北部フォッサマグナの信濃川地震帯は,ユーラシアプレートとオホーツクプレートの境界の信濃川に沿って発達する.圧力を受けた熱水システムが,北部フォッサマグナに広域に発達する.多くの破壊地震がこのシステムに関連して発生する.このシステムは深い所から活断層に沿って上昇して地震を引き起こし,流体の通路を広げる.温度,電気伝導度,Cl-の濃集が,北東方向に直線的に分布して,破壊地震の震源域である信濃川地震帯を特徴づける埋没した活断層を示している.地下水の温度異常帯は地震のマグニチュードの分布と密接に関連している.これは地震断層の大きさを示している.圧力を受けた熱水システムに由来するこの直線的異常帯で,歴史的な破壊地震がない場合は,近い将来大きな地震が起こりそうであることを意味する.信濃川地震帯での活断層上に,4箇所の地震の起こりうる地域について,議論した.
キーワード:フォッサマグナ,信濃川地震帯,圧力を受けた熱水システム,水の化学,活断層,起こりうる地震の場所
南部ヘフェイ盆地のジュラ紀の砂岩の鉱物組成と主元素組成から,それらはダビー山地に由来することが分かった.それは大陸性島弧複合岩体に帰せられる.下部から中部ジュラ系では,リサイクルの造山帯または複合した起源から,上部ジュラ系の島弧性造山帯(Zhougongshan 層)へ変化している.ダビー造山帯では,ジュラ紀後期に侵食のため次第に削剥された島弧が露出した.それは,特にFenghuangtai期の後に顕著になった.さらに,島弧はもともと前期古生代からトリアス紀には,存在していたことが,すでに公表されている同位体年代データによって分かっている.ダビー地塊の色々な地層の大理石とFenghuangtai層の大理石礫からの炭素・酸素同位体比率から,それらの源岩はダビー山地からすべて盆地にもたらされたものであることが分かった.堆積盆地での著層の積み重なりからは,ジュラ紀には,引張りではなく圧縮場であったことも分かった.それらは,逆級化層を作り,北方へ沈み込む揚子江プレートに影響を受けた堆積物である.さらに,後期中生界における広域的上昇削剥過程に関しても議論した.
キーワード:中生界,砂岩の供給源,堆積層序,ダビー山地,ヘフェイ盆地.
北海道中央部の日高衝突帯西縁に形成された前縁堆積盆は,中部(〜上部)中新統のタービダイト堆積物により埋積されている.夕張山地に分布する川端層のモンゾ花こう岩礫8試料の黒雲母K-Ar年代は44.4〜45.4 Maで、花こう閃緑岩1試料の年代は42.8 Maである.花こう岩礫の主成分全岩化学組成によれば,全ての試料がSタイプの過アルミナ質花こう岩(アルミナ飽和度:1.12〜1.19)である.上記の年代学的・岩石学的特徴は,川端層花こう岩礫と日高帯北東部に分布する始新世花こう岩体,とくに欝(うっつ)岳岩体(43 Ma)や紋別岩体(42 Ma)との類縁関係を示す.前縁堆積盆は,厚化する衝上断層帯前面でのリソスフェアの押し曲げによる沈降域である.本論の結果は中期中新世のタービダイトの堆積が,日高帯における急激な西方への衝上運動とその削剥に同期しており,この初期の山脈形成が北海道中央部における第三紀の褶曲−衝上断層システムの衝上運動によるものであることを示唆する.
キーワード:黒雲母KミAr年代,花こう岩礫,中新統川端層,前縁堆積盆,日高帯,北海道
岩石変質と安定同位体地化学にもとづく根拠フィリッピンレイテのトノガン地熱地帯において,岩石変質と安定同位体地化学に基づく主要断層の影響を評価した.フィリッピンにおいては,鉄に富みカルシウムに乏しい酸性変質が特徴的に剪断帯に沿って生じている.後に生じたナトリウム交代作用は,上部Mahiao系の貯留層からもたらされたマグマ起源の塩水の分離により,10000mg/kgに達する高塩素濃度下のものである.低角度の剪断帯からマグマ起源水が導入された結果,天水の活発な対流が発生し,これは貯留槽層からSiとKを溶出した.同時に,高温下での酸素同位体交換が直ちに生じ,これは現在も剪断された低変質岩において小規模に引き続いている.これらの低変質剪断岩は年2cmのクリープにより地熱水を供給している.この地熱水は,300℃以下の低温の天水と混合する事によりδDはほぼ一定(-35‰±5‰)でδ18Oだけが6‰程度シフトする.δDの10‰程度の変動幅は,雨水による地下水涵養(5‰)と塩水の沸騰による濃集(5‰)で説明できる範囲である.湧水と岩石化学組成をもとに岩石水比を1500と仮定すると,毎秒50リットルの流量のもとでは 30立方kmの貯留層は,およそ300万年の地熱システムを構成してきたことになる.
キーワード:Tongonan, Leyte, 地熱,安定同位体,岩石変質地球化学,フィリッピン断層
オケヒョン変成帯(OMB)の発達史は,韓半島,中国,日本列島のテクトニクスを考察する上で重要な束縛条件を与える.OMBに産する砂質岩150試料について得られた化学的特徴に基づけば,堆積深度が北方へ向かって大きくなったことが示唆される.これらの結果と,酸化物鉱物の分布,炭素鉱物の総量を考慮すると,OBMの形成はハーフグラーベンで起こった可能性が高い.OBM全体として102-277Maを示す雲母に対するK-Ar年代は,142- 192Ma(ジュラ紀)の年代がほぼ全域から得られるのに対して,216-277Maの古い年代が変成帯中央部の中位層を構成する変成堆積物に,白亜紀の年代は白亜紀花崗岩の貫入を受けた地域にのみ特徴的に認められる.これらの年代と変形構造を考慮に入れると,OMB ではジュラ紀および白亜紀(102-192Ma)の花崗岩活動の熱的影響が強く認められる(少なくとも一部は角閃岩相の変成作用を受けている)ものの, 216-277Maの年代は,後退変成作用時の冷却年代を示していると考えられる.これらのことは,雲母に対するAr-Ar年代測定,ジルコンに対するU -Pb年代測定結果とも調和的である.
UMBの変成テクトニクス発達史は次のようにまとめることができる:(1)OBMの成り立ちは後期原生代のロディニア分裂に伴う大陸内リフトの形成で始まり,これは南シナブロックのフンナンオラコーゲンの延長と見なすことができる.(2)リフト内の堆積作用はオルドビス紀まで続いた.(3)南北シナブロックの衝突によって引き起こされた圧縮応力場のもとで,中圧中温変成作用が後期古生代に起こった.(4)前期〜中期ジュラ紀に起こった,イザナギプレートのアジア大陸に対する沈み込みによって花崗岩マグマの活動が起こり,低圧高温変成作用が起こった.
キーワード:Okcheon 変成帯、プレート内リフト、M1中圧中温変成作用、M2低圧高温広域熱変成作用、炭質物d002値(002は下付です)