2019年度名誉会員

 

小玉喜三郎会員(1942年8月25日生まれ,76歳)

小玉喜三郎会員は,1969年通商産業省工業技術院地質調査所燃料部石油課に入所後,神奈川県城ヶ島の海食台に露出する中新世の三崎累層中の小断層の詳細な解析を行い,断層の活動時代の分類とそれぞれの断層の特徴を明らかにして,それを形成した応力場の復元に成功した.この研究により,日本地質学会研究奨励金(現在の研究奨励賞)を受賞し,この成果はその後の地質調査結果を加えて,5万分の1地質図幅「三崎」として公表された.さらに,堆積作用と構造運動を一体化させた地質モデルを構築し,箱形褶曲による盆地形成シミュレーションを用いて,天然ガスを含む房総半島や東京湾周辺に分布する上総層群堆積盆の解析を実施した.このことは,資源ポテンシャル評価のために論理的な解析が重要であることを示したものといえる.
1989年以降は地質調査所の管理職を歴任し,研究所の研究企画,予算配分,実施体制の整備,研究所経営の根幹をなす方針策定などの重要な職務を務めた.1997年には地質調査所の所長に就任し,国から示された通商産業省所管の研究所の統合,独立行政法人化の方針に沿って,法人化に向けた検討を主導した.そして産業技術総合研究所という新たな総合研究所のもとで社会的要請に応えるとともに,地質情報整備と国民へのサービスの体制を向上させるための基本設計を行った.法人化への改革にあたっては,産業技術総合研究所での地質関連研究部門の設置と共に,地質調査所の研究資産継承の一元的窓口としての地質調査総合センター(Geological Survey of Japan )の設置に尽力した.
これらの経済産業行政にかかわる多大な貢献により,2013年には瑞宝中綬章を受章した.
2007年から3年間,国際連合の国際惑星地球年に対応する日本の推進団体の会長として,地質科学の社会的重要性を国内外にアピールするとともに,アウトリーチ活動を重要視し,日本におけるジオパークや地学オリンピックの活動が開始されることを支援した.
日本地質学会の活動においては,1988年から1997年の10年間5期連続で評議員を務め,このうち1988,1989,1990,1992,1993,1994及び1996年の7期の長きにわたり,第二庶務委員長をはじめとする執行委員を歴任して,学会運営に多大な貢献をした.
2016年には会員を50年続けたことにより永年会員顕彰を受け,日本地質学会創立125周年にあたる2018年には,地質学の社会的認知拡大に貢献したことにより,日本地質学会125周年記念特別表彰に輝いた.
以上のように,小玉喜三郎会員は学術研究のみならず,研究行政においても日本の地質学の発展に多大な功績を残しており,あわせて日本地地質学会の運営についても多大な貢献を行った.これらの功績や貢献の内容は,日本地質学会の名誉会員として相応しいものであると判断してここに推薦するものである.