井龍康文(執行理事:国際交流担当)
写真1:9月15日行われた日韓地質学会の意見交換および日韓地質学会学術交流協定の調印後の記念撮影.前列左より,石渡日本地質学会長,Yu大韓地質学会会長.後列左より,江川会員,Choi大韓地質学会事務局長,高木執行理事,ウォリス副会長,Cho大韓地質学会副会長,井龍. |
本年9月15日から17日に開催された日本地質学会第119年学術大会(大阪大会)に,大韓地質学会より,Yu, Kang-Min会長(延世大学),Cho, Moon-Sup副会長(ソウル大学),Choi, Weon-Hack事務局長(韓国水力・原子力発電株式会社)の3名が参加された.日本地質学会と大韓地質学会は,2007年以来,互いに隔年で学術大会を表敬訪問しており(ただし,昨年の訪問はなし),今年の大韓地質学会一行の来日となった.Yu会長は京都大学で学位を取得された知日家で,堆積学が専門である.
9月15日午前,大阪自然史博物館にて,日韓地質学会の意見交換および日韓地質学会学術交流協定の調印が行われた.日本側の参加者は,石渡 明会長,ウォリス副会長,高木秀雄執行理事,江川浩輔会員(産業技術総合研究所メタンハイドレート研究センター),井龍であった.江川会員は,韓国の江原大学(修士)とソウル大学(博士)に留学して堆積学の学位を取得しており,韓国語通訳が可能な若手研究者である.
会議は井龍の開会宣言に始まり,自己紹介,石渡会長の歓迎の挨拶,Yu会長の答礼に続いて,今後の日韓地質学会の交流が話し合われた.その結果,両国の交流をさらに発展させることで合意した.具体的には,主に学生を対象とした巡検の相互受け入れ(韓国の学生向け巡検を日本で実施およびその逆のケース)や両学会の学術大会で開催される国際シンポジウムへの研究者の相互招聘を活発化することで意見の一致をみた.また,日本で開催される学生向けショートコースの中には,国際的にオープンする予定のものがあるので,それらへ韓国の学生が積極的に参加して欲しいとの旨が伝達された.会議の最後には,日韓地質学会学術交流協定の調印が行われた.これは,2007年10月に締結された日韓地質学会学術交流協定の有効期限が5年間であったため,同協定をさらに5年間延長することで合意していたことを受けて,行われたものである.本文末に,交流協定の全文を掲載する.
写真2:表彰式で祝辞を述べられるYu 大韓地質学会会長. |
昼食後,一行は大阪自然史博物館で行われた「地質情報展2012 おおさか− 過去から学ぼう大地のしくみ− 」(http://www.gsj.jp/event/2012fy-event/osaka2012/index.html)の開会式に参加された.佃 栄吉元副会長が引率と説明を担当した.
その後,一行は大阪府立大学に移動し,表彰式と懇親会に臨席されたYu会長からは,表彰式では祝辞を,懇親会では冒頭の挨拶をいただいた(写真2).この日の一連の行事において,Yu会長は繰り返し,「両国は社会的・外交的に厳しい状況におかれているが,我々は地質学者として将来に向かって友好関係を築くべきである」と述べられたことが強い印象として残っている.懇親会の感想を聞いてみたところ,Choi事務局長から,「韓国では立食形式の懇親会は考えられない」との感想があり,習慣の差を認識した次第である.
写真3:昼食会の様子. |
9月16日には大阪府立大学特別会議室にて昼食会を開催した(写真3).参加者は大韓地質学会一行3名と日本地質学会10名(石渡会長,ウォリス副会長,井龍・高木執行理事,江川会員に加え,木村 学元会長,渡部芳夫副会長,斎藤 眞・坂口有人・西 弘嗣執行理事)の13名であった.会食は終始和やかな雰囲気で進行し,親善を深めるという目的を果たすことができた.この会食中に,学術大会の開催された堺の名産品である刃物(鋏)のセットを記念品として贈呈した.また韓国地質学会からは「Geology of Korea」(「Geology of Korea」(韓国語)B5版 802ページ 上質製本 ISBN/89-85922-89-0)を寄贈いただいた(写真4).
写真4:寄贈本「Geology of Korea」 |
同日午後には,Cho副会長が国際ワークショップ「Geologyof Japan」で,“U-Pb ages of detrital zircons from Korean fold-thrust belts: Implications for the Pre-Mesozoic linkage between Japan and Korea”というタイトルで講演をされた.講演後には質疑応答がなされ,東アジアの地体構造が活発に議論された(ワークショップの詳細については,大阪大会報告記事; 本号p. 10を参照).
以上,大韓地質学会一行の参加行事を時系列で紹介した.今回の来日が,日韓地質学会交流のさらなる発展の一助となれば幸甚である.
なお,2013年9月下旬に仙台で開催される日本地質学会第120年学術大会(仙台大会)では,石渡会長が環太平洋造山帯に関する国際シンポジウムを開催する予定で,韓国の研究者の招聘も計画されている.
日韓地質学会学術交流協定(全文)
Agreement for Academic Cooperation and Exchange between The Geological Society of Japan and The Geological Society of Korea
Article 1. This Agreement defines the principles and methods of cooperation that the Geological Society of Japan and the Geological Society of Korea wish to develop between them under equal partnership.
Article 2. The Geological Society of Japan and the Geological Society of Korea agree to promote academic cooperation between both societies through the following means:
(1)Mutual invitations to participate in scientific seminars, regular meetings and field trips
(2)Joint organization of seminars and academic meetings
(3)Joint or collaborative research activities and publications
(4)Exchange of academic materials and other information
(5)Promoting other academic cooperation as mutually agreed
Article 3. Both Societies agree to carry out the above activities in accordance with the laws and regulations of the respective countries after full consultation and approval of both Societies. It is understood that implementation of any of the types of cooperation stated in article 2 may be restricted depending upon the availability of resources and financial support. The execution of this agreement will not cause any financial obligations to either Society.
Article 4. This Agreement is valid for a period of five years from the date of signing by the representatives of both Societies. This Agreement shall be renewed after being reviewed and renegotiated by both Societies.
Article 5. This Agreement shall be executed in English.
日韓地質学会学術交流協定(PDF)