2016年度各賞受賞者 受賞理由

■日本地質学会賞(1件) ■日本地質学会国際賞(1件) ■柵山雅則賞(1件) ■Island Arc賞(1件)
■小藤文次郎賞(2件) ■研究奨励賞(2件) ■功労賞(1件) ■学会表彰(1件)

日本地質学会賞

受賞者:荒井章司(金沢大学大学院自然科学研究科)
対象研究テーマ:かんらん岩およびかんらん岩起源物質の解析による地域・地球発達史

   荒井章司会員は,綿密な野外調査,緻密な偏光顕微鏡観察に基づいた岩石組織解析とEPMA, LA-ICP-MS,顕微ラマン分光分析などを駆使して,日本をはじめ世界各地の造山帯,オフィオライト及び海洋底に出現するマントル起源のかんらん岩や火山岩中の捕獲岩を研究し,マントルの物質学的進化の解明を進めてきた.  三郡帯においては世界に先駆けてEPMAによる鉱物化学データから超苦鉄質岩の接触変成作用を明らかにし,類例のないかんらん石とコーディエライトの共存を見出したことにより,日本岩石鉱物鉱床学会の研究奨励賞を授与された.また,中国山地の大江山オフィオライトの超苦鉄質岩体が溶け残りかんらん岩であることを示すとともにクロミタイトの成因を論じ,世界をリードするクロミタイト成因論へと発展させた.男鹿半島,西南日本,フィリピンやカムチャツカの火山のマントル捕獲岩から再結晶組織や交代作用の証拠を発見し,マントルウェッジの様々なプロセスを解明した.主席研究員を務めた東太平洋ヘス・ディープの国際深海掘削ではマグマとマントル岩の反応の重要性を明らかにし,その後多くのオフィオライトにおけるマントルーマグマ反応の研究へと展開した.世界中の研究者に利用される「かんらん石スピネルマントル列」の提唱やスピネルから変質マントル岩の初生的な情報を解読する手法は「スピネルの荒井」の名を世界に知らしめ,その後の地質学的・岩石学的研究に多大な影響を与え,日本鉱物科学会賞, Island Arc賞の受賞に至った.さらに,人類史上初のマントル掘削を目指すモホール計画では,その立案から主導的役割を果たした.  荒井会員は日本人のみならずフランス,エジプト,イラン,フィリピンなどの留学生を含む多くの学生を育て,多数の卒業・修了生が国内外の大学や研究所,資源・地質関連企業で活躍している.また,「日本の火成岩」(岩波書店)や新版地学事典(平凡社)で超苦鉄質岩関連の頁を執筆するなど,専門分野の成果の普及にも努めた.  学術界にあっては日本学術会議鉱物学研究連絡委員会委員,日本岩石鉱物鉱床学会会長をはじめ,金属鉱業事業団レアメタル専門検討委員,統合国際深海掘削計画科学立案評価パネル共同議長,国際陸上掘削計画科学諮問部会委員などを歴任した.  上記のように,荒井会員は地質学に関する顕著な功績をおさめたので,日本地質学会賞に推薦する.

日本地質学国際賞

受賞者:Roberto Compagnoni[ロベルト コンパニョーニ](トリノ大学)
対象研究テーマ:変成岩岩石学

 

    コンパニョーニ教授は長年イタリアを拠点に変成岩岩石学のコミュニティーのリーダーとして活躍してきた.同氏は,沈み込み帯及び大陸衝突帯の深部に由来する岩石に記録された形成条件や圧力温度経路の検討から,造構プロセスや流体と岩石の相互作用を解明することを主要な研究テーマとしてきた.野外における観察から抽出できる情報を最大限に活かし,岩石薄片を用いたマイクロスケールでの組織観察とリンクさせて考察する研究スタイルは一貫している.地質・岩石学分野における基礎学問を重視する一方,考古学の専門家と共同の先史時代のヒスイの利用に関する研究,医学分野の専門家と連携したアスベストの研究を行うなど,地質・岩石学の重要性を幅広く社会にアピールすることに成功した.同氏は1960年代からアルプスの変成作用と造構プロセスについての多くの研究論文を発表しているが,その中でもそれまでの常識を覆したアルプス変成作用の年代論に関する研究,超高圧変成作用時でも地殻流体が豊富に存在することを浮き彫りにした研究は画期的な成果として特筆される.この分野における同氏の貢献を称え,2008年にフランス科学アカデミーからGrand Prix Leon Lutaud国際賞が授与された.同氏は複数の地質図の出版にも携わり,また数多くの若手研究者の育成にも力を注いできた.  コンパニョーニ教授は日本からの数多くの変成岩研究者をトリノ大学で受け入れた.同氏は彼らにアルプス変成岩類とそれらを取り巻く地質環境を懇切に紹介するだけでなく,彼らが現地での研究に集中できるよう,自宅に泊めるなどして手厚くもてなした.その努力は多くの研究者の岩石学の知識の深化に大きく寄与した.また,日本の研究者と共に中国での調査を行い,徳島を中心に開催されたオフィオライト会議,万国地質学会議京都大会,愛媛県新居浜市で開催されたエクロジャイト会議などの機会に複数回日本に中・長期的に滞在し交流を深めた.同氏は日本地質学会の正式英文誌であるIsland Arc誌の編集委員を長年にわたり務めるとともに,よく引用される論文をIsland Arc誌に筆頭著者として発表した.  上述の通り,コンパニョーニ教授は変成岩地質学・岩石学分野において国際的に高い水準の画期的な研究成果を挙げてきたとともに,日本の研究者との共同研究や学会誌の編集などを通じて日本の地質学の発展に顕著な功績があったと認められるので,日本地質学会国際賞に推薦する.

日本地質学会柵山雅則賞

受賞者:野田博之(海洋研究開発機構 現京都大学防災研究所)
対象研究テーマ:断層と地震発生の力学

 

野田博之会員は,断層帯の調査,室内実験による断層の力学的・水理学的性質の決定,シミュレーションによる地震の発生機構の研究において顕著な業績を挙げてきた.野田会員は博士前期課程までは断層帯の地質調査と変形・透水実験を行い,博士後期課程・博士研究員時代にはハーバード大学,京都大学,カリフォルニア工科大学で地震学と破壊力学を学んで,本格的な地震発生シミュレーションの研究を始めた.断層調査,実験,理論・シミュレーションの全てを基礎から習得している研究者は世界的にも皆無に近く,野田会員の研究基盤は極めてユニークである.  野田会員の多彩な研究成果の中でも,以下の成果は特に重要である. 1) 花折断層の調査,摩擦・透水実験,高速摩擦すべりの理論的解析を行って,断層の力学的・水理学的性質を決定した.微小な変位によって断層は徐々に強度を失い,断層に作用する応力に耐えられなくなって地震を発生する.野田会員は特に,花折断層で実測された水理学的性質に基づいてthermal pressurizationを解析して,断層が強度を失うすべり量が大地震の解析から求められる値とほぼ同じになることを示した. 2) 実測された性質に基づいて地震発生のシミュレーションを行い,断層の性質が地震発生のサイクルと地震発生時の動的な破壊過程にどのような影響を与えるかを明らかにした.特に断層の低速下の性質と高速下でthermal pressurizationによる強度低下が起こる現象が重なることで極めて多彩な地震活動が起こることを示した.この結果は,断層クリープ,中・大規模地震,東北沖地震のような海溝型巨大地震が同じ場所で起こり得ることを示しており,大きなインパクトを与えた. 3) 摩擦すべりから流動変形への変化を記述する構成則を提唱し,それを使って大地震の発生サイクルと動的破壊過程を解析した.よく使われるリソスフェアの強度断面は断層・プレート境界の挙動によって決まり,時間とともに変化することが明らかになった.  野田会員はこれらの成果を多くの論文として国際学術誌に公表しており,それらは非常に多くの論文で引用されている.このように地質学に関して優れた業績を挙げた野田博之会員を日本地質学会柵山雅則賞に推薦する.

日本地質学会 Island Arc賞

受賞論文:Shinji Yamamoto, Tsuyoshi Komiya, Hiroshi Yamamoto, Yoshiyuki Kaneko, Masaru Terabayashi, Ikuo Katayama, Tsuyoshi Iizuka, Shigenori Maruyama, Jingsui Yang, Yoshiaki Kon and Takafumi Hirata, 2013. Recycled crustal zircons from podiform chromitites in the Luobusa ophiolite, southern Tibet. Island Arc, 22, 89-103.

 Yamamoto et al. (2013) presented novel data on the U-Pb age of ancient zircon grains separated from enigmatic podiform chromitites from Luobusa ophiolite, Southern Tibet, which includes ultra-high pressure mineral inclusions and other minerals such as zircon to determine the age relationships between podiform chromitites and the host mantle peridotites. The paper is well written with sound methodology and significant results. This work not only provides strong evidence for the recycling of crustal materials during dynamic processes in the upper mantle, but also urges us to reconsider the origin of podiform chromitites from ophiolites and the mantle geodynamics. This paper received the highest number of citations–based on the Thomson Science Index for the year 2015–amongst the entire candidate Island Arc papers published in 2012–2013, which will contribute to increasing the impact factor of Island Arc. The first author, Dr. Yamamoto, is one of the most active young Japanese geologists working on continental growth and mantle geodynamics based on field works, microstructural and petrological studies on ophiolites and orogenic belts in China, Australia, Canada, UK, etc. His earlier finding of coesite lamellae (+Cpx inclusions) in chromitite provides the best document for the UHP origin of diamond-bearing chromitites. This paper adds to his many contributions and is a worthy receipt of the 2016 Island Arc Award.

>>Wiley 論文サイトへ
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iar.12011/full

日本地質学会小藤文次郎賞

   

受賞者:菅沼悠介(国立極地研究所)・岡田 誠(茨城大学理学部)・堀江憲路(国立極地研究所)・竹原真美(九州大学大学院理学府)・木村純一(海洋研究開発機構)・羽田裕貴(茨城大学大学院理工学研究科)・風岡 修(千葉県環境研究センター)
受賞論文:Yusuke Suganuma, Makoto Okada, Kenji Horie, Hiroshi Kaiden, Mami Takehara, Ryoko Senda, Jun-Ichi Kimura, Kenji Kawamura, Yuki Haneda, Osamu Kazaoka, and Martin J. Head, 2015, Age of Matuyama-Brunhes boundary constrained by U-Pb zircon dating of a widespread tephra. Geology, 43, 491-494.


松山-ブルン(M-B)境界は,地質時代の重要な年代較正点であるにも関わらず,正確な 年代には統一的見解が得られていなかった.菅沼悠介会員と当該論文の共著者らは,房総 半島に分布する上総層群国本層中の「千葉複合模式地層」における高解像度の古地磁気・酸 素同位体変動の復元と,MBB境界付近の層準に産する「Byk-Eテフラ」中ジルコン粒子のSHRIMP-U-Pb年代測定 を行うことで,これまで約780-781 kaとされてきたM-B境界の年代が約770.2 ± 7.3 kaに修正されることを示した.この結果は,M-B境界年代の決定にとどまらず「Byk-Eテフラ」が 地質年代較正において重要な基準面となる可能性を示すものである.さらに,「千葉複合模式地層」が日本最初の「国際標準模式地:GSSP(下部−中部更新統境界)」に認定されるための 非常に大きな貢献ともなる.以上の理由から,本論文の著者となっている全ての会員を小 藤文次郎賞の受賞対象として推薦する.
 

日本地質学会小藤文次郎賞

受賞者:高柳栄子(東北大学大学院理学研究科)
受賞論文:Takayanagi, H., Asami, R., Otake, T., Abe, O., Miyajima, T., Kitagawa, H. and Iryu, Y., 2015, Quantitative analysis of intraspecific variations in the carbon and oxygen isotope compositions of the modern cool-temperate brachiopod Terebratulina crossei. Geochimica et Cosmochimica Acta, 170, 301–320.


腕足動物殻は炭素・酸素同位体組成(δ13C・δ18O)に関して,周囲の海水と同位体平衡にあるとされ,数百万〜数億年スケールの古環境復元に用いられて来た.本研究では,腕足動物殻の同位体組成の殻内変異,種間差,個体差の全てを評価・検討した.岩手県大槌湾から採取した現生腕足動物Terebratulina crossei(9個体)のδ13C・δ18Oを高時間分解能で分析し,生息地の溶存無機炭素のδ13C,海水温および塩分の季節変化から算出された海水と同位体平衡で析出する方解石のδ13C・δ18Oと一致しないこととその原因,今後の古海洋研究に適した部位と信頼性を示した.また,本論文は,従来の腕足動物殻の同位体組成に関する研究およびそれらに基づく古環境復元の研究法について,根源的な再検討の必要性も示唆している.   本研究を主導した高柳栄子会員は,日本地質学会小藤文次郎賞の授賞にふさわしいと判断し,推薦する.

 

日本地質学会研究奨励賞

受賞者:酒向和希(愛知教育大学大学院教育学研究科)
対象論文:酒向和希・星 博幸,2014,本州中部,中新統富草層群の古地磁気とテクトニックな意義.地質学雑誌,120,255-271.


先中新統の帯状地質配列は伊豆北方で八の字型に屈曲している.この屈曲は伊豆-小笠原弧の衝突で生じ,衝突以前の帯状配列は直線的だったという理解が一般的である.しかしこれは仮説の域を出ていない.著者らは長野県南部の中新統富草層群に注目し,岩相分布と層序を検討した上で古地磁気を調べた.その結果,富草層群の古地磁気方位はほぼ北を指し,同時代の西南日本の東偏方位と大きく異なることを示した.さらに地質構造と古地磁気回転の関係を定量的に分析するオロクライン・テストを実施し,前期中新世の17 Ma頃には中央構造線が直線的であったと結論した.この成果は日本海拡大やフィリピン海の運動史に重要な制約を与えている.この地域の地域地質については,著者らがすでに地質学雑誌で公表しおり,しっかりした地質調査に根ざして新たにデータを提示し,総合的に解釈しようとする著者の姿勢も高く評価できる.研究奨励賞に十分値する研究である.

 

日本地質学会研究奨励賞

受賞者:金井拓人(早稲田大学大学院創造理工学研究科)
対象論文:金井拓人・山路 敦・高木秀雄,2014,混合ビンガム分布を適用したヒールドマイクロクラックによる古応力解析 中部地方の領家花崗岩類における例. 地質学雑誌,120,23-35.


本論文は,花崗岩・石英中のヒールドマイクロクラック(HC)の3次元分布を用いて古応力を復元する手法の開発と,その天然岩石への応用を行ったものである.共著者の山路により開発された情報量基準を用いた最適応力場の推定方法に基づくが,そのためには,統計的性質を保った情報を観察から抽出する必要がある.著者らは,ユニバーサルステージによるHC分布測定に伴う観測バイアスを補正する方法を考案し,中部地方の中央構造線近傍の領家花崗岩類に適用した.その結果,複数ステージの応力場を同定することに成功し,特に,約65MaのHC形成時には,中央構造線の走行とほぼ直行し低角度のσ3 軸をもつ伸長応力場であった可能性を示唆した.以上のように,本研究はマイクロクラックを用いた古応力場復元手法を大幅に改良し,中央構造線のテクトニクスの理解に寄与する重要なデータを示した.よって,本論文を研究奨励賞にふさわしい論文として推薦する.

 

日本地質学会功労賞(1件)

受賞者:檀原 徹(株式会社京都フィッション・トラック)
功労業績:放射年代測定等による地質学への貢献


 檀原 徹氏は,30余年にわたり,フィッション・トラック(FT)年代測定,FT熱年代分析,火山灰(テフラ)分析および関連機器の開発・普及など,氏が設立した会社の業務を通じて,我が国の地質の調査・研究に大きく貢献してきた.  檀原氏の功績は,長年にわたり測定・分析手法と分析装置の開発・改良に熱心に取り組み,その成果を多くの学術論文として公表し,またそれらが広く利用されてきたことにある.FT年代測定の普及は氏の代表的な功績である.FT年代測定を業務化したことにより,だれしもがFT年代測定を試みることが可能となった.檀原氏らによるFT年代測定結果は数多くの学術論文や産総研地質調査総合センター(旧地質調査所)の地質図幅作成等で利用され,地質調査業や資源エネルギー開発でも活用されている.最近ではレーザーアブレーションICP質量分析法を利用したFT年代測定技術の開発に成功し,その技術を広く研究・業務に活用している.また同一ジルコン粒子を用いたFT法とU-Pb法によるダブル年代測定の高度化とその普及にも取り組んでいる.一方,放射年代測定や岩石・鉱物の地球化学的分析では鉱物分離が極めて重要であるが,氏は効率的な鉱物分離システムを構築し,その普及にも努めてきた.  檀原氏のもう一つの大きな功績は,テフラ粒子の屈折率測定を目的とした温度変化型屈折率測定装置の開発である.この屈折率測定装置を製品化し普及させたことにより屈折率測定が精度良くかつ容易に行えるようになり,各地でテフラの記載が拡充された.この機器の開発とFT年代測定の普及により我が国のテフロクロノロジーが精密化し,第四紀層序研究が大きく進展したことは疑いようもない事実である.  以上のように,檀原氏の長年の放射年代測定手法等の開発・普及は我が国の地質学の発展に大きく寄与しており,ここに日本地質学会功労賞に推薦する.

 

日本地質学会表彰

受賞者:内藤一樹(産業技術総合研究所)
表彰業績:地質図のデジタルアーカイブの構築とその整備


国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ;旧地質調査所)では,2003年の同研究所発足以来、所有する多数の地質図を迅速かつ適切に利用したいという学界および社会からのニーズに応えるため,地質図のデジタルアーカイブの構築とその整備に取り組んできた.  内藤 一樹会員は,このプロジェクトを実現させるため,地質図データの整備,配信システムの構築,プログラム開発などの複雑で難解な作業に自らが取り組み,主導的な役割を果たしてきた.その結果,2013年に「地質図Navi」としてWEB上に公開することができた.内藤 一樹会員が開発・構築した「地質図Navi」は,20万分の1日本シームレス地質図をベースマップにしており,各種地質図だけでなく,活断層・火山などのGSJのデータベースや,重力異常図,地球化学図などの地球科学情報等が閲覧可能な総合的なプラットフォームといえる.  これ までは,地質図幅などの地質データを入手・閲覧するには手間と費用を要したため,その利用は地球科学分野の研究者・学生や地質調査業界の技術者に限られていた.ところが,「地質図Navi」が公開されるとそれらの人々にとっての利便性が各段に向上するとともに,簡単に利用できるWEB環境であるため専門家でない市民も地質図を利用できるようになった.この ことは,「地質図Navi」の利用数が月間約2万件にものぼる事実に端的に表されている.特に近年,地震や火山噴火による被害,土砂災害や地盤災害などが増加したことが契機となって,「地質図Navi」を通じて地質図や地質データベースの有効性がさらに認識され,市民のジオハザードに対する防災意識を高めるという効果を挙げている点は高く評価される.また ,「地質図Navi」は国のオープンデータ戦略に沿うものであり,研究者や技術者だけでなく,市民も最新の地質学などの科学データにアクセス可能となる.その結果,市民の地質学への興味と理解がこれまで以上に向上するものと期待される.   この ように素晴らしいシステムの開発と発展に尽力した内藤一樹会員は,日本地質学会表彰を授賞するにふさわしいと判断し,ここに授賞を推薦する.