学科では地質学の基礎的内容でありながら学科構成スタッフの偏りのために学部生や大学院生に十分教えられていないトピックがあり,そうした内容を本学会が少しでもカヴァーできないかという意見がありました.また,地質技術者や学校教員,学芸員等が現在の地質学の知見や研究方法等について学ぶ機会があると良いという意見もありました.こうした意見を踏まえて,地質学の土台を支える基礎知識や最近ホットな研究の話題など,会員・非会員を問わず多くの方々に知っていただきたいトピックを「日本地質学会ショートコース」で紹介することになりました.本年9月19 日(土)に第1回目を,10月24 日(土)に第2回目をオンラインで開催し,各回2名の研究者に話題提供していただきます(午前1名,午後1名).その道の精鋭によるコースをぜひこの機会に受講していただきたいと思います.

2020年7月11日
日本地質学会行事委員長  星 博幸

 

第1回    日程:2020年9月19日(土)

内容:(各コース、講義、質疑応答を含め3時間程度を予定)
<午前> 東北アジア及び日本列島の地体構造発達史:辻森 樹(東北大学)
https://researchmap.jp/tatsukix
日本列島の地体構造発達史は,列島各地の研究成果の集積とともに,より確からしいものへと段階的に改訂されてきました.長寿命の太平洋型造山帯として,列島には数億年間にわたる大陸縁のダイナミックな変動が記録されています.さらに,身近な郷土の地形,そして気候や生態系にも,その地体構造の不連続が影響を及ぼしています.本コースでは,日本列島の地体構造を考える上で基本となる構造線や基盤の不連続境界など,列島の大構造を復習します.また,すさまじい勢いで理解が進んできた東北アジアの地質学的新知見を総括し,その発達史と大構造について学習します.その他,一家に1枚「日本列島7億年ポスター」制作秘話も紹介します.

<午後> 大陸成長から見るたのしい太古代研究:沢田 輝(海洋研究開発機構)
https://researchmap.jp/hsawada
25億年以上前の太古代地質というと,活動的な造山帯の日本からは遠い海外の地質というイメージがあるかもしれません.一方,成長し続ける西之島のように,日本の地質環境と地球史初期との類似性が見出されてもいます.プレート沈み込みや島弧火成活動といった,日本列島では身近に感じる地球の活動.太古代地球はどのような形であったのか? 今の地球とどの程度異なっていたのか? いま論争となっている部分を中心に,わかっているようでわかっていない太古代地球について,主に大陸成長研究の側面から,その難しさとたのしさを紹介します.講演や学会発表とは一味違う濃厚な時間を提供できればと思います.
 

第2回    日程:2020年10月24日(土)

内容:(各コース、講義、質疑応答を含め3時間程度を予定)
<午前> 層序学の基礎と応用:高嶋礼詩(東北大学)
https://researchmap.jp/read0155080
本コースでは層序学の基礎編として,岩相層序,生層序,古地磁気層序,化学層序(酸素,炭素,ストロンチウム,オスミウム同位体比層序),サイクル層序,年代層序の概要を解説します.そしてこれらの層序学的手法を用いた国際標準年代尺度の作成,GSSPの認定,日本の地層での研究例を紹介します.応用編では,アパタイト微量元素組成を用いたオルドビス紀〜第四紀のテフラ層序の研究を紹介します.この手法を用いると,埋没続成,溶結,風化などによって火山ガラスが変質した凝灰岩についても高精度で対比可能になります.日本には変質した凝灰岩の露出が卓越する地域がよくみられることから,ジルコン年代と組み合わせることにより,日本の地層の対比精度向上への貢献が期待できます.

<午後> 統計解析言語Rを用いた地球科学データ解析基礎実習:上木賢太(海洋研究開発機構)
https://researchmap.jp/kentaueki
多変量解析や数理に基づくデータ解析は,地球科学においても年々その重要さを増しています.本講座では,実際の地球科学データを題材として,データ解析の実習を行います.講義として,多変量解析や線形回帰,モデル選択などの概念を解説するとともに,地球科学,特に岩石化学組成へ適用した研究の例を示します.さらに実習として,統計解析向けの言語及び実行環境フリーソフトウェアである「R」を用いて,基礎的な解析を各自のパソコン環境上で実際に行います.通常のパソコン環境が整っていれば問題なく実習を行うことが可能です.必要な事前準備(RおよびR studioのインストール)のための資料や,実習で使用するデータ等は事前に配布します.


参加費(各1日券):
  会 員 2000円(賛助会員に所属する⽅は会員と同額)
  ⾮会員 4000円

  • (注)⾮会員の学部⽣・院⽣は「会員」料⾦に含まれます.「⾮会員」とは学部⽣・院⽣ではない⾮会員とします.
  • (注)午前のみ,午後のみの受講の場合も,参加費の割引はありません.  
  • (注)キャンセル料について:締切日(9/7・10/12)まで 0%, 会期3日前(9/16・10/21)まで 60%, 会期2日前(9/17・10/22)以降 100% いずれの場合も返金がある場合は,振込手数料を差し引いた額をカード会社もしくは学会から返金します.返金までに2〜3ヶ月要する場合もありますので,ご了承下さい.

定員:各コース100名(定員は事務局および講師を含み、定員を超えた場合は,会員が優先となります)
申込方法:専用申込画面(こちら)よりお申込みください 受付終了しました
その他:希望者には各コース毎のCPD受講証明書を発行します。
申込受付期間: 第1回分 8月5日〜9月7日(月) / 第2回分 9月24日(木)〜10月12日(月)受付終了しました

問い合わせ先:一般社団法人日本地質学会
メールmain [at] geosociety.jp  電話 03-5823-1150