斎藤靖二 会員(1939年生まれ)
斎藤靖二会員は,1964年に東北大学大学院理学研究科地学専攻修士課程を修了し,1965年に国立科学博物館に勤務した.1968年には「Geology of the younger Paleozoic system of the southern Kitakami mountainland,Iwate Prefecture(南部北上山地上部古生界の地質)」にて東北大学から理学博士を授与された.チャートの岩石学や付加体地質学を積極的に学ばれ,豪州タスマニア島やパキスタン,北米西海岸などの先カンブリア時代から中・古生界のチャートの岩石学研究を進めるとともに,日本列島における付加体地質学や珪質堆積岩の岩石学,関東山地秩父帯の放散虫生層序学的研究などを行った.それらの成果は,プレートテクトニクス理論に基づく日本列島の地質の理解を大いに進めることになり,次世代の研究者に大きな影響を与えた.
日本地質学会においては,評議員や2004年から2006年に会長を務めたほか,国内各地の大学の客員教授や外部評価委員,文部省学術審議会,文部省南極地域観測将来問題研究会,大学評価・学位授与機構,文科省南極地域観測統合本部,海洋研究開発機構IFREE評価委員会,日本学術会議,日本地球惑星科学連合評議会などの各種委員を務め,学界における地質学および地球科学の発展に貢献された.さらに,2006年からは神奈川県立生命の星・地球博物館館長となり,市民への普及活動をはじめ,教育現場や企業など様々な場所における普及講演や,『日本列島の生い立ちを読む』(岩波書店),『変動する地球新版』(岩波書店),『グラフィック日本列島の20億年』(岩波書店)など多数の図書を執筆・監修などにより,地質学の普及と振興に大きな貢献をされた.
このような長年にわたる地質学の研究,教育,普及への顕著な貢献に鑑み,斎藤靖二会員を日本地質学会名誉会員に推薦する.
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鈴木堯士 会員(1933年生まれ)
鈴木堯士会員は,1961年に広島大学大学院理学研究科博士課程を修了し,高知大学に勤務した.その後,御荷鉾帯の研究に力をそそぎ,その起源がオフィオライトであることを明らかにするなど,従来の学説を覆す画期的な成果を挙げられた.高知大学在任中の1966年8月から1年半にわたって,フンボルト財団奨励奨学生としてドイツ・ダルムシュタット工科大学に留学され,X 線テクスチュア・ゴニオメータによる三波川変成岩中の鉱物(石英・かんらん石・角閃石など)の定向性の測定と解析を,パソコンを用いて自動化するなど,研究方法の開発にも努められた.
ドイツから帰国後は,ライフワークの御荷鉾緑色岩類の研究と並行して,黒瀬川構造帯や四万十帯の研究に取り組まれた.とりわけ,四国四万十帯での研究成果を1979年に「地質学雑誌」に公表し,現在でこそポピュラーになった“メランジュ”という概念の日本国内への導入に貢献された.また,文部省科学研究助成金によるニュージーランド南島の学術調査隊の代表を務め,同国のオタゴ大学との共同研究にも意欲的に取り組まれた.中国の南京大学地球科学教室と高知大学地質学教室の姉妹教室締結にも尽力された.
地質学会においては, 1970年から1982年まで6期(12年)日本地質学会評議員を勤められた. 2006年の第113年年会では,日本地質学会50年会員として顕彰もされている.また,高知県文化財保護審議会の副会長として主に地質部門を担当された.その間,2件の国及び2件の高知県の天然記念物(地質関係)指定に貢献された.その内容の多くは詳細に「日本地質学会News」に掲載されるなど,会員への周知普及も積極的におこなってきた.さらに,「日本の地質 四国地方」「四国はどのようにしてできたか」 (第18回寺田寅彦記念賞受賞) ,「寺田寅彦の地球観」(第23回寺田寅彦記念賞受賞), 「最新・高知の地質 大地が動く物語」(第23回高知出版学術賞受賞)など多数の単行本を上梓し,地質学の普及と振興に貢献された.
このような長年にわたる地質学に関する研究,教育,普及への顕著な貢献に鑑み,鈴木堯士会員を日本地質学会名誉会員に推薦する.
(以上2名)