韓半島南東部には二つのグループの第四紀の断層が知られている.第1のグループはNEE走向の高角右水平ずれ断層であるが,第2のグループはNEE走向の低角逆断層である.後者は,既存の正断層が再活動したものである.第四紀の堆積物の光励起ルミネッセンス(OSL)年代測定法によると,それを切る逆断層が,3万2千年以降も活動したことを示す.これらの断層は,北東アジアにおける現在の地震活動を考慮すると,現在の応力場で再び動きうると考えられ,韓半島南東部は地震学的には安定であるという考えは再考すべきである.
チベット高原の北西縁に位置するクンルン地域は,南北の2つのブロックに区分される.北ブロックはタリムクラトンの一部をなすことが知られているが,南ブロックについてはその地質学的特性や成因についてよく解っていない.本論文では,南クンルンブロックの主要構成岩石である花崗岩類(471〜214Ma)について,Sr-Nd-O同位体組成を決定し,これらの花崗岩類の形成にはマントル由来のマグマが重要な役割を果たしていたことが明らかになった.これらの試料について1.1-1.5GaのNdモデル年代が得られ,これは本ブロック中の変成岩類に対する年代とほぼ一致するが,北クンルンブロック中の基盤岩類のそれ(2.8Ga)とは有意に異なる.従って,南クンルンブロックには太古代地殻は存在しないと考えられる.そうであるならば,南北両ブロックは最初は同一のブロックであったものが後に分裂・再衝突したとする「マイクロコンティネントモデル」は成り立たないことになる.
中国地方における後期新生代の火山活動史について,新たに得られた108のK-Ar年代と,既存の年代データをもとに議論する.およそ26Mysにわたる島弧の火成活動史は,日本海背弧盆の拡大と,フィリピン海プレートの沈み込み再生のテクトニックイベントを含んでいる.中国地域の火山活動は,日本海リフティングに伴っておよそ26Maに背弧域から始まり,20-12Maには前弧方向へと拡張しアルカリ玄武岩の活動が卓越した.この第三紀火山弧は4Maまで活動が続き,4-3Maの不活発期を境に,背弧側へと再び縮小を開始した.1.7Ma以降はアダカイト質デイサイトの活動が,火山フロント沿いに起こった.背弧域から拡張期の活動は,日本海形成に関与したマントルアセノスフェアの上昇に関連しており,第四紀以降の活動域の縮退とアダカイトの活動は,再生したフィリピン海プレートの沈み込みによるマントルの温度低下とスラブ融解に関連していると見られる.
広範囲に堆積した1枚のテフラは瞬間的な地球磁場方位を記録していることから,地磁気経年変化を考慮せずに地域間の磁化方位の比較に使える可能性がある.本論文では,近畿地方から房総半島にかけて分布する約1.8Maの広域テフラの恵比須峠-福田テフラに注目し,第四紀の中央日本における相対的な回転運動の有無を検討した.残留磁化方位を比較すると,大阪・京都,三重,新潟地域に分布する福田火山灰層の方位はほぼ等しく,偏角が約-170°であったのに対し,岐阜県高山地域の恵比須峠火砕堆積物の偏角は約-155°であった.このことから,高山地域と大阪・京都地域の間で,第四紀に有意な回転運動が起こっていたことが示唆される.
北部フォッサマグナ北西部に位置する西頸城山地からその沖合の直江津沖堆積盆地に発達する褶曲構造を,断層関連褶曲の考え方を用いて解析し,深部構造モデルを提案した。それぞれの背斜構造の断面形態とgrowth strataの形状から,一連の褶曲群がfault-bend foldとfault-propagation foldとに区分され,全体として3枚のスラストシートからなると考えた.また,バランス断面法に基づいて,スラストは地下十数kmの上部地殻と下部地殻の境界付近まで達すると推定した。さらに,北部フォッサマグナの褶曲構造もいくつかのスラストシート上に形成されている可能性を指摘した。