著者プロフィール欄の新設

『地質学雑誌投稿編集出版規則』(2014.12.6 改正)はこちら
地質学雑誌編集委員会

 2014年12月6日の理事会において,当委員会が提出した『地質学雑誌投稿編集出版規則』の改正案が承認され,地質学雑誌は2015年第1号から掲載論文の末尾に著者プロフィール欄を設けることになりました.ここで,本改正について説明させていただきます.まずは,改正の背景です.

 地質学を専攻する学生にとって1970年代頃までは,もっぱら学ぶことが岩石学・鉱物学か層位学・古生物学か大雑把に2つの選択しかなく,いずれにしても国内のフィールドで研究することが普通でした.今日から見て,かつての地質学会は,比較的均質性の高い集団でした.会員諸氏にとって地質学雑誌の権威は高いものでしたが,多くの掲載論文は理解が可能であり,各自のフィールドとの関連で,なにがしかの興味を持って記事を眺めることができました.しかしその後,地質学でも専門分化・高度化が進行しました.それに応じて地質学雑誌も多様なテーマを扱うようになり,多くの会員にとって内容が理解しにくく興味を持ちにくい論文が多くなってしまいました.年会における口頭発表でも事情は同じです.その結果,会員間の交流の範囲が狭まっているのではないでしょうか.今や地質学会は不均一な集団であると考えます.

 さて,こうした現状認識のもとで,地質学界の総合誌である地質学雑誌はどうあるべきでしょうか.地域地質を母国語で記載した論文を載せることは,地質学雑誌にとって変わることのない重要な役割ですが,そのような論文は減っています.上記の状況を考えると,会員間の学術交流を活性化することが重要です.すなわち,総説やノートを通じて他の会員の研究成果を理解できるようにすることはもちろんですが,理解とまでは行かずとも会員諸氏の活躍の様子をより可視的にすることが,地域地質の記載とならんで,今後は本誌の重要な役割であると考えます.そのため,当委員会でできる措置として,著者プロフィール欄を新設することにしたわけです.

 著者プロフィール欄には,著者の皆さんの顔写真・氏名・現職・略歴・研究内容・当該論文での役割・E-mailアドレス・URLを記していただきます.会員間で文字通り顔の見える関係を築くきっかけとして,この欄を使っていただければ幸いです.
著者プロフィール欄にはいくつもの利点があります.学生諸氏にとって,著者の略歴はキャリアパスを考える手がかりになるでしょう.活躍する姿がこれまで以上に可視的になることによって,著者自身にはポストや研究資金を得る手がかりになるでしょう.さらにまた,地質教室や企業などの組織にとっては,新人を獲得するための情報源になるでしょうし,構成員の活躍を見せることで,新人を獲得するための宣伝の場として利用していただくこともできるでしょう.また,当該論文における各著者の役割を明記していただくことで,2番目以降の著者の寄与の重要性が読者に伝わることでしょう.当委員会としては,この欄の新設で投稿が増えることを期待しています.

 最後に,著者プロフィール欄にかんする規定の細かいところをご説明します.この欄では,各著者につき文字数を最大250に制限しています(スペースを含まない文字数).著者多数の場合は,5名までとします.その結果,この欄は2段組の紙面のうち最大で片段に満たないスペースを占めることになります.代表著者のみプロフィールを記すという選択も可能です.最近の規則改正により,論文1編あたりのページ制限を若干緩和したので,この欄を新設しても新たな制限緩和はしません.スペースが小さいため,口絵だけは著者プロフィール欄を付けないことにします.

この欄に記すことは個人情報ですので,でどれだけのことを公にするか,編集委員会としては著者の選択を尊重します.著者の希望によっては,この欄を付けないことを当委員会は認めます.また,複数著者による論文では,著者ごとに記述する項目が異なることもあるでしょう.また,最近,国際誌では論文を完成させるにあたっての各著者の寄与を書くことが,求められるようになってきています.当委員会で議論した結果,本誌では当面,それを受理のための条件とはしないことにしました.しかし,著者のご判断によって,当該論文での役割を著者プロフィールに記していただいてかまいません.次の例は,全項目を記した例です.

地質花子■〇〇大学大学院〇〇学研究科〇〇学専攻助教.05年␣〇〇大学〇〇学部卒,10年␣〇〇大学大学院〇〇学研究科博士後期課程修了(〇〇学博 士),10年␣学術振興会特別研究員,12年␣〇〇研究所研究員,14␣年から現職.研究内容:〇〇地域の層序および地学教育,特に〇〇による〇〇の解 明.本研究では,地質調査・総括・原稿執筆・編集委員会との対応を担当.E-mail: xxx@xxx.xxx.ac.jp,URL: www.xxx.ac.jp/xxx/xxx.html.

ここで記号■は全角スペース,␣は半角スペースを表します.次の例は,記載項目が少なくて顔写真もない例です.

地質花子■研究内容:〇〇地域の層序および地学教育,特に〇〇による〇〇の解明

論文の第1ページに著者名・所属が記されているので,氏名だけでは著者プロフィールとして成立しません.したがって,それだけの著者プロフィールは認めません.ただし,氏名と顔写真なら認めます.

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