Island Arc 日本語要旨 2007. vol. 16 Issue 4 (December)


1. (Pictorial)
Large-scale chaotically mixed sedimentary body within the Late Pliocene to Pleistocene Chikura Group, Central Japan
Yuzuru Yamamoto,Yujiro Ogawa, Takayuki Uchino, Satoru Muraoka and Tae Chiba

 

千倉層群(鮮新統上部ー更新統)に見られる大規模乱堆積物
山本由弦, 小川勇二郎, 内野隆之, 村岡 諭, 千葉 妙

2.Plate-Plume-accretion tectonics in Proterozoic terrain of northeastern Rajasthan, India: evidences from mafic volcanic rocks of North Delhi Fold Belt.
Mahshar Raza, Mohd Shamim Khan and Mohd Safdare Azam

インド,北東ラジャスタンの原生代テレーンにおけるプレート-プルーム-付加テクトニクス:北デリー褶曲帯の苦鉄質火山岩からの証拠
インド楯状地北西部のAravalli山脈の北部は,北デリー褶曲帯を構成するお およそ3つの原生代の火山-堆積区すなわちBayana,Alwar,Khetri盆地からなる.これら3盆地の苦鉄質火山岩の主要元素,微量元素及び希土類元素は顕著なばらつきを示す.BayanaとAlwar火山岩は典型的ソレアイトで低Tiの大陸洪水玄武岩(CFB)と類似するが,前者は富化,後者は平坦な不適合希元素・希土類パターンを示すという相違がある.Khetri火山岩はソレアイトとカルクアルカリ玄武岩の漸移的組成を示す.BayanaとAlwarソレアイトのメルトは,おそらくマントルプルームの存在下でスピネルの安定領域において共通の起源物質の部分溶融により生じた.地表への上昇の間にBayanaソレアイトは地殻との混合を被ったがAlwarソレアイトは影響されずに噴出した.地球化学的にはKhetri火山岩は原生代の沈み込み帯の上側のマントルで生成した島弧的玄武岩である.約1,800Maに北東ラジャスタンの大陸リソスフェアは上昇するプルームにより引き延ばされ薄化し断裂された.そして生じたリフトは種々の程度の地殻の伸張を被った.地殻の伸張と薄化は,種々の程度に溶融してソレアイトメルトを生成したアセノスフェアの浅化を促進し,リフト盆地毎に異なる地殻の厚さに応じて異なる程度のリソスフェアの混合を生じた.Khetri帯の沈み込みに伴う玄武岩の存在は,クラトン西縁の盆地が成熟した海洋盆地へと発展したことを示す.

Key words : Aravalli, geochemistry, Indian shield, plume-tectonics, Proterozoic volcanism, Rajasthan

3. Pseudosection analysis for talc-Na pyroxene-bearing piemontite-quartz schist in the Sanbagawa belt, Japan
Taro Ubukawa, Akiko Hatanaka,Keisaku Matsumoto and Takao Hirajima

三波川変成帯のタルクーアルカリ輝石組み合わせを持つ紅簾石石英片岩に対するシュードセクション解析
鵜生川太郎, 畑中晶子, 松本啓作, 平島崇男

三波川変成帯四国高越地域の紅簾石石英片岩中にタルクの多様な出現様式を確認した.タルクは(A)基質に発達するもの,(B)プルアパート部に発達するものに分けられる.Aタイプのタルクは,エクロジャイトユニットではアルカリ輝石や藍閃石,ザクロ石帯ではアルバイトや緑泥石と共に片理を構成する.Bタイプのタルクはアルカリ角閃石のマイクロブーディン構造プルアパート部にアルバイト・緑泥石とともに発達する.NCKFe3+MASH系における岩石成因論的グリッド,シュードセクション法を用い,観察された鉱物の組成や組み合わせから岩石が経験した変成温度圧力を解析した.その結果,タルクーアルカリ輝石—フェンジャイト組み合わせは約560-580℃,18-20kbarで安定であり,プルアパート部に発達するタルクは約565-580℃,9.5-10.5kbarでアルカリ角閃石消費反応により形成されたことがわかった.エクロジャイトユニットの紅簾石石英片岩は地下約50-60kmで高圧変成作用を受けたのち,ほぼ等温状態で地下30kmの深さまで上昇したと考えられる.

Key words: eclogite facies, Kotsu area, piemontite-quartz schist, pseudosection, Sanbagawa
Belt, talc-phengite-aegirineaugite assemblage.



4. Eclogites from the Chinese continental scientific drilling borehole, their petrology and different P-T evolutions
Yong-Feng Zhu, H.-J. Massonne and T. Theye


中国大陸科学掘削孔から得られたエクロジャイト:それらの岩石学と様々な温度圧力経路
中国東部の蘇魯超高圧変成帯における中国大陸科学掘削(CCSD)孔の異なる深度から採集された4つのフェンジャイト含有エクロジャイトについて,電子線マイクロプローブを用いて研究した.ざくろ石とオンファス輝石の組成累帯構造は中程度であるが,フェンジャイトの組成は一般に1つの標本中でも変化に富み,コアからリムへSi量が減少する.これらの鉱物の化学組成変化に基づき,いろいろな地質温度圧力計を応用して温度圧力条件を絞り込んだ.標本B218の温度圧力経路は3.0 GPa(約600℃)から1.3 GPa(約550℃)への減圧で特徴づけられる.B310のエクロジャイトは3.0 GPa,750℃の条件を示す.B1008のエクロジャイトは650℃,3.6-3.9 GPaの条件(ステージI)から出発し,2.8-3.0 GPaまで減圧されて温度が750-810℃へ上昇した(ステージIIとIIIa).その後この岩石は高圧(2.5-2.7GPa)を保ったまま620-660℃まで冷却された(ステージIIIb).後退変成作用の条件は大体670℃,1.3 GPaである(ステージIV).B1039のエクロジャイトは約600℃,3.3-3.9 GPaの条件(ステージI)から出発し,3.0 GPa, 590-610℃への減圧(ステージII),そして630℃への中程度の等圧温度上昇(ステージIII)という温度圧力経路を示す.ステージIVは650℃,1.3 GPaの条件で特徴づけられ,このステージの最中あるいは後に(水に富み)部分的にカリウムに富む流体が岩石中に浸透し若干の変化を引き起こした.この流体の比較的高い酸素フガシティーにより,新しく形成された鉱物にはアンドラダイトと磁鉄鉱が含まれる.我々は以上の発見が「沈み込み流路」を通じた物質の流れによって最もよく説明できると考える.以上から我々はCCSD地点におけるエクロジャイト,石英長石質岩,及びかんらん岩などの超高圧変成岩の組合せが,超高圧条件下で始めから一体となっていた1つの地殻の断片を代表しているという,従来から広く信じられている考えは不可能であると結論する.これらの超高圧岩石が一体となったのは上昇過程のかなり後期である.

Key words: CCSD, eclogite, kyanite, phengite, subduction channel, Su-Lu UHP terrane


5. Protolith natures and U-Pb SHRIMP zircon ages of the metabasites in Hainan Island: implications for the geodynamic evolution of South China since late Precambrian
De-Ru Xu, Bin Xia, Peng-Chun Li, Guang-Hao Chen, Ci Ma  AND Yu-Quan Zhang


中国南部海南島の変苦鉄質岩の原岩特性とSHRIMPジルコン年代:先カンブリア時代後期以降の変動
中国南部海南島の古生代火山砕屑性堆積岩に含まれる変苦鉄質岩の原岩特性と,SHRIMPおよびCLを用いたジルコン年代の解析を行った.島の東〜中部のTunchang地域はハンレイ岩質岩,ハンレイ岩〜輝緑岩質岩および枕状溶岩を原岩とする変苦鉄質岩が産出し,これらは化学組成から海洋性島弧での火成作用起源である.ジルコン年代は442-514 Maの火成活動年代,2488 Maのinherited年代,1450 Maの火成活動年代の3つの異なるステージを示す.一方北西部のBangxi地域はゲンブ岩質,ハンレイ岩質,ピクライト質岩を起源とする背弧海盆的な特徴を示す変苦鉄質岩からなり,269 Maの火成活動年代を示す.以上の結果から,Tunchang地域の原岩結晶化年代は約450 Ma以前であり,数多くのinherited年代が得られたことから,この岩石の原岩は大陸地殻近傍で組成的にNMORBに類似したマントルに由来するであろう.一方Bangxi地域の原岩形成年代は約270 Maであるが,これは大陸地殻上の背弧海盆の拡大とその後の小規模な海盆の形成年代を記録していると考えられる.約450 Maの年代を示すオフィオライト的な岩石が海南島だけでなく揚子地塊からも確認されていることから,南中国地塊におけるカレドニア造山運動は大陸内の活動ではなく,海洋物質の関与があったものと考えられる.ここでは海南島がカンブリア紀までカタイシア地塊の一部であったとして,先カンブリア時代後期以降の南中国地塊の変動モデルを提唱する.このモデルで強調していることは,Nanhuaトラフあるいは揚子地塊とカタイシア地塊の間にあった古南中国海(Paleo-South China ocean)の残骸のさらなる拡大がオルドビス紀中期〜後期の海洋性島弧を形成したこと,そして後者の沈み込みがほぼ同時期の低速での海洋底拡大を伴うであろうことである.その後,石炭紀前期〜ペルム紀前期における古テチス海の沈み込みにより,小規模な海盆が南中国地塊の南端に形成されたと考えられる.

Key words: Gondwana, Hainan Island, intraoceanic subduction, metabasite, Paleo-Tethys,SHRIMP U-Pb dating on zircon, South China.


6. CHIME monazite ages of metasediments from the Altai orogen in northwestern China: Devonian and Permian ages of metamorphism and their significance
Changqing Zheng, Takenori Kato, Masaki Enami and Xuechun Xu

中国北西部アルタイ地域の変成岩中のCHIMEモナザイト年代:デボン紀及びペルム紀の年代とその意義

鄭 常青, 加藤丈典, 榎並正樹, 徐 学純

中国北西部のアルタイ地域に産する緑色片岩相─角閃岩相の変成岩中のモナザイトCHIME年代を測定した.モナザイトCHIME年代より,本地域はペルム紀(261-268Ma)の中・西部とデボン紀(377-382Ma)の東部の2つのユニットに分けられることが明らかになった.デボン紀のCHIME年代は,これまでに報告された東部ユニットの花崗岩類の鉛-鉛同位体年代と一致し,花崗岩類の定置はsyntectonicであると考えられていることと調和的である.中・西部ユニットのペルム紀のCHIME年代とこれまで報告されている火成岩の年代から,地殻物質と海洋プレートの沈み込と急速な上昇又は削剥が示唆される

Key words: Altai orogen, Central Asian Orogenic Belt, CHIME dating, medium pressure–temperature, metamorphism, monazite.