鉱床学は面白い,資源の偏在性には意味がある!そしてたくさんの人達に恵まれてきたことに深謝

2018年度日本地質学会柵山雅則賞

野崎達生(海洋研究開発機構 海底資源研究開発センター)  
 

本研究に至るまで
 本日はこのような名誉ある賞を頂けましたことを大変光栄に存じます.後ほどお世話になった皆様への謝辞を述べさせて頂きますが,研究活動において自分1人でできることは本当に小さく,たくさんの共同研究者に恵まれてきたおかげで頂くことができた賞であると思っております.心より御礼申し上げます.
さて,本受賞のお知らせを日本地質学会事務局から頂いた時,私はIODP Exp. 376航海のためJoides Resolution号に乗船しておりました.乗船研究者の中にサザンプトン大学のStephen Roberts教授が居ましたが,彼と雑談をしている時に『君はMasanori Sakuyamaを知っているか?彼の名前にちなんだ賞がサザンプトン大学にあるんだ』『日本の学会にも同じような賞がありますよ』という会話をした数日後に本受賞のお知らせを受け取ったので,何だか機縁を感じました.また,2か月にわたる長期航海の半ば過ぎにお知らせを受けたので,長期航海の大きな励みとなりました.改めて御礼申し上げます.
これまで,私は心からなりたいと思った職業は2つしかありませんでした.それは科学者と政治家です.なぜなら,時間はかかるかもしれませんが,どちらも或る課題に対して上流から取り組み,物事を根本的に変えられる可能性を秘めているからです.自分がなりたいと思った職業に今就けていることは,大きな幸せだと思っています.科学者に興味を持ったきっかけは,小学校の国語の授業でオゾン層破壊に関する文章を読んだことでした.そして自分なりに地球環境問題を調べた結果,地球温暖化が喫緊の課題であると気づき,それを解決する科学者になりたいと思いました.しかし,この時点では,科学者といっても白衣を着て薬品の入ったフラスコを使って,色々実験しながら時には爆発する!?といったようなイメージを漠然と抱いていました.
地球環境問題に関する勉強をしたいと思い,できたばかりの新しい学科であった東京大学工学部システム創成学科環境・エネルギーシステムコースに進学しました.卒業論文研究のテーマ紹介において,加藤泰浩助教授 (当時) が話されていたグローバル炭素循環に関する研究や海洋地殻を利用した二酸化炭素固定技術に大きな関心を抱き,卒業論文研究では加藤先生の研究室を迷わず選択し,その後博士論文まで同じ研究室でお世話になりましたが,これが地学 (地球科学) と接するきっかけとなりました.現在では,地球温暖化よりもさらに上位の問題であるエネルギー・資源問題に関心を持って研究をしています.
卒業論文研究〜修士課程にかけては,グローバル炭素循環の解明をテーマとして,特に沈み込み帯における炭素の挙動に注目して研究を行っていました.具体的には付加体中に存在する海洋地殻 (中央海嶺玄武岩) 起源の緑色岩の炭素含有量を測定し,化石年代から見積もられる海洋底での旅行時間を考慮して,沈み込み帯で岩石中から炭素が増減しているのかを追跡していました.最初は変成度の低い緑色岩,すなわち沈み込み帯浅部を対象としていましたが,沈み込み帯のより深部の岩石を研究したいと思い,三波川変成帯に分布する緑色片岩を対象としました.しかし,変成帯ではそもそも源岩の年代が決定ないことが多く,海洋底での旅行時間を求めるのが困難であることに気付きました.そこで,中央海嶺の海底熱水鉱床を起源とする別子型鉱床 (三波川帯に多数分布している) の生成年代が分かれば,その母岩である緑色片岩の噴出年代も分かると考え,Re-Os放射壊変系を用いた別子型鉱床の生成年代決定に博士課程で取り組み始めました (図1,2).

図1(クリックすると大きな画像がご覧いただけます) 図2(クリックすると大きな画像がご覧いただけます)


Re-Os同位体を用いた火山性塊状硫化物 (VMS) 鉱床の成因研究
 三波川帯に分布する別子型鉱床の年代決定には,別の狙いもありました.日本列島付加体中に分布する古海洋底で生成した鉱床の分布を眺めると (図1),別子型硫化物鉱床の多くは三波川帯に分布している一方,Fe-Mn,Mn酸化物鉱床やMn炭酸塩鉱床は,秩父帯や美濃−丹波帯などのジュラ紀付加体に多く分布しています.硫化鉱物は還元的環境で安定であるのに対し,酸化鉱物は酸化的環境で安定に存在することから,これらの鉱床の年代分布が分かれば,古海洋の酸化・還元環境変遷史を読み解けるのでは?という大きな研究テーマを加藤先生から与えられ,博士論文研究として取り組み始めました.酸化物鉱床は,研究室の先輩であった藤永公一郎博士が以前から研究されていたので,私は別子型硫化物鉱床を研究することになりました.さて,博士課程とその後の研究で,四国地方の佐多岬から和歌山県にかけての三波川帯に分布する11の別子型鉱床から良好な直線性を示すRe-Osアイソクロンを得ることができました (図2).このアイソクロンを示すと一瞬で終わってしまうのですが,すべての結果を得るために4年以上の歳月を費やしました.古い文献しか残っていない鉱床もあり,そのような鉱床の調査に際しては現地のお年寄りに聞き込み調査から行い,色々とサポートしてもらいながら鉱山跡に辿り着くような,いわばリアル版ドラゴンクエストのような調査を行いつつ,鉱石試料を集めていました.その結果,三波川帯に分布する別子型鉱床の生成年代は約150 Ma (1億5千万年前) に集中することが明らかとなりました (図2).
 この年代を元に,三波川帯に分布する別子型鉱床の生成場を考えてみたいと思います.これまでに得られている各種鉱物の放射年代や化石年代から,三波川変成作用のピーク年代 (=沈み込み帯最深部に達したタイミング) は,110 - 120 Maか90 Maと考えられています.また,三波川帯が大陸地殻に付加した年代は120 - 130 Maあるいは65 - 95 Maとされています.一方,別子型鉱床が古海洋底で生成した年代は約150 Maであるので,少なくとも20 Myr以上は海洋底を旅した後に沈み込み帯に達したと考えられます.当時のユーラシアプレートに対する太平洋プレートの相対速度は,バリエーションがあるものの約10 cm/yrと考えられるので,別子型鉱床の生成場は大陸地殻から数千km離れた『遠洋域の中央海嶺』であるといえます.しかし,硫化鉱物は現世のような酸化的環境下では酸化消失してしまうので,溶解せずに保護するシステムが必要です.その答えは,当時の地球環境にあると考えられます.
 約150 Maのジュラ紀後期は,過去3億年間において海水のSr同位体比が最も低下した時期に相当します.これは,低いSr同位体比組成を示す熱水Fluxが多かったことを意味します.したがって,当時は現在よりも火成活動が活発であったと考えられますが,グローバル炭素循環モデルによって復元された当時の大気CO2濃度は,現在の約8倍程度であったと見積もられています.このような大気CO2濃度の下では,Global Circulation Model (GCM) によるシミュレーション結果に基づくと,地球表層の気温は現在よりも5 - 10度高かったとされており,極域に氷床が発達していなかったとされています.氷床の発達しない極域では深層水の形成 (=海洋大循環の駆動力) が阻害されるため,海洋底層まで十分な酸素を行きわたらすことができず,よどんだ還元的な底層が発達していたと考えられます.これを分かりやすくまとめると (図3),現世のように寒冷で極域に氷床が発達する環境では,活発な海洋大循環により海洋底層まで酸素がいきわたる酸化的海洋が拡がっており,マンガン団塊・マンガンクラスト・レアアース泥に有利な生成環境であるといえます.一方,海底熱水鉱床は生成すると同時に一部は酸化消失していきます.ジュラ紀後期の温暖で極域に氷床が発達しない環境では,海洋大循環の駆動力が阻害され,海洋底層に還元的環境が拡がっていたと考えれます.このような環境は,酸化物鉱床の生成に不利な一方で,硫化物鉱床の生成と保存に有利な条件であるといえます.以上のような鉱床の生成・保存とグローバル環境変動のリンケージを考えるとすべてが調和的に説明できることから,我々のグループは『ジュラ紀後期海洋無酸素事変』の存在を提唱し,別子型鉱床の生成・保存に寄与したと考えました (図3).
 さらに,Re-Os同位体を用いた研究を四万十帯北帯や日立変成帯に分布する別子型鉱床にも適用し,白亜紀後期に起こった海嶺沈み込み現象と鉱化作用の解明や日本列島最古の鉱床年代値を得ることに成功しました.また,日立鉱床の研究における鉱石の記載過程において,新鉱物も見出しています.
 

図3(クリックすると大きな画像がご覧いただけます) 図4(クリックすると大きな画像がご覧いただけます)

VMS鉱床研究からの発展
 2009年4月に独立行政法人海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域 (JAMSTEC/IFREE) (当時) に就職してからは,前処理や測定に手間のかかるRe-Os同位体測定をより簡便・迅速に測定できる方法の開発に取り組みました.私が就職する半年前にJAMSTEC/IFREEにマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置 (MC-ICP-MS) が導入されたこともあり,MC-ICP-MSと気化法を組み合わせたOs同位体測定方法の開発を行いました.気化法自体は新しい手法ではありませんが,常温で気化するOsO4分子の性質を利用して,Re-Osの分離作業とOs同位体測定を一度に行ってしまうという手法です.気化法とMC-ICP-MSのマルチイオンカウンター (MIC) あるいはファラデーカップ (FC) を組み合わせて,従来よりも簡便かつ確度・精度良くOs同位体比を測定する手法を確立させました.この手法はデータの精度・確度よりもとにかくデータ数がたくさん欲しい,という研究テーマに向いており,Os同位体比組成を用いた古環境解読の研究やマンガン団塊・マンガンクラスト・レアアース泥の年代決定に最適です.また,カンラン岩のようにOs濃度の高い試料であれは,負イオン表面電離型質量分析装置 (N-TIMS) と遜色のない確度・精度で迅速Os同位体分析を行うことが可能です.これまで,マンガンクラストに成長ハイエタスは存在するのかなどに着目しながら,600個を超える様々な試料のOs同位体測定を実施してきており,一部の研究成果は論文化されています.今後,これまで測定してきた結果も徐々に論文化されていくでしょう.
 また,2009年4月にJAMSTECに就職してから現在までに17度の調査航海に参加させて頂き,VMS鉱床のモダンアナログである現世海底熱水鉱床の研究を開始できたことも大きなチャンスでした.特に,2010年9〜10月に沖縄トラフ伊平屋北海丘において行われたIODP Exp. 331航海により形成された人工熱水孔に関する研究を開始し,人工熱水孔上に急成長したチムニー試料の記載・地球化学的研究を行いました.或る人工熱水孔上では,銅−鉛−亜鉛に富むチムニーが1年間で7 m,2年間で15 mの高さに急成長していたことから,『黒鉱鉱石を養殖しよう』というアイデアのもと,一風変わった研究に着手しました (図4).ちょうどこのタイミングで,2012年4月に海底資源研究開発センターがJAMSTECの新しい研究組織として発足し,さらに2014年4月から5ヶ年にわたり戦略的創造イノベーション創造プログラム (SIP) 次世代海洋資源調査技術 (海のジパング計画) が始まったことも大きな追い風となりました.SIPでは,「海洋資源の成因の科学的研究に基づく調査海域の絞り込み手法の開発」の一部を担当し,この一環として地球深部探査船「ちきゅう」を用いて沖縄トラフで行われた3度の航海 (CK14-04航海,CK16-01航海,CK16-05航海) にすべて乗船できたことが大変な幸運でした.特に,CK16-01およびCK16-05航海では若輩ながら共同首席研究員として乗船させて頂き,大きな興奮・達成感・充実感を味わうことができる航海となりました.これらの航海において,人工熱水孔から噴出する熱水の物理パラメーターを長期モニタリングすると同時に鉱物の沈殿実験を行う装置を合わせて3基設置し,約1年後にそれらの装置を回収しました.SIP「ちきゅう」航海で行った内容の多くはまだ論文化されていませんが,今後詳細な分析・解析を進めると同時に,共同研究者とともに結果の論文化に努めるつもりです.
 
研究を繋げる線と今後の目標
 以上のようにこれまでの研究経過を眺めてくると,自分が何を専門とする研究者なのか時々分からなくなる時がありますが,現在までの研究活動を繋ぐ一貫した線は,以下の4つであると考えられます
(1) 修士課程までに培った薄片作成,XRD,XRF,ICP-QMS,EPMAなどの記載・地球化学の基礎⇒これらの基礎を最初に叩き込んで頂いたので,その後もベースを疎かにすることなく発展的な同位体研究に移ることができました.
(2) 博士課程から開始したVMS鉱床の研究とRe-Os同位体 (N-TIMS,MC-ICP-MS)⇒別子型鉱床の生成年代を知りたい,という明確な目的があったものの,Re-Os同位体という当時はまだ比較的新しかった同位体分析の基礎を博士課程で学べたことが,その後の研究の幅を広げてくれました.
(3) 異質な鉱床学≒グローバル環境変動と鉱床生成⇒環境変動と鉱床生成という正統派鉱床学とは少し異なった研究スタンスを取ることで,他の研究者と異なった視点から研究を行うことができました.
(4) 東京大学加藤研究室で培った研究スタンス・論文の書き方などの基礎⇒以上の基礎は,すべて東京大学加藤研究室在籍中に叩き込んで頂いたものであり,この基礎なしには私が今研究職としては決して生きていけなかったと思います.
 学生の時に読んで大変感銘を受けた論文があります.それは,「Holland (2005) Economic Geology, vol. 100, pp1489-1589」に掲載されている論文ですが,地球史を通じたグローバル環境変動と堆積性鉱床の成因との関連性を議論している論文です.我々が普段何気なく使っている金属資源が,地球の長い営みを通じて形成されていることに大きな知的興奮と好奇心を覚えました.将来,このような論文を書くことができる研究者になれるように邁進していく所存です.また,私が専門としている鉱床学は日本では研究者人口の減少が止まらない学問分野ですが,資源の偏在性には別子型鉱床の成因で述べたような地球科学的必然性が存在します.その必然性を解明する鉱床学は,私にとって「環境・資源・浪漫 (知的好奇心)・ヒトの役に立つ」という観点をすべて満たしてくれる学問であり,大きなやり甲斐を感じています.今後,このような面白くて楽しい鉱床学に1人でも多くの日本の研究者が携わってくれることを願ってやみません.
 
お世話になった方々への深甚の謝辞
 さて,これまで述べてきた研究成果は多くの指導者・共同研究者に恵まれてきた賜物です.特に調査航海の首席研究員を務めると実感しますが,1人の研究者ができることは本当にちっぽけで限られており,異なる専門分野を持った多くの方と共同することで,目標が達成できると思います.これまでの私の研究を支えて下さった特に8名の方々に対して,この場を借りて謝辞を申し上げたいと思います.
 まず第一番にお礼を述べたいのは,卒業論文研究〜博士課程までの指導教員であり,現在も共同研究を行っている東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授です.つい余計なことを言ってしまい舌禍癖のある私でしたが,まずはそのような生活態度から厳しく指導して頂きました.また,今でも一番印象に残っているのが,Geochimica et Cosmochimica Acta誌に論文を投稿する前の原稿作成では,土日の週末に研究室に2人で缶詰になり,原稿を一文一文声に出して読みながら,自分の英語の何が悪いのかを徹底的に指導して下さいました.このような厳しく温かい指導があったからこそ,今の自分の研究者人生があるのだと本当に感謝しております.
 次にお礼を述べたいのは,東京大学大学院工学研究科の (故) 玉木賢策教授です.玉木先生は私が修士課程の時に,玉木・加藤研究室の教授として赴任されたため直接の指導教員ではありませんでしたが,研究室のゼミなどを通じて常に温かいお言葉で励まして頂きました.玉木先生の偉大さが本当に理解できたのは,JAMSTECに就職して海外出張に行くようになってからです.特に,2013年にモーリシャス共和国に会議で訪れた際には,「君はKensaku Tamakiを知っているか?彼はGentleで偉大な研究者だった」と多くの方々に言われ,我がことのように嬉しかったのを記憶しています.
 次にお礼を述べたいのは,東京大学大学院工学研究科の中村謙太郎准教授および千葉工業大学次世代海洋資源研究センターの藤永公一郎上席研究員です.お二人は,私が卒業論文研究で加藤研究室に配属された際に,博士課程に在籍していた研究室の大先輩です.中村謙太郎さんからは,研究に対するストイックな姿勢や研究者としてどうあるべきか,について多くのことを背中から学びました.また,藤永公一郎さんには,イラストレーターやパワーポイントの使い方など研究者にとって必須のスキルを教えて頂くだけなでなく,公私にわたって困ったことがあれば相談に乗ってもらいました.お二人が研究室の先輩として在籍しており,多くの指導を仰げたのは非常に幸運でした.
 次にお礼を述べたいのは,静岡大学防災総合センターの石井輝秋客員教授です.私が東京大学加藤研究室に配属された際は,加藤先生が山口大学から異動してきた直後で研究機材が揃っていなかったため,岩石試料の切断,粉末試料の調製,薄片作成,XRD,XRF,EPMAなど,すべて当時中野にあった東京大学海洋研究所で行っていました.この時は石井先生の研究室施設を無償で使わせて頂き,種々の便宜を図って頂きました.薄片作成の際に石井先生のおっしゃった「記載のしっかりした論文は,記載を見ただけで大体の化学組成が分かる」という言葉が強く印象に残っており,それ以降記載を疎かにせずに研究をしてきたつもりです.また,中野の海洋研究所は,上記の意味では真の共同利用施設であったと思います.
 次にお礼を述べたいのは,JAMSTEC地球内部物質循環研究分野の木村純一分野長代理です.私がJAMSTECに就職する前に,実験室の立ち上げのため木村さんも島根大学からJAMSTECに異動してきていました.木村さんには付きっ切りでMC-ICP-MSの使い方を何度も説明して頂き,また気化法用の導入系なども一緒に考えて準備し,分析方法の確立に取り組みました.質量分析装置のエキスパートである木村さんとJAMSTECへの異動のタイミングが近く,一緒に分析法を確立させ,その後も多くの共同研究をできていることは本当に素晴らしい巡り合わせだったと思います.
 次にお礼を述べたいのは,九州大学大学院理学府の石橋純一郎准教授です.修士課程在籍中に退役済の「淡青丸」で過酷な海況の航海を体験し,「二度と調査船は乗らない」と決めていたのですが,石橋さんとは学会に向かう飛行機や,たまたまJAMSTECセミナーに来ていた際の食堂などで隣の席になり,「是非次の“なつしま”航海に一緒に乗船しましょう」と三度も誘って頂いたので,さすがに三顧の礼を断るのは失礼だと思い,断腸の思いで乗船を決意しました.予想に反して乗船した「なつしま」航海は快適で,また,陸上のVMS鉱床しか観察してこなかった自分には現世海底熱水鉱床を間近に見られる潜航調査航海は大きな衝撃でした.石橋さんは,新たな研究へのチャンスを下さった恩人です.
 最後にお礼を述べたいのは,JAMSTEC高井 研研究担当理事補佐です.SIPで行った1度目の「ちきゅう」掘削航海 (CK14-04航海) で初めて一緒に乗船しましたが,「次の首席は君が務めるんだ」と言われ,ブリッジでの指示の仕方や首席としての振る舞い方,どんな時も研究を楽しむ大切さを教えて頂きました.そもそも人工熱水孔を使った黒鉱養殖研究のアイデアは高井さんの発案ですし,先日のIODP Exp. 376航海にも一緒に参加したので,掘削調査航海の楽しさを教えて下さった恩人です.
 最後のスライドは,地質調査総合センターが作成している「なかよし論文データベース」からコピーした全共著者のお名前です (図5).これまでお名前を挙げさせて頂いた8名の方々以外にも,多くの人と巡り合い,助けられて研究を続けることができたのだなあということを,このリストを眺めて改めて実感しました.お世話になったすべての皆様に深甚の謝意を表します.これからも初心を忘れずに,また研究を楽しむ気持ちを常に抱きながら,新たな研究に邁進していきたいと思います.本日は誠にありがとうございました.
 

 
図5(クリックすると大きな画像がご覧いただけます)  


(注)本原稿は,20108年度日本地質学会各賞の受賞記念講演・スピーチ(2018/9/5於北海道大学)のないようを基に各講演者の皆様に原稿をご執筆頂き,日本地質学会News Vol. 21, No. 12(2018年12月号)p.14-16に掲載されたものです.