日韓地質学会学術交流協定調印式 レポート

日韓地質学会学術交流協定調印式に参加して

 

文・写真:高木秀雄(日韓交流小委員会 委員長)

 

2007年10月25日に韓国江原道春川の江原国立大学で開催された韓国地質学会の総会で,日韓地質学会の学術協定の調印式が開催され,木村 学 日本地質学会会長と,Choi, Suk-Won 韓国地質学会会長との間で,協定書 (agreement) が取り交わされた(写真 1).今回の調印は,IODPの韓国代表の Lee,Young-Joo博士(KIGAM:韓国地質資源研究所)と木村会長の間で発案されたものが結実したものである.調印に先立ち,10月に日本地質学会の国際交流委員会の小委員会として日韓交流小委員会が急遽設立された.そのメンバーは大藤 茂氏,高橋 浩氏,久田健一郎氏および高木から構成され,また院生の意見を反映させるために,ソウル大学博士課程留学中の江川浩輔さんを加えることになった.高木は今回小委員会の委員長として,すでに国際交流委員会の公文富士夫委員長と韓国側の協定の文案をとりまとめ(下記),日本地質学会から派遣された次第である.
 

調印式では,Kee, Weon-Seo博士(KIGAM)の司会のもと厳かにとり行われ,盛大な拍手で会場は沸いた.引き続いて木村会長の日本地質学会の紹介の発表が30分ほどなされた.調印式に先立ち,今回我々を会場で案内いただいた江原大学の Cheon, Daekyo教授(韓国地質学会誌編集委員長)とともに今後の具体案を話し合った.そこでは,無理をせずに,できることを着実に進めることを確認した.たとえば両国の地質学会の年会で,何らかの合同シンポジウムを設けること,合同巡検の開催,などが話し合われ,現在来年の秋田大会で日本海の掘削やテクトニクス,環境関連のシンポジウムができないかどうか,検討をはじめるところである.さらに韓国の地質などを日本の地質学雑誌の口絵に投稿してもらうように,進めたいと話した.Cheon 教授からは,韓国地質学会のHPに早速そのことを宣伝しましょうと,また,韓国でも韓日交流小委員会を立ち上げるよう働きかける,と帰国後に連絡いただいた。
 

調印式の直後に,次期韓国地質学会の会長選挙が行われ,3名の候補者のなかから,忠南大学のLee, Hyun Koo 教授が選ばれた.Lee教授は早稲田大学で学ばれたことがあり,新潟大学などのグループの韓国巡検の世話をされたこともある鉱床学者であるので,今後の日韓交流のための追い風となることであろう(写真2).
  

 
写真1;左)日韓地質学会長の協定書交換.写真2;右)次期韓国地質学会会長 李 鉉具教授と.
 

Agreement for Academic Cooperation and Exchange
between
The Geological Society of Japan
and
The Geological Society of Korea

Article 1.  This Agreement defines the principles and methods of cooperation that the Geological Society of Japan  and the Geological Society of Korea wish to develop between them under equal partnership.
Article 2.  The Geological Society of Japan and the Geological Society of Korea  agree to promote academic cooperation between both societies through the following means:
(1)Mutual invitations to participate in scientific seminars, regular meetings and field trips
(2)Joint organization of seminars and academic meetings
(3)Joint or collaborative research activities and publications
(4)Exchange of academic materials and other information
(5)Promoting other academic cooperation as mutually agreed
Article 3.  Both Societies agree to carry out  the above activities in accordance with the laws and regulations of the respective countries after full consultation and approval of both Societies.  It is understood that implementation of any of the types of cooperation stated in article 2 may be restricted depending upon the availability of resources and financial support. The execution of this agreement will not cause any financial obligations to either Society.
Article 4.   This Agreement is valid for a period of five years from the date of signing by the representatives of both Societies. This Agreement shall be renewed after being reviewed and renegotiated by both Societies.
Article 5.   This Agreement shall be executed in English.


 

ここで,韓国の地質学会年会の様子を簡単に紹介しよう.韓国の地質学会では春は巡検が主体となっており,今年は60周年の記念行事が行われたそうである.発表は秋に行われており,今回の春川大会では1日半の日程が組まれ,様々な分野の口頭発表とポスター発表が進行していた.江原大学は「冬のソナタ」のロケ地としても有名な春川市の南東の丘陵地に建っており,新しい建物が多く,清潔でアットホームな雰囲気の大学であった.

要旨によると,245件の発表が5つの会場と屋外のポスター会場で進められていた.口頭発表に少しだけ参加したが,Ree, Jin-Han高麗大学教授と学生さんの3件の発表では,嶋本利彦教授との摩擦実験の共同研究の成果が発表されていた.ポスターや口頭発表で示すスライドの半分程度は英語でプレゼンがなされており,韓国の大学では1年生のときから英文の洋書を読んでいることが反映されている,と江川さんから聞いた.要旨も27%が英文で書かれていた.また,要旨集は大変立派な製本であり,10件の企業広告がカラーで印刷されていたが,それらの広告は必ずしも地質関係だけではない(真露の広告もあった).会場や市内の各地には地質学会の横断幕が張り巡らされており,地質関連企業からのお祝いの献花が飾られていた(写真3).このような献花は60周年ということに限ったことではないそうである.一方,会場における企業のブースはDaewoo社の1件だけであった.夜の懇親会では,300人程度が入る大きな会場で,春川名物のタッカルビ料理でおおいに盛り上がっていた(写真2).



 
写真3;左)地質学会会場.横断幕が至る所でみられる.写真4;右)野天のポスター会場(夜に降雨があったが).
 

最後に,韓国とつながりのある地質学会員の方には,ぜひ日韓交流小委員会に加わっていただき,様々な立場,分野からご意見を賜りたいと存じます。基本的にはメールで意見交換するだけです。高木までお申し出いただければ助かります。