「県の石」:北海道・東北

▷「県の石」(大切なお願い/リスト/選定にあたって ほか)
 

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北海道の「県の石」

◆北海道の岩石 かんらん岩(主要産地:様似町(アポイ岳〜ピンネシリおよび幌満川流域))
  展示してある場所:様似町役場前「かんらん岩広場」,アポイ岳ジオパークビジターセンター
日高山脈南端部のアポイ岳のかんらん岩は,「幌満かんらん岩」の名前で世界的に有名である.地下およそ70kmの「上部マントル」の岩石で,約1,300万年前に始まった日高山脈の上昇とともに地表まで持ち上げられた.主に,かんらん石 (オリーブ色)・斜方輝石(濃褐色)・単斜輝石 (エメラルドグリン)と少量のスピネルからなる.アポイ岳ジオパークは, 2015年にユネスコ世界ジオパークに認定された.(写真:新井田清信)
   
◆北海道の鉱物 砂白金(主要産地:北海道中軸部)
  展示してある場所:北海道大学総合博物館,士別市立博物館,地質標本館
北海道の開拓時,全域でゴールドラッシュに湧いた事があった.砂金掘りの際,混在する砂白金は,当初は硬いだけで無価値な邪魔者であった.後に万年筆のペン先に用途が開け,戦前は輸出するほどの世界的産地でもあった.これら砂白金はイリジウム系の白金族元素の合金を主体とし,かつては「イリドスミン」と呼ばれた.起源はマントル由来の蛇紋岩で,産出地も北海道中軸部に沿う河川にほぼ限られている.
写真(上):中川 充.写真は夕張市白金川産.
写真(下):中川 充.幌加内町の雨龍川産で,長辺約 6mm.砂白金,砂金などの重鉱物類.
(注)「北海道博物館」では現在展示は行っていません。お詫びして訂正いたします。(2016.5.11)
   
◆北海道の化石 アンモナイト(主要産地:北海道中軸部(空知,留萌,日高など))
  展示してある場所:三笠市立博物館,むかわ町穂別博物館,中川町エコミュージアムセンター,北海道博物館等
アンモナイトは,約4億年前から6600万年前頃まで生きていた,イカやタコと同じ仲間の生物である.北海道には,アンモナイトが大繁栄した後期白亜紀(約1億年前〜6500万年前)の海の地層が,三笠,穂別,中川などに分布しており,とても保存の良いアンモナイト化石が産出することで知られている.現在までに500種類ほどが発見され,今も新種のアンモナイト化石が毎年のように報告されるなど,1億年前の生命の進化の謎を探る大変貴重な場所となっている.(写真:栗原憲一)
   

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青森県の「県の石」

◆青森県の岩石 錦石(鉄分を含む主に玉髄からなる岩石)(主要産地:全域)
  展示してある場所:青森県立郷土館
津軽地域を中心に産する,磨いて美しい光沢を示す石を錦石と呼んでいる.玉髄・めのう・碧玉を主体とする岩石で,花紋石・玉鹿石(ぎょっかせき)・赤玉石などとも呼ばれている.錦石(玉鹿石)は藩政時代から多くの人々に親しまれてきた歴史をもち,1980年(昭和55)1月24日,青森県天然記念物に指定されている.(写真提供:青森県立郷土館)
(注)主要産地の表記を「五所川原市金木」→「全域」に修正.リストと統一(2016.7.12)
   
◆青森県の鉱物 菱マンガン鉱(主要産地:西目屋村 尾太鉱山)
  展示してある場所:青森県立郷土館
尾太鉱山産の菱マンガン鉱は,きれいな桃色が特徴で,ぶどう状集合体組織の発達が見事であり,世界的に有名.地下深部の熱水によって周囲の岩石と反応して形成される.(写真提供:青森県立郷土館)
   
◆青森県の化石 アオモリムカシクジラウオ(主要産地:青森市荒川)
  展示してある場所:青森県立郷土館.この種の基準となるタイプ標本のため収蔵庫に保管してあり,実物大の写真パネルを展示.
1970年(昭和45)に青森市の堤川上流で発見された深海魚の化石.保存状態が良好で細部まで観察でき,クジラウオ上科アカクジラウオダマシ科の新属新種として2007年12月に発表された.発見された地層は約1500万年前の淡緑色凝灰質泥岩です.本標本はクジラウオ上科の世界初の化石であり,極めて珍しく貴重である上,このなかまの進化の跡を辿る上でも重要な標本である.(写真提供:青森県立郷土館)
   

秋田県の「県の石」

◆秋田県の岩石 硬質泥岩(主要産地:男鹿市船川港女川など,女川層分布地域)
  展示してある場所:秋田大学鉱業博物館,秋田県立博物館など
中新世中期後半から後期にかけて日本海の海底に堆積した,
堅硬かつ緻密な泥岩である.珪藻由来のシリカを多量に含み,板状に割れやすい性質から,珪質頁岩と呼ばれることもある.硬質泥岩中からは,しばしば保存状態の良い魚類や海棲哺乳類の化石が見出される.特に珪質なものはガラスのような質感があり,古代には,石器の材料としてさかんに利用された.日本海側に分布する油田の石油根源岩としてもよく知られている.(写真:秋田市河辺の女川層硬質泥岩の露頭 西川 治)
   
◆秋田県の鉱物 黒鉱(主要産地:秋田県北鹿地域)
  展示してある場所:秋田大学鉱業博物館,秋田県立博物館,小坂町立資料館など
中期中新世の酸性の海底火山活動によって海底に沈殿した,主に方鉛鉱,閃亜鉛鉱,黄銅鉱,重晶石からなる緻密で塊状の黒色鉱石である.銅,鉛,亜鉛に加えて,金,銀や多種類のレアメタルを含んでおり,明治中期から昭和にかけて盛んに採掘された.大規模な鉱床が発達する秋田県北部の北鹿地域で,先進的に開発と鉱床の研究がおこなわれてきたため,「Kuroko」は学術用語として国際的に通用する.(写真:秋田大学鉱業博物館所蔵)
   
◆秋田県の化石 ナウマンヤマモモ(主要産地:特定の場所無し)
  展示してある場所:秋田大学鉱業博物館
学名:Comptonia naumanii.環日本海地域の前期中新世後期の地層中に広く産する台島型植物群の代表的な化石のひとつである.台島型植物群は,常緑・落葉混合の植物群で,現在の本州中部以西太平洋岸に相当する温暖な気候を示す.ナウマンヤマモモは,細長くギザギザに切れ込んだ葉が特徴のヤマモモ科の植物である.本邦では,鮮新世まで近縁種の化石が産出するが,現世では北アメリカに1種のみが認められている. (写真 産地:仙北市下檜木内  秋田大学鉱業博物館所蔵)
   

岩手県の「県の石」

◆岩手県の岩石 蛇紋岩(主要産地:早池峰山)
  展示してある場所:岩手県立博物館
蛇紋岩はかんらん岩を起源とする岩石で,詩人で童話作家の宮澤賢治が特別な親しみを持っていたことでも知られる.蛇紋岩地帯には固有の植物種が成育するため,早池峰山を訪れる登山客にも馴染みが深い.早池峰複合岩類中の中岳蛇紋岩類は,南部北上山地の北縁に位置し,早池峰山周辺に広く分布する.1980年代以降の研究で,南部北上山地の基盤をなすオルドビス紀の島弧オフィオライト(地殻断面の岩石)であると位置づけられるようになった.国定公園,日本ジオパークのジオポイントとして指定されている.(写真:大石雅之)
   
◆岩手県の鉱物 鉄鉱石(主要産地:釜石市甲子町ほか)
  展示してある場所:岩手県立博物館
釜石付近には,石炭紀からペルム紀の石灰岩に前期白亜紀の花崗閃緑岩が接触したことで生成したスカルンが鉱化されてできた鉄鉱床・銅鉱床が分布する.鉄鉱床は,安政年間の日本初の洋式高炉に始まる近代製鉄の礎となり,明治以降日本の経済成長を支え続けて来た.このため,日本の近代製鉄の先駆けとなった橋野鉄鉱山は世界遺産に登録された.この鉄鉱石は磁鉄鉱であり,磁性を持つ.流域の河川では,磁鉄鉱礫(餅鉄 べいてつ)を拾うことができる.(写真:岩手県立博物館(釜石市栗林町産の餅鉄,IPMM 62567))
   
◆岩手県の化石 シルル紀サンゴ化石群(主要産地:大船渡市日頃市町樋口沢)
  展示してある場所:岩手県立博物館・大船渡市立博物館
大船渡市日頃市町樋口沢に分布する石灰岩から,1936年に日石サンゴが発見されたことにより,日本ではじめてシルル紀の岩石であると確認された.以後,西日本や北上山地の他地域でもシルル紀の岩石が見つかった.樋口沢の石灰岩からは,サンゴ・層孔虫・腕足類など多様な化石が産出する.日石サンゴを含む樋口沢のシルル紀化石群は,日本の地史を研究する上で重要な情報を提供しており,国の天然記念物に指定されている.(写真:大石雅之)
   

 

山形県の「県の石」

◆山形県の岩石 デイサイト凝灰岩(主要産地:山形市山寺)
  芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句が有名な,貞観2年(860年)に慈覚大師によって創建された名刹立石寺(別名山寺)の周辺に分布している山寺層の凝灰岩.主に凝灰角礫岩,火山礫凝灰岩からなる.後期中新世に陸化した奥羽山地ではたくさんのカルデラ火山が形成しており,この地層は奥羽山地西翼のカルデラ火山から噴出された火砕流堆積物である.そそり立つ急崖の表面にタフォニ(雲形浸食)が発達し,虫食い状の特異な景観を作っている.(写真:大友幸子)
   
◆山形県の鉱物 そろばん玉石(カルセドニー)(主要産地:小国町)
  展示してある場所:山形県立博物館,山形大学附属博物館
算盤(そろばん)の玉のような形の石で,玉髄(SiO2)からなる.マグマ中に溶け込んでいたH2OやCO2などの揮発性成分が,マグマが固結する過程で気泡となり,気泡はマグマの流動にともなって円盤状の形になる.流紋岩や安山岩マグマは粘性が大きく,気泡が大きくなりやすい.マグマ固結後に,その空洞を満たしたSiO2に富む熱水から玉髄が晶出し,空洞を充填する.その後,母岩の風化により玉髄が分離したものである.小国町のそろばん玉石は流紋岩中に形成したもので,山形県指定天然記念物である.指定地では現在ほとんど採集できないが,ほかの新第三紀の流紋岩〜安山岩岩体の分布するところでも見つかることがある,(山形大学附属博物館展示  写真:大友幸子)
   
◆山形県の化石 ヤマガタダイカイギュウ(主要産地:大江町三郷甲,用地区の最上川川床)
  展示してある場所:山形県立博物館
1978年に大江町の最上川の河床で二人の小学生が発見した.化石は後期中新世の本郷層橋上砂岩部層から発掘され、海牛の進化の系統を考える上で重要な新種の海牛化石(Dusisiren dewana)であることがわかった.この系列の海牛は、体を大型化させながら、歯と指の骨を消失するという進化をたどった.縮小・退化した「歯」と「指の骨」を持つヤマガタダイカイギュウはその中間的形質をもつ世界的にも貴重な標本で、県の天然記念物に指定されている.(写真提供:山形県立博物館)
   

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宮城の「県の石」

 
◆宮城県の岩石 スレート(主要産地:登米市登米,石巻市雄勝)
  展示してある場所:東北大学理学部自然史標本館
宮城県北部から岩手県南部にまたがる南部北上山地には,中期〜後期ペルム紀に形成された泥岩が分布する.この泥岩には,圧密作用によりスレート劈開と呼ばれる面構造が生じている.そのような岩石はスレート(粘板岩)と呼ばれ,その面に沿って薄くはがれるため,世界各地で石材として利用されている.宮城県の登米や雄勝で産出するスレートは品質が高く,特に後者は雄勝石と呼ばれ,硯の原料として用いられている.(写真提供:東北大学理学部自然史標本館)
   
◆宮城県の鉱物 箟岳(ののだけ)、涌谷(わくや)の砂金(主要産地:遠田郡涌谷町涌谷,箟岳)
  展示してある場所:涌谷町役場 ※「涌谷町歴史・上」(昭和40年発行)のカラー図版に「黄金沢の砂金」の写真あり.
本邦初の金の産地と考えられてきた.「万葉集」に金の産出が歌われ,「続日本記」には奈良東大寺の大仏鋳造のために黄金900両(約13キロ)が陸奥国府から平城京に届いたという記録が存在する.これらは漂砂型の砂金鉱床であったと考えられる.箟岳丘陵の砂金の多くは金鉱化作用を伴う浅熱水性石英脈鉱床あるいはペグマタイト鉱床を供給源として,それが堆積してできたものだと考えられる. (写真:写真:「涌谷町歴史・上」(昭和40年発行)のカラー図版の「黄金沢の砂金」)
   
◆宮城県の化石 ウタツギョリュウ(主要産地:本吉郡南三陸町歌津)
  展示してある場所:東北大学理学部自然史標本館
学名:Utatsusaurus hataii Shikama, Kamei et Murata
1970年に南三陸町歌津館崎の海岸に分布する前期三畳紀の頁岩(2億4500万〜2億5000万年前)から発見された魚竜(海棲は虫類)の化石である.1978年に鹿間時夫、亀井節夫、村田正文により記載論文が発表され,上記の学名が提唱された.ウタツギョリュウは世界最古の魚竜の1つであり,原始的な形態を有しているとされている.(写真提供:東北大学理学部自然史標本館)
   

福島県の「県の石」

◆福島県の岩石 片麻岩(主要産地:阿武隈高原)
  展示してある場所:福島県立博物館
阿武隈高原南部に分布する阿武隈変成岩は19世紀末から研究が進められ,高温−低圧型の標準的な変成岩として世界的に有名となった.西半部の変成度が高い岩体(竹貫変成岩)の主体をなすのが,黒白の縞状で粗粒な岩石で白亜紀の変成年代をもつ片麻岩である.阿武隈変成岩の原岩については,一部ジュラ紀の付加堆積物が含まれているが,変成帯全体の形成過程については未解決な問題が多く,その解明は日本列島の基盤の成り立ちを探る上で重要である.(写真:阿武隈変成岩中の雲母片麻岩 福島県立博物館蔵)
   
◆福島県の鉱物 ペグマタイト鉱物(主要産地:石川郡石川町)
  展示してある場所:福島県立博物館,石川町歴史民俗資料館
ペグマタイトは,地下深い場所でマグマから花崗岩がつくられた後,残りの揮発成分の多い残留マグマが岩石の割れ目に入り込んで形成されたもので,巨大な鉱物の結晶を含み巨晶花崗岩とも呼ばれる.石川地方のペグマタイト鉱物は,白亜紀の花崗岩から産出し,石英・長石・雲母・電気石などの結晶が特に大きく,また希少元素や放射性元素を含む鉱物を数多く産出することで全国的に有名である.1995年に福島県の天然記念物に指定されている.(写真:石川地方産のペグマタイト鉱物 福島県立博物館蔵)
   
◆福島県の化石 フタバスズキリュウ(主要産地:いわき市大久町)
  展示してある場所:福島県立博物館(全身骨格複製),いわき市石炭・化石館(全身骨格複製)
フタバスズキリュウは,1968年に,いわき市大久町に露出する後期白亜紀(約8500万年前)の玉山層から発見された爬虫類のクビナガリュウ化石である.頭骨・胸骨・四肢骨・骨盤など重要な部分が見つかり,全身の骨格が復元された.全長は約7m.日本で発見されたクビナガリュウの唯一の全身骨格化石である.2006年にプレシオサウルス上科のエラスモサウルス科に属する新属新種Futabasaurus suzukiiとして正式に記載された.
(写真:フタバスズキリュウ全身骨格(複製) 福島県立博物館蔵)
   
 

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